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氷の華-クビ切り社畜、最強幼女に生まれ変わる-  作者: 東山スバル
シーズン3 おれが私になるまで

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E38 身体と魂が不一致とは限らない

 ライデンの評定は〝大魔術師〟だが、その地位に立つためには〝悪魔の片鱗〟と呼ばれる近距離戦闘特化の魔術を覚える必要がある。幸いなことに、魔法科学デバイスを使えば〝悪魔の片鱗〟を取得できるので、ライデンは横たわりながら有線イヤホンらしき物体を耳につける。


「どう? ライナちゃん」


 片耳だけイヤホンみたいな物体を入れているので、守原(もりはら)美夢(みゆ)の声が聞こえる。不安げという声色がよく似合う。


「大丈夫ですよ、守原さん。悪魔の片鱗デバイスは成功率99パーセント超えですから」


 ふと、心に99パーセントという言葉がちらついた。つまり、1パーセント失敗するということか。

 まぁ、よほどの悪運でもない限りそんなことはあり得ないと、ライデンは音楽なのか不協和音なのか怪しい音を聴いていると、


『エラー、エラー、エラー』


 ……まさかの現実が待っていた。エラーを知らせる音は、すなわち〝悪魔の片鱗〟を取得できなかったというわけだ。

 そんな現実を受け入れられず、ライデンはふらっと立ち上がる。


「ど、どうしたの? ライナちゃん」守原はエラー音を出すデバイスに気がつく。「嘘でしょ!? 魔力不足以外でエラー出すなんて!!」

「……こうなったら、プランBで行くべきでしょ」

「プランB?」

「悪魔の片鱗が記されている魔導書は必ずある。戦闘向けとしてはもっともポピュラーだから、なんなら図書館でも借りられるかも」

「で、でも。魔導書のほうが魔力消耗激しいわよ?」

「美夢さん、イリヤのところへ理亜を取り返しに行ったときのこと、覚えています?」ライデンは口角を上げる。「今、私は逆成長の真っ最中です。年齢が若ければ若いほど、成長速度が上がっていくんです。というわけで、図書館行きましょう」

「え、えぇ」


 ライデンは雪女に関する魔導書をある程度読み進めたので、熱波を寒さだと認識しなくなった。これも、魔力が多いことへの裏打ちになっている。魔獣型の魔導書なんて、並みの人間では数ページも読めないのだから。


「でも、ライナちゃん」

「なんですか?」

「君って、もともと男性だったの?」


 しかし、イリヤと出会ってしまったことは、こういう疑念につながってしまう。イリヤは姿形以外男性であることを隠さなかった。なので、守原が疑うのはある種の必然といえる。


「そうだとしたら?」

「身体と魂は必ずしも不一致とは限らないわ」

「間違っちゃいないですね」

「でもひとつだけ言っておく。ライナちゃんことは好きよ」

「ありがとうございます」


 ライデンと守原は、似たような哲学を持っているようだ。

 そのままライデンと守原は車に乗り、ライデンは後部座席に座った。


「図書館まで10分くらいね」

「分かりました~」


 そう言い、車が走り出すと、


「美夢さん」

「なにかしら?」

「さっきから尾行されています。私みたいな素人でも分かる尾行です」

「嫌な予感がするわね……」

「図書館で騒ぎを起こすわけにはいかないから、そこのコンビニの駐車場に停めてしまえば良いのでは」

「そのあと現地のピースメーカーに身柄を渡すわけね」

「それで行きましょう」


 守原の運転する車は駐車場に停まり、降りてくる連中を待つ。距離を詰められすぎても困るので、守原はピースメーカーに配られるゴム弾の入った拳銃を持って外へ出る。


「なんの用かしら?」


 駐車場の開けた場所で、ライデンは窓を開けながら経過を観察する。


「高杉組、といえば分かるか?」

「ヤクザがピースメーカーになにをするの? その気になれば、ヤクザなんていつでも捕まえられるのよ」

「いやー、おれらは必要悪だ。イリヤ・ファミリーとかいう半グレ集団に勝てるのは、おれたちの協力ありきだろう?」男は間髪入れず言う。「イリヤ・ファミリー幹部のひとりの居場所を教えてやる。〝悪魔の片鱗〟の達人って言われてるヤツだな」


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