19話 和田海成
19話
ウィン!
金属質の扉が勢いよくスライドする
「うぉ、」
堺は少し驚きながら部屋を見渡す
なんの変哲もない部屋、正面に長方形の机が置いてあり、堺が座るであろう椅子が置いてあった
机も椅子も転生前に見た物と似ており、机はアルミのような素材で、イスはプラスチック素材で背もたれがあり、コロコロがついてあった
(面接室みたい、、)
じわっとした汗が頭から出てくるのがわかった
どうすればいいのかと思い、後ろを振り返ると、ほほえむ前田がいた
入ればいいんだなと感じた堺はゆっくりと歩き出す
中に入った、やはりなんの変哲もない部屋だ
ウィン!カチャ
後ろの扉が勢いよく閉まる、同時にビクッと体が跳ねた
パッと振り返ると扉が閉まっていた
ふぅ~、と呼吸をして正面の机を見る
(おや?、、)
机の左端にベルが置いてある
その下に紙が貼ってあり、「呼び出し」と書かれている
堺は戸惑いながら、チョン、とボタンを押した
、、、「あれ?」
何も反応がなかった為、カチ、カチ、カチカチカチカチカチ、、と連打する
シュィン!
SF系の動画で聞いたことのある高い音が、堺の正面から聞こえた
!!??
「君ね、ちょっとは待ちなさいや、エレベーターとかカチカチしても変わらんやろ??」
堺の目の前にある机ごしから現れたのは糸目が特徴的で、黒いスーツを着た男性の人だ
「え!!??あ!す、すいません!え、自分、すいません!」
目の前に人が現れた事にビックリしてしまい、いつも以上に言葉が詰まってしまう
「まぁ、ええよ、今度から気をつけてな」
彼は優しい声で安心させるように話しかけながら椅子に座る
「とりあえず、座りいや」
堺はガタン!と椅子を引く、勢いが余ったことをすぐにあやまり、シュッ!と席にかけ込む
「そんなガチガチにならんでも、まぁええわ、まず初めに自己紹介、自分、和田 海成と申します、以後、よろしく」
ニヤリと笑いながら少しだけ体を倒す
「え、自分は、さ、さかい、まこと、です、よ、よろしくお願いします、、」
だんだんと声が小さくなりながら自己紹介を済ませた
「うん、よろしく、なら先ほど書いた紙見せて」
堺は縮こまりながら紙をスンと渡す
「ふむふむ、、広島ね!自分、お好み焼き好きなんよ!あ~、思い出したら腹減ってきたわ~」
和田はそう言いながら背伸びをするように椅子の背もたれにグッと体を押しつける
堺は「ははっ、、」と愛想笑いをした
「えーっと、あ、学生さんね、、それと、はいはい、まぁ、そんなとこか、」
和田はぶつぶつと紙を見回して、スッと机に置く
「おっけ、入居権の申請を許可する、これから30日間ここに住めるから安心してな、それ以降はコレ、必要なるから覚えておいて」
そう言いながら和田は右手の親指と人差し指をくっつけて円を作り、堺に見せる
「それと、部屋はここの3階にあるから、はいこれ」
和田は銀色の鍵を堺の前に置いた
「あと、お金の稼ぎ方なんやけど、ギルド入るなり、なんなりして稼いで」
あっさりした説明に「?」が頭に浮かぶ堺であった
「まぁ、稼ぐことは大事やけど、自分の特質を活かすことの方が大事!」
和田は右手の人差し指を立てる
「と、とくしつ??」
堺は首を傾げてわからないことをアピールする
「あ~、特質ってのは自分の得意な魔法のことを言うんやけど、堺くん、魔法は使ったことある?」
死に戻りのこともあって答えにミスがあってはいけないと思い込み、オドオドとしてしまう堺であった
「その感じやとまだみたいやね、わかった、なら体力測定と魔力測定やろ!、え~っと、予定やと、、、今日からちょうど1年後やね」
資料に目を通した後に満面の笑顔で答えてくる
「参加人数も結構多いから盛り上がりそうやん、ちょっと参加してみてや、絶対いい経験なるけ、はい、これ参加するための書類、ここにサインして」
ホイホイと物事が進んでいく事についていけない堺は、動揺しながらサインを書いてしまう
「うん!なら1週間後にこの建物の一階のフロアで説明会あるから、朝7時ぐらいに来てな、ほなまたどこかで」
シュィン!
そう言って和田は目の前から消えた
「え、え、え~!、どうしよ!!なんか勝手にことが進んでるし、、とりあえず前田さんに相談だ」
堺は緊張しながらも、どこかワクワクする気持ちがあった
「と、といった感じで、なんか、測定することになりました、」
堺は部屋から出て前田に先ほどのことを話す
「魔力測定ですか、、、」
前田は少しの間ぼーっとしていた
「かなりハードな測定ですから今のうちに鍛えておくのが良いでしょう!私がサポートしますので、トレーニング頑張ってください!」
「え、あ、はい!」
何故か張り切っている前田であった
2人は部屋を出て、先ほどの広場に戻る、まだまだ活気があり、堺はここに住むんだと思うと、安心と嬉しさが込み上げてきた
2人はエレベーターがあるところまで歩き、3階フロアに着く、そこはホテルのように長い廊下があり、左右に部屋がある
突き当たりからさらに廊下が左右に続き、さらに奥に進めれるようになっていた
堺の部屋は突き当たりまで行く必要がない場所にあった
堺は部屋の番号と鍵に書いてある番号を2回確認して、鍵を差し込む、カチャリと音を立てながらひねると、扉が軽くなるのがわかった
そのまま、スーッと引くとワンルームの部屋が広がる
入り口の正面にはリビングがあり、入り口から右側に風呂とトイレが合わさった部屋ががある
正面のリビングにはベット、机が置いてあり、吊るされた照明がピカピカと白く光っている
「お、おぉ~!」
思い描いた平凡な一人暮らしの光景が広がっていた為、興奮する堺であった
前田はふふっと笑い、「失礼してもよろしいですか?」と一声かける
もちろんです!と堺は答え、2人は室内の中に足を踏み入れた
堺はベットに腰をかける、ギシッと沈む柔らかさが眠気を引き立てた
「堺さん、重要な話があるのですが、よろしいでしょうか?」
前田は机の椅子に座らず立った状態で話し出す
堺は「は、はい、」と眠気が吹き飛ぶ緊張感が体をめぐった
「私はこれからアルファを出てある目的を成し遂げに行きます」
「え、てことは、会えなくなるってことですか?、」
眉毛がハの字になり、悲しみの感情が表に出る
「申し訳ありません、ただ、ここにいればとりあえず安定した生活ができます、お金もお渡ししますので安心してください」
前田がいなくなることが悲しい堺だったが、安定的な生活ができる安心感が何よりも嬉しかった
「、、、、、やはり言わないとですよね、、こんなことを言うのは気が引けますが、堺さんの死に戻りの能力、自身の能力のせいで地獄が待っているかもしれません」
え!?と堺は思わず声に出してしまう
「というのも、この世界は混乱に満ちています、魔族や人類、転生者、そして神の存在、堺さんはこの混乱に巻き込まれ、何度も、何度も何度も何度も!耐えがたい思い、、死を経験するかもしれません、、」
前田はあわれみの表情を浮かべていた、助けてあげたいと言う気持ちがヒシヒシと伝わってくる
ポロ、ポロポロ、
堺は涙目になり、涙が数粒こぼれた
何もわからない世界が、これからくるであろう未来がとてつもなく怖かったためだ
「ど、どうすれば、僕は、僕は、どうすればどうすれば、どうすれば、、」
堺はジワジワと死への恐怖心を思い出し、心がグチャグチャになりかけていた
前田はふぅ~と息を吐き、すぅ~と吸い込む
「強くなってください!!誰よりも!何者よりも!!」
前田は目頭が熱くなり、声が震えていた
堺はしばらく涙を流しながら何も言えずに沈黙していた
「あなたの苦しみを理解することはできません、ただ!ここでやらなければ何も解決できないまま最悪の未来を迎えてしまう!!だから、強く!誰よりも強く!なってください!!」
堺はブワッと体に力がみなぎった、生きる活力、目的が生まれた瞬間であった
鼻水が出たまま首を縦に振る、何も言えない、言葉が出ないが体で理解できたのである
「堺さんが強さを望むのであれば、私は堺さんのためにここに残ります」
前田は体をグッと近づける
「お願いします、強く、強くなりたいです、誰にも負けないくらい、強くなりたいです」
前田は穏やかに笑う
「わかりました、でしたら今日はしっかり休まれてください、明日から猛トレーニングです!」
前田はスッと立ち、部屋の扉を開け、堺に向けて一礼をした
ガチャ
扉が閉まる音が聞こえ、堺はベットに横になる
心臓がバクバクと鼓動し、体が震える
不安を打ち消すほど興奮しているのだ
(やってやる、誰よりも、誰よりも強く強く!!)
生きたいと願う力はどんな力よりも強力であった




