表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の華-クビ切り社畜、最強幼女に生まれ変わる-  作者: 東山ルイ
シーズン1 社畜青年はおしまい
4/38

E4 紫色のカレー

「そういえば、お腹すいたな~って言ってたわよね?  なにか作ってあげましょうか?」


 守原は台所へ向かいながら、スマホを手に取る。冷蔵庫には、酒の缶と賞味期限が曖昧な(おそらく腐っているであろう)卵と、これまた数年前に期限切れしていそうな調味料だけだった。

 なので、おそらく宅配注文を考えているのだろう。しかし、別のことを思いついたのか、急に目を輝かせた。


「そうだ! 私の特製カレーはどう?」

「えっと……」


 カレーというと、一般的には美味しいものだ。ただし、この部屋の惨状を見る限り、守原の料理の腕前には不安しかない。しかも『特製』という言葉が付いているのも怪しい。


「遠慮します。お腹、そんなに空いていませんから」


 もう取り繕う余裕もない。手をブンブン横に振って、拒絶のサインを出す。


「もう、遠慮することないわよ。私のカレーって、結構評判なのよ?」


 守原は意気揚々と言うが、誰に評判が良いのだろうか。タバコの匂いと酒臭さを消し去った部屋には、まだ料理の匂いが一切しない。自炊していないのは明らかだ。


「あの、本当に──」

「さぁ、ちょっと待っててね♪」


 守原は軽快な足取りで台所へ向かい、鍋を取り出し始めた。もはや止められそうにない。


(なんで、こんなことになっているんだ……)


 ライデンは深いため息をつく。そもそも、なぜ自分がこんな姿になってしまったのか。そして、このデバイスの正体は一体……。


 突如、守原の声が響く。


「ライナちゃん、できたわよ!」


 仕方なく台所へ向かうと、守原がなにやら不思議な色をした液体を鍋に注いでいた。それは紫色に輝いており、明らかに普通のカレーではない。


「これが私特製の魔法カレーよ! 魔力増強効果があるの!」

(やっぱり、怪しいものだった……)


 まさか、これを食べろと? 紫色のカレーなんて、聞いたことも見たこともないぞ? ライデンは後悔するが、もう助からない。儚い人生だった、と辞世の句でも詠んでおこう。


「さぁ、召し上がれ!!」

「あ、はい……」


 スプーンを渡され、ベッド近くの机の上に置かれたカレーを、恐る恐る口にする。


 結果、


 味は、意外と悪くなかった……。なぜだ? あんなものを入れておいて、なぜ味がまともなのだろう。だいたい、あれの正体はなんだ。ひょっとして本当に、魔力を増強するだけの効果があるのか? いや、そんなものがあればライデンだって好き好んで買っているはずだ。いよいよ分からなくなってきた。


「どう? 美味しい?」

「あっ、はい。美味しいです。見たことない色だったので、正直怖かったですけど」

「だってそれ、私〝特製〟の魔力増強剤が入っているんだもの」

「あぁ、それで特製と」

「そういうことよ。でも、私にはこれ以上の魔力は必要ないから、作るだけ作って放っておいたんだけど……お口にあって良かったわ」


 消費期限とかを気にしたら負けだ。多分、腹を下すくらいで済んでくれると信じよう。

 それにしても、空腹なのも相まって意外と食べられる。レトルトカレーにパックご飯と変な増強剤が入っているだけなのに、食べ盛りの子どものように──いや、今のライデンは子どもの姿。もしかしたら、身体を成長させるために栄養を求めているのかもしれない。


「ごちそうさまでした~」

「お粗末様でした。さて、ライナちゃん。いっしょにお風呂、入りましょうか」

(は?)

「え?」

「もう20時よ? 子どもは早くお風呂入って、早く眠ることが大事だわ」


 一理はある。だけど、さすがに中身28歳男性が、若い女性と一緒に湯船に浸かるのはいかがなものか。恋人関係なら分かるが、今のライデンはいわば守原を騙しているのだから。


 というわけで、


「いや、ひとりで入りますよ。色々お世話になっちゃって、すみません」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ