29話 安堵
29話
「おーきーてー」
ラルトが目を瞑りながら腹に力を入れて声を上げる
「……」
「起きろー!」
ラルトがタイトの体をベットの上でブンブン転がす
「えぁ?あぁ、おはよう、」
タイトは目を擦り、大きな体をう〜んと伸ばす
ベットがギシィと音を立て、苦しそうだ
「いま何時だぁ?」
「8時だよ!」
ラルトはどこか忙しそうな状態であった
タイトは早朝集合と自分から言ったことを思い出し、目にも留まらぬスピードで身支度を済ませる
「おぉ〜」
ラルトはひょっとこのような口でタイトを見ていた
「さぁ!行くか!」
ニカリと笑って、扉をグッと開ける
いちばん冒険にワクワクしているのはタイトなのかもしれない
「あぶなっ、ってちょっと、何分待たせるつもり?」
扉の向こうにリュロが、その後ろにロアが立っている
リュロは腕を組んで真顔でタイトを見上げていた
「わ、わりぃ、飯奢るから許して!」
パンと両手を合わせるタイト
リュロは「デザートも奢ってよね」と言い、プイッと後ろを振り返る
ふぅ〜と息をついたタイト、みんなの朝飯を奢るため、財布の中身を確認する
一階の食事場にて――
はぁ〜と息を吐いて肉を食らうタイト
ラルトが「僕は自分で出すよ!」と言うが、「男たるもの一度言ったことは守る!…」と、弱々しい手で代金を支払った
そんな時、
「よぉ〜お前ら、頑張ってるか〜??」
渋いようでどこか高い声の男性が、片手をあげて近づいてくる
四人は頭にハテナマークを浮かべ、各々の顔を見合った
彼はメルディア学園の生徒、もしくは教師である
その証拠に、真っ黒な制服に銀色のボタンを三つ身につけている
年齢は三十代後半で、背丈は百八十センチと大きいが、体に厚さがない
顎に短く毛を生やしており、髪はベリーショートだ
鋭い目つきが特徴的だが、それを隠すかのように丸メガネをかけている
笑う顔には胡散臭さを感じ、関わるとロクなことがなさそうであった
「ねえ、誰よあのおっさん」
「俺も知らねぇ、」
そう言いながらラルトを見る
「僕も知らないよ!」
流れでロアに注目が集まる
「ん、ん!」
もどもどしながらロアは横に首を振った
「お前ら〜何はなしてんだ?」
彼はもうすぐそこまで来ていた
「ちょっと、あんた誰なのよ」
リュロが勢いをつけながら立って問いかける
「あ〜悪い悪い、俺はメルディア学園で教師をやってる、ギル ヴィルディンというものだ、昨日の話を盗み聞きしてな、それで尋ねたわけ」
一同は教師という言葉に安心して、椅子に突っ張った腰が軽くなる
(だからこんなにも魔力がすげーのか!)
タイトが何も言わずに頷く
「それで?先生が何用ですか?」
相変わらずどこか威圧的な対応をするリュロ
「単刀直入にいう、お前ら、今受けてるクエスト放棄しろ」
四人は一瞬「えっ」と思考が停止して、
「何故ですか!?」
「どうして!?」
「どういうことよ!」
「!!!」
四人が勢いよく話だし、ギルはその熱量に胃もたれに近い感覚を味わう
「まぁまぁ落ち着け、え〜理由だが、このクエストで誰かが死ぬかもしれないからだ。」
ギルの顔つきが変わる。胡散臭さが今はなく、責任を抱えた顔つきだ
「相手は魔物ではなく、魔族だ。お前らブロンズランクが向かって易々と殺せる相手じゃない」
四人はギルの話を淡々と聞いていたが、
「ま魔族だから何よ… 私は覚悟もってこのクエスト受けたの!だから一人だって行くんだから!!」
机をバン!と叩き、そのまま立ち上がってギルの目を注視した
「僕も!魔族がなんだかよくわからないけど!行くよ!!」
ラルトも何故か机をパン!と叩き、立ち上がる
「二人だけ行って、俺たちが行かないわけねぇーよな!」
ドヤ顔を決めてロアに目線をつける
しかし、その体からは嫌な汗がしたたり始めていた
「え、あ、うん!!」
首をたてに振ると同時にふん!と鼻息をつき、膝に置いてある手をグッと握る
「懐かしいな…」
ギルが目を細めて、斜め上に視点をもっていく
四人はうつろなギルに視線を向け続けると、
「あー悪い悪い、そうか、お前らの意思よ〜く伝わった」
「なら最後の警告だ。お前ら、これでも奴と戦えるか?」
ギルはそう言って、ラルト達のいる机から一歩離れた
「ふぅー、はぁ〜」
息を吐き終わると同時に、ギルの体から魔力が溢れ出す
建物内にいる人達の肌をビリビリと刺激し、喉が締め付けられるような圧が広がる
思わずリュロの足がすくみ、椅子に落ちた
「もう一度言う、リザードマンは魔族だ。俺と同等の戦闘力があると思え、それでもお前らは戦うことを選ぶか??」
蛇に似た鋭い目つきで四人を睨みつける
緊張が走る空間に一筋の光を灯したのはリュロであった
「そ、それでも!やらなくちゃいけないのよ!!」
リュロが握った両拳を机に叩きつける
「お、俺は」
タイトが苦い表情で唇を噛んだ
「逃げてたら偉大な剣士になんかならない!僕もやるよ!!」
「な、なら、俺だって!最強のタンクになるために!!」
ばっと立ち上がるタイト、その足は震えていた
「私も、怖いけど… みんなが!リュロがいるから!!」
まゆに力を入れて、目に輝きが宿る
四人はギルの視線を押しのけるように見続けた
結果――
「わーった、合格だ」
ギルからドボドボと溢れ出す魔力が霧のようにじわじわと弱まっていく
「ふぅ〜〜、流石にまいったぜ」
「そうね、こんな魔力を目にしたのは初めてだわ、」
「凄かったね!」
「……!」
四人は一息ついて、とろけるように腰掛けた
周りの兵士達も息を長く吐き、伸びた背筋を元に戻す
「ちょっとクエスト用紙見せてもらえるか?」
タイトがすかさずシワのついた紙を渡す
「ふむふむ、なるほど〜」
ギルは用紙を片手で持ち、目をこちらに向けて問う
「お前ら、ノルマポイント稼ぎだろ、何ポイント必要なんだ??」
四人が確認をとると、
「60!!??このクエスト選んだのは誰だ?」
ラルトがテヘッと笑う
「お前かぁ……」
はぁ〜と肩を落とすギル
「クエスト放棄したらノルマポイントも加算されるわけだしな…どうするべきか、」
左手で口を覆い、ぶつぶつと呟く
クエスト用紙と睨めっこを続けていると、
「しゃーねぇなぁ〜、俺がついていってやるかあ!」
クエスト用紙を机にバン!と置き、まぶたがより開く
「まじか!!!!」
タイトの顔に生気が流れる
「先生が!やったぁ!!」
「別にあんたの助けなんて、っ」
すかさずタイトがリュロの顔を苦しそう表情で見つめる
(やめろ、絶対それ以上言わないでくれ、頼む頼む頼む!!)
タイトが大を我慢するようなよそよそしさで懇願する
「仕方ないわね… え、あ、ありがとう、ございます」
ギルにペコリと頭を下げるリュロ
「よ、よろしくお願い、します!」
一番安心したのはロアであった、仲間が傷つく可能性が減った為、心が握られている感覚が消失した
「よ〜し、なら条件だ」
四人は何を言われるのかと思い、耳を鋭くする
「条件一つ、残りの40ポイントは俺がもらう」
四人がうなずく
「条件二つ、リザードマンの頭部はお前らにやる、残りは俺のものだ」
タイト以外はうなずき
(心臓部にある高価な魔石ィ!!まぁ、仕方ねぇか…)
タイトは「う、うぅ〜ん」と、ゆっくりうなずく
「死ぬよりはマシだろ?、で条件三つ目だ。リザードマンが一体以上の場合、即時帰還すること。以上だ」
四人はその場しのぎにうなずくと、
「よ〜し!なら、今すぐ出発だ!」
ギルはニヤリと笑みを浮かべ、俺について来いと言わんばかりに扉を押し開けた




