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氷の華-クビ切り社畜、最強幼女に生まれ変わる-  作者: 東山スバル
シーズン3 おれが私になるまで

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E39 バカヤロー、コノヤロー

 ライデンと守原は、思わず顔を合わせてしまった。


「どうした? おれを疑ってるのか?」

「いえ、そういうわけじゃ……」

「疑うなら先に教えてやるよ。ヤツは日課のランニングをしてる。そこの公園で」高杉組の男は近くの公園を指差す。「ボディーガードもつけずに、殺してくださいって言ってるようなものに思えるが、さっき言ったようにヤツは〝悪魔の片鱗〟の達人だ。魔力で身体をコーディングしてるのさ」


 そう言って、高杉組の男は車に乗って去っていってしまった。

 ライデンは守原に向き直す。


「どうします?」ライデンは不安げな表情だ。

「〝悪魔の片鱗〟の達人……。思い出したわ。良い? ライナちゃん。相手は大魔術師の佐藤シデン。その術式は悪魔の片鱗のみ。シンプルで圧倒的な魔力操作で相手をなぎ倒す化け物よ。ここは本部との連携を待って……」


 守原が現実的な選択をしかけたとき、


 背後からぞぉッとする気配を覚えた。守原も感じたらしく、ふたりは息を呑み込みながら、振り返る。


「遅ぇ」


 男が立っていた。ライデンより当然背丈を上回っているが、守原には負けるくらいの身長の男。童顔で、手元にはタバコを持っている。髪の毛はパーマのかかった黒の短髪である。


 守原が唇を震わせる。「こ、コイツは……」

「名乗りくらいできるよ、バカヤロー。佐藤シデンだ」佐藤はライデンを指差す。「あぁ。あと悪いけど、オマエには必殺命令が出てるんだ」

(あのとき、イリヤとの同盟を蹴ったからか……)

「黙り込んでいれば問題がいなくなると思うなよ? さて……」


「グラキエース・デコイ・パーティー!!」


 このまま闘っても勝てる見込みがない。ライデンは、動き回る氷の囮を大量展開した。それに従い、地面まで凍り始める。


「デコイ・パーティー、ねぇ……」


 されど佐藤は慌てていなかった。彼は無数のデコイの中から、正確にライデンの本体を見つけ出す。


「……!?」

「魔力の探知も、悪魔の片鱗だろ? バカヤロー。んじゃ、死のうか」


 魔力を纏う、あるいは内部に流す、はたまた両方の性質を持つ拳をくらえば、ライデンはトマトみたいにつぶれてしまう。分かっているが、速度も跳ね上がっている拳を交わせるわけもない。一度捕まった時点で、運命は決していた。


 そんな中、


 マウンティングを取られて胸元を殴られそうになっていたライデンに、守原が詰め寄ってきた。彼女は電流みたいな現象とともに、佐藤を一旦ライデンから引き離す。


「ライナちゃん、大丈夫!?」

「なんとか……。今のって、悪魔の片鱗ですか? ちょっと私に案があるんですけれど」


 ライデンは立っているのもやっとの中、守原に耳打ちした。


「分かったわ」


 守原は了承した。彼女は埃をはらう佐藤の元へ突撃していく。


「おいおい、学生レベルの片鱗で勝てると思ってるのか?」

「……!!」

「オマエ、実戦経験少ないだろ? せいぜいトレーニングくらいしかないはずだ。女がストリートファイトで男に勝てると思ってんのか!?」

「それでも……!!」守原はなんとか佐藤の攻撃をくらい止める。「私には義務があるのよ! この街の治安を守るという義務が!! ──グッ!?」

「義務は強くなければ守れないだろ、コノヤロー」


 守原は腹部に一撃をくらい、その場にへたり込む。


「で? あのガキはなにしてる? うまく逃げやがったか?」


 ライデンは守原の闘い方から、悪魔の片鱗というものを理解し始めていた。ここに幻獣型雪女の力が加われば、相当な戦闘能力を手に入れられる。

 しかし、まだ理解し始めただけ。うまく扱える自信なんてものはない。

 であれば、尻尾を巻いて恩人すら見捨てて逃げ去るか?

 そんなのは、ライデンの選択として正しくない。


「──ディアボロス・アイスグラッシュ!!」


 刹那、凍ったように見えるライデンの足が佐藤の頭部に直撃した。


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