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10話 メルディア学園

10話

「うっぁ~」

 爽やかな風が鼻の奥を通り抜けながら、堺はだんだんと意識を取り戻す

 チラリと周りを見てみた、横でラルトがダンゴムシのように丸くなって寝ている

 シュベルツは瞑想をするときのようなアグラの姿勢で、微動だにしていなかった

 フードをかぶっているので起きているのか寝ているのかがわからない

 奥にいた2人は外の景色を見るために、堺の横に並んでいた

 負傷した彼女は荷台の1番奥で仰向けになって寝ている

「あ、起きた、なあ見てみろよ、景色が綺麗だぜ」

 堺の手前に座っている柔らかい声をした男性が話しかけてきた

 彼はキリッとした顔立ちで、身長が180cm程あり、肩幅が広い

 銀色の鎧を全身に装備していて、その鎧には傷や凹みがところどころにあった

 頭の装備は今はつけておらず、彼の左側においてある

 髪色は金色と茶色が合わさった色で、髪型は短髪で少し刈り上げている

 「え、、ほんとだ、すごくきれい、」

 ひらひらと荷台にかけられた布から見える景色は、黄金色に輝いていた

 まっすぐ続く道の左右に黄金の植物が遠くまで生えている

 堺の目から一滴の涙が無意識に溢れた

 (あぁ、幸せだ、こんなに綺麗だなんて、)

「もしかして、泣いてる?ハハっ!そんなに良かったか!」

 彼は堺の背中をボンと押す、どうやら気に入ったみたいだ

「え、いや、これは、」

 堺は男が泣くのは恥ずかしいと思い込んでいる為、何か言い訳を探そうとする

 彼は同じ男として堺の気持ちを察していた

「わかった、わかってるよ、お前、面白いな、名前はなんて言うんだ?」

 優しくほほえみながら名前を聞いてくる

「堺、ゴホン!じゃなくて、サッカイまこ、、ゴホン!サッカイです、」

 実名を言いそうになり、焦りながら咳をついて誤魔化す

「だ、大丈夫か?」

 彼は心配そうにこちらを眺めている、堺は「大丈夫です、、」と小声で言いながら、こくりとうなずいた

「そうか!ならよかった!サッカイ、だな!俺はタイト ルーロスだ、よろしく頼むぜ」

 タイトは拳をグッと胸の前に持っていき、腕で力こぶを作る時のポーズを堺に見せた

 (体育会系ってやつかな?なんか圧がすごいなぁ、)

「よ!よろしくお願いします、」首だけをちょこんと倒してお辞儀をする

 堺はタイトの元気に応えようと声を大きくしたが、一瞬で元の自分に戻ってしまう

「あ、それと、俺の後ろにいるコイツはロア ティーナ、妹だ」

 タイトの巨漢から顔をぴょこっと出して「よろしくお願いします、」とボソボソ挨拶をする

 堺はロアが何を言ったか聞き取れなかったため、「は、はい」と言い相手にうなずく姿を見せてごまかす

 ロアは肌が白く、目がくりっとしており、口が小さい、まるで子猫のようだ

 格好は帽子が特徴的でキヌ素材で、大きめのカラーコーンを頭にかぶっている感じだ

 帽子の先端からあたりが尻尾のようにタランと垂れている、先端の先には白色のボンボンが付いていた

 服装は帽子と同じ明るめの紫で、下半身まで続く長いローブをまとっている

 (おぉ、可愛い顔をしてるなぁ~、美男美女の兄弟かぁ、)

 堺はうんうん、とモデルを見るような感覚で眺めていた

「う、う~ん!あ~!」

 荷台の中央で横になっているラルトが寝たまま体をう~んと伸ばして、くるんとダルマのように体を起こす

 タイトは体をラルトの方向に向ける、その際に全身に身につけている鎧がガチャガチャと重たい音を発した

「おう、目覚めたか!ラルト、だよな?」

「え、あ、そうだよ!ラルト マケット!よろしくね!」

 ラルトは手を出して握手を求める

「俺はタイト ルーロスだ!よろしく頼むぜ!」

 グワンと装備によって重たくなった腕でラルトの手をグッと握る

 スッと手を離してタイトがラルトと堺に質問をする

「サッカイとラルトはメルディア学園に入校するのか?」

「うん、入校するよ!そして、剣術を学んで最強の剣士になるんだ!」

 ラルトはグッとその場から立ち上がり、左の腰に装備している剣の持ち手を右腕でグッと握る

 タイトは「いい目標だ!」と言い、ラルトの思いに心がたかぶる

 ラルトはクッとキメ顔をした後にスンと座る

「え、あ、自分も、そうですね、」

 学園の詳細も何も知らない堺は、ここにきてなんだか不安を感じていた

「そうなのか!俺らも入校するんだぜ!」

 そう言ってタイトはロアの肩に手をかけた、ロアはいきなり自分が注目されていると思い、顔を赤くしてもじもじしている

「そうなの!?やったぁ!知り合いが増えたよサッカイ!嬉しいね!」

 ラルトは満面の笑みを見せてくれた

 堺は「そ、そうだね、」と苦笑いをしている、あまり人と関わるのが好きではないからだ

 「それとなんだけど、君はタイトの彼女さん?」

 ラルトはロアをじっと見つめる

 その間、ロアは「み、みないで、、」とボソッと言い、もじもじとしながら顔を赤くしていた

「あぁ~、まだ紹介してなかったな!ロアは俺の妹だ」

 ラルトは「そうなんだ!」とうなずき、そこからラルトとタイトはこれからについて話し続けていた

 堺は自分が会話の中に入らなくて良いと思い、ふぅ~と一息つく

 シュベルツは置物のように動かない、タイトがチラっと気にしている様子があったが、今はラルトとの会話に集中している

 奥で仰向けになっている彼女は「う、う~ん、、うるさいわね、、」とゴニョゴニョ寝言で注意をする

 夕暮れの日差しと、オレンジ色に輝く植物が生えている草原をガタゴトと走り続けた

 ヒヒィィィィン!!

 馬車がゴドドドドと揺れながら止まる

 堺はボケーっと道とその左右に生えている植物を眺めていたため、ビクッと体が飛び起きる

 タイトはアグラをかきながら腕を組んで休んでいたが、馬車が勢いよく止まる時にチラッと外をにらみ、襲撃ではないとわかって目を軽く閉じる

 ロアはボケーっと天井付近を眺めていたため、「ひぇっ」と情けない声を出してタイトの近くにズズズと寄る

 ラルトは座りながら両足を伸ばして足首をクルクル回して暇をつぶしていたが、馬車がゴドドドドと止まり出すと、その場にさっとかがむように立って、剣の持ち手に手を添えていた

 奥で寝ている彼女は「いった、いわね、、もう、何事よ、、」と気を取り戻していた

 シュベルツは微動だにしていない

 すると、業者の低い声が奥で仰向けになっている彼女の奥から聞こえてきた

 メルディア学園と聞こえ、皆は荷台から出ようと立ち上がる

「相変わらずいい反応速度だったなラルト!」タイトはニカっと笑う

「そう?ありがとう!」ラルトはエヘっと照れている

「いっ、たっ、、つ、ついたのね、」苦しそうな声を出しながら奥で仰向けになっていた彼女がノゾっと立ち上がる

 (す、すごっ、、あの攻撃をくらったのにも関わらず、動けるのか!?)

 堺は彼女の生命力に驚きを隠せなかった

「あ!起きた!無事でよかったぁ」ラルトはふぅ~と呼吸をして安心する

「よお!ラルトから聞いたぜ、オークに素手で挑んだってよ、ほんと度胸あるぜ」タイトはシュンシュンと空中にパンチを放つ

 ロアはタイトの言葉に合わせてウンウンとあいずちをしていた

「あ、あっそう、そんなことはいいから早く荷台から出てくれる??」

 彼女はハァハァと息をこぼしながら余裕を演じようとする

 ラルトとタイトは少し笑って荷台から出ようとする

 すると、シュベルツがすっと立ち上がる

 意識が正常ではない彼女以外の4人はいきなり動き出したシュベルツにビックリする

「お、おはようございます、シュベルツさん、が、学校につきましたよ、」

 堺はフード越しのシュベルツに恐る恐る話しかける

「おはようございます、そうですか、ではついてきてください」

 口しか見えていないがいつもの爽やかな笑顔をしている

 シュベルツは荷台から出る際に、中にいる人に向けて軽くお辞儀をした

 堺はコクンと頷いてからシュベルツの後を追う

「え!行っちゃうの?一緒に行きたかったなぁ、」ラルトは眉毛をハの字にしてハァーと息をこぼす

「またどっかで会うわけだし、そんときは声かけてくれよな!」タイトはグッと拳を握ってニカっと笑う

「え、あ、はい、では、失礼します、」堺はペコリと頭を倒した後にラルトに向けて手を振った

 ラルトはそれに気づき、元気な笑顔で手を振りかえしてくれる

 (すぐ会えるのに、なんか、お別れムードだな)

 堺は(大げさだなぁ、)と思い、荷台の外を眺めながら鼻でフッと小さく笑う

 そして、地面をチラッと確認してピョンとジャンプをして荷台から出た

 堺が地面に着地した後に、荷台の左側にいるシュベルツが堺の方向に体を向ける

「さぁ、つきましたよ、ここがメルディア学園です!」

 シュベルツのテンションがいつもより高い、何故だろうと思った堺は、荷台の陰から出てメルディア学園を見る

「えーーーーー!」

 堺は思わず叫んでしまう、というのもメルディア学園と言われているモノは大きな壁に囲まれた要塞のような場所だったからだ

「フフっ、予想とはちょっと違いましたか?」

 シュベルツはサプライズを用意した時のようなニヤリとした笑顔をしている

 目の前に広がるのは大きな壁、タワーマンションがズラーっと横に並んでいるようだ

「はい!こんなに大きな建物だとは思いませんでした!」

 堺は目をキラッキラさせてシュベルツの顔を見ている

「では、申し訳ありませんが、私のサポートは一旦ここまでとさせていただきます」

 シュベルツは笑顔から真剣な顔になり、堺を見る

「え、あ、ここまで、え、こ、この先どうすれば、、」

 堺はウルウルと涙目になりそうになる、絶対的な安心感のあるシュベルツから離れるためだ

「大丈夫です、学園は1から色々教えてくれます、なので安心してください」

 堺は本当は一緒にきてほしかったが、悲しい顔をして「わかりました、」という

「それと、もう一度言いますが、転生者だということはくれぐれも言わないようにお願いしますね」

 グッと顔を寄せて、圧をかける

「は、はい、わかりました、、」

 堺は圧に負けてチラチラと焦りながら周りを見た

「あれ?サッカイ!と師匠さん!行ってなかったんだ!よければ皆んなで行こうよ!」

 荷台からラルトが降りてきていた、背中には奥で横になっていた彼女をおんぶしている

「ち、、ちょっと、お、おろしなさいよ、」

 彼女は相変わらず苦しそうにしている

「動けないからしかたないでしょ?今日を逃したら手続きがめんどくさくなるよ?」

 ラルトはほっぺたを膨らませて彼女を説得していた

 彼女は「ふんっ、」と鼻息を漏らしてラルトの体を少しだけギュッと掴む

「そうですね、せっかくですし皆さんで向かいましょうか、」

 シュベルツはフード越しからラルトの方向を向いて微笑んだ」

「よっこらせっと」ガシャン!

 着地した時に鎧が悲鳴をあげる

「ひゃ、」

 フワンとジャンプをしてスワァァと着地したのはロアだ

「あれ?サッカイとサッカイの師匠?、先に行かなかったんだな」

「え、あ、うん、やっぱり一緒に行きたくて、」

 嘘ではないが嘘をつく堺はモジモジとしている

「そうか!それなら一緒に行こうぜ!」

 タイトはニカっと笑う

 堺はニタァと笑いながら頷いた

 すると、ラルトがメルディア学園についたことでテンションが上がり、「ではでは、メルディア学園に出発進行~!!」と元気に彼女をおんぶしながら歩き出した

 皆はラルトを先頭に大きな壁にある高さ3メートルほどの門に向かって歩き出す

 人がずらーっと並んでいる場所についた、列の先には兵士が3人立っている

「ちょ、ちょっと、おろしなさいよ、、」

 列の1番後ろにいたが、誰かに見られることが恥ずかしかった為、彼女は降ろしてとラルトにお願いをした

「無理したらダメだよ!」

 ラルトはそう言って彼女を降ろした、押せば何もできずに倒れてしまいそうな立ち方だったが、「いいから、」と言われて、皆は列が進むのを待った

 じわじわと列の人達が門の中に入っていき、ラルトが最初に門の前で待機をしている1人の兵士に声をかけられた

「この魔法石に手をかざすのだ」

 兵士が持ってきたのはりんごサイズの水晶だった、水色に透けており、光ってそうな見た目だ

 ラルトは「はい!」と少し勢いをつけてペタンと手をパーにして水晶に触る

「コラ!手で触れるでない!かざせと言ったのだ!」

 兵士は声を荒げて怒っている様子がよくわかった

「ごめんなさい!」とラルトは手をぱっと離しながら謝り、ゆっくりと手をかざそうとする

「もうよい!、、ラルト マケットだな、通ってよし!、はい次!!」

 ラルトは「エヘヘ」と頭に右手を乗せて、スサスサと門の中に入っていく

 タイトとロアが順調に門の中に入り、ヨタヨタの彼女も門の中に入っていった

 堺の番が回ってくる前に、シュベルツが堺に話しかける

「堺さん、どうしても無理なときは逃げてくださいね、その時はいつでも助けに向かいますから、」

 小声で話し終わる時にフードをすっと開けて、優しい笑顔を見せた

 堺は「ありがとうございます、シュベルツさん」と言い、お辞儀をした

 覚悟と悲しみを抱きながら門の中に入る決意を固める

 ふぅ~と心を落ち着かせて、兵士の掛け声と共に前に進んだ

 門の前には巨漢の兵士が2人おり、両開きの扉をズッズッと開けて中に通してくれた

 

 

 

 

 

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