E35 覚悟を決めろ
文字数調整のため、いつもより文字数が少ないです
(なんで、正体を知っている……!?)
スピーカーモードになっていたので、その声はライデンにも聞こえていた。
それから数秒黙り込んだ後、ライデンが口を開く。
「……貴方は誰だ?」
『おれ? おれか、おれァ……イリヤ・パワーだ』
電話の向こう側から聞こえる高笑いが、この男をあの〝イリヤ・ファミリー〟のドンとして判別して良いのか迷わせる。
『おいおい、ホントだよ。そんなに疑うなら、おれの場所を送ってやる』
「……ヒトをオチョくるのも、大概にしてよね」守原が答える。
『オチョくっているのは、オマエらのほうだろう。うちの特攻隊長が手負いで帰ってきたのって、オマエらの所為だよな?』男は更に高笑いを飛ばす。『まぁ、許してやるよ。おれの居場所に来てくれるのならな。ただ……人質がいる。ちょっと強く蹴っちまったみてぇで、そろそろ病院運ばねぇと後遺症が残るかもなぁ』
電話は一方的に切られた。
ライデンと守原は顔を合わせ、まず褐色幼女が答えた。
「罠、ですよね。これ」
「えぇ……。もし本当にイリヤだったら、他のピースメーカーも連れていきたいくらいよね」そこまで言って、守原はうなだれた。「いや……、イリヤ本人と交戦するには上の許可が必要だわ。〝超魔術師〟は大国の軍隊とも対等に渡り合える存在だから──」
「なら、私だけ行ってきます」
「え?」
「司令部の許可なんて待っていたら、理亜が殺されてもおかしくないですよね? 人命をみすみす見逃して、なにが治安維持ですか? 私は行きますよ」
冷静かつ、しかし静かな怒りを感じる口調で言い放った。
「……分かったわよ。なら、私も行くわ」
抱きつけと言わんばかりに、彼女は手を広げる。
「ライナちゃん、捕まって。全速力で行くわ」
「はい!」
*
廃工場にイリヤ・パワーはいる。それがフェイクで兵隊を送り込んで来なかったら、もうライデンと守原は往生するしかないだろう。
守原は、ピースメーカーに支給される、魔力切断石の銃弾が入った拳銃をベルトとシャツの間から外した。イリヤの兵隊がいればほとんど役に立たないが、イリヤ単体であれば威嚇にはなるかもしれない。
ふたりは無言で、裏口から工場のメインフロアを目指す。
そして、
「おいおい、こっちは堂々と居場所くれたんだからよぉ、コソコソ隠れるな」
カツカツ……という足音とともに、背後から先ほどの電話の声が聴こえた。
「なぁ?」
その声の主は、廃工場内へ一斉に光りをともした。
「といっても、来てくれただけ感謝すべきだな。ほら」
明るくなった廃工場の奥のほうに、理亜が謎の物体で縛られ放置されていた。




