E36 情報公開
「理亜!」
ライデンは理亜のほうへ走り出そうとするが、
「まぁ、落ち着けよ」
謎の物体とともに、ライデンの歩みは止められた。彼女は転んで膝から血を流しつつも、イリヤを睨む。
「怖ぇ顔するなよ。オマエとおれって、いわば同志みてぇなものだろ?」
「ど、同志? ……はぁ!?」
奇妙な生き物が目の前にいた。下手な妖怪より、よほど恐ろしい存在が立っていた。
(う、嘘だろ……。なんでこの世に、野郎の声で話す少女がいるんだよ!?)
ライデンは目を疑うが、やっぱりそこには銀髪ショートの中学生くらいの女子が立っている。
「ど、どういうこと?」
守原も思考が言葉にできていないようだ。あの渋い声はどこから出ている? 喉仏もないはずなのに。
「〝逆成長デバイス〟、覚えているか?」
ライデンは口を開けながら、頷く。「あ、あぁ」
「忘れるはずもないよな。なら、あれを作ったヤツは調べて出てきたか?」
「い、いや」
「なるほど。オマエの親父はすげぇな。なら、教えてやるよ。あれを作ったのは、おれだ」
「は、はぁ?」
「オマエの親父とおれの共同発明だよ。おれとオマエの親父は、親友だが出世を競う仲でね。イリヤ・ファミリーのドンっていう〝副業〟も気に入っていたが、やはり魔法科学デバイスのほうが楽しかった」
指摘すべき部分が大量にある気しかしないが、とりあえずライデンも守原も彼女? の話を訊く。
「だが、ある日バレたんだ。いや、オマエの親父がバラしやがった。それでアイツは部長に昇進。おれはクビになったが、市販されるはずだった逆成長デバイスは全部奪ってやった……さて、長話しちまったな」
今度は守原が身体を横転させそうになった。彼女は運動神経の良さでよろけずに済んだので、理亜の元へ向かう。
「そのガキは守原美夢、オマエが連れて行け。じゃねぇと、工場を吹き飛ばすぞ?」
「……よっぽどライナちゃんと話したいことがあるのね?」
「アンタが知っても意味ってモンがねぇ。それに、おれとアンタで話すことってなに? 家なら、火災保険で新しいところ買えば良いだろ?」
「……!!」
守原はその銀髪の少女? を睨むが、その動作自体が無駄でもあるのも理解していたようで、理亜を背負って廃工場から出ていった。
「さて、鈴木ライデン」守原がいなくなったのを視認し、イリヤは言う。「アンタと接触を図った理由を教えてやろう。ただし、他言無用だ。互いに理がないからな」
「……、」
「まぁ、そう睨むなよ。それにしても、静かな夜だと思わねぇか?」中学生くらいの銀髪女子は、葉巻に火をつけた。「草木も眠る丑三つ時、ってか。アンタの親父とこの国へ来てから数年経つが、夜に静けさを覚えたのは久々かもしれんな。これもそれも、全くもって弱い姿の所為か」
「……なにが言いたい?」
「おれもアンタも、不完全なデバイスの所為でこうなっちまった。そして、おれたちをモルモット扱いしたのは、アンタの親父ってことだよ」
消え入りそうな声で呟く。「モルモット?」
高笑いを飛ばした。「まだ気がついていねぇのか? 逆成長デバイスが強奪される前、被験を行った者。データごと奪われたが故、新たな実験台になった者。アンタとおれの共通点は、すなわちそれだ」
ライデンは息をごくりと呑んだ。目の前にいる者がイリヤかどうかという確証もなく、むしろこの姿の所為で混乱するのは明白。それなのに、眼前の少女の言葉は、強い説得力に満ちていた。
「なぁ、ライデン。ここは同胞らしく仲良く手を組もうぜ」会話を変え、彼女は戦慄するほどの迫力を出した。「イリヤ・ファミリーの解散を命ずる代わりに、おれの犯罪経歴を消せ。もう追われるだけの生活は嫌なのさ」




