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氷の華-クビ切り社畜、最強幼女に生まれ変わる-  作者: 東山スバル
シーズン2 鈴木ライナの憂鬱

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E33 あどけない夢掲げた

 ライデンは、守原と理亜が見ていない隙を狙い、露骨に口を尖らせた。


 みんなが魔法を使える世界? そんな世界が築かれたら、今更作られたところで、ライデンがこんな姿になったのも、魔法科学の世界をクビになった事実も消えない。


(……ガキの言っていることに、なんで苛立っているんだ。理亜はなんにも知らねぇから、そんなセリフが吐けるだけだろうに)


 ふたりはテレビのほうを向いていた。どうも、野球中継のようだ。守原が野球好きなので、この家ではしばしば野球の映像が流れている。


「ブルーオーシャンズ、先制しましたね」

「今対戦してるチームと12ゲーム差だから、あんまり意味はないわ。でも、嬉しいのは嬉しいわね」

 ライデンが理亜へ尋ねる。「理亜、野球好きなの?」

「まぁね。野球ゲームしてるうちに好きになっちゃった」

 今度は守原が尋ねた。「贔屓チームは?」

「どこでもないですよ。強いて言えば、負けてるほうを応援したくなります」

「変わっているなぁ。こういうのって、好きなチームがあるから見るんじゃないの?」

「だって、大抵の場合地元のチームを応援したくなるし、僕には野球好きな親はいない。回された親戚のヒトたちの贔屓は、地域で全く変わってくるもん」

「なるほど……」


 これでは、触れないほうが良かった気がしないでもない。

 少し気まずい沈黙が流れる中、理亜が突然静まりをひっくり返した。


「ところでさ、魔術犯罪対策隊のネットワークにアクセスしたら、近くで薬物取引が行われてるらしいよ」

 ライデンは溜め息をつく。「なんでそれを早く言わないんだ?」

「僕、始末書書いたばかりだから拗ねてるんだよ」

 ライデンは立ち上がる。「理亜が拗ねている間にも、治安は悪化していくぞ。場所はどこだ? 構成魔法使いは?」

「ん」スマホを見せてきた。

「魔術師相当ひとり? まぁ、ただのクスリの取引なら護衛もそんなに必要ないと」そこまで言って、ライデンは違和感に気がつく。「なぁ、他のピースメーカーやピースキーパーは知っているの? 知っているなら、動かなきゃまずくないか?」

 守原は立ち上がり、着替えている中言う。「仕方ないわよ、ライナちゃん。凶悪犯罪じゃないもの。それに、魔術師ひとりに懸かってる賞金なんてしれてるから、みんな動きたくないのよ」

「……ゲンキンな世界ですね」

「とりあえず、見てしまったからには仕方ないわ。私はもう着替え終わったわよ」


 ライデンはいたずらっぽく理亜を見る。守原レベルの美人でスタイル抜群のお姉さんが着替えているところを見て、股間にテントでも張っているに違いない、と。


「どしたの?」


 が、理亜は全くの無反応。股間も、だ。

 これでは余計に性別が分からない。ライデンの首はうなだれた。


「なんでもないよ。さて、理亜。行くよ」

「どこへ?」

「は? おま、そりゃ犯罪者逮捕に決まっているだろ」

「だからさっきも言ったじゃない。始末書の件で僕は拗ねてるって」

「そういうところだけ子どもぶるなよ……。まぁ良いや。なら留守番してなよ。しっかりね」

「うん」


 ライデンと守原は、理亜から送られてきた住所を元に外へ出た。


 *


 魔力切断石というものがある。要するに、魔力の流れを断ち切ってしまうという石だ。魔法科学の世界で作られ、今や手錠代わりになっている。

 魔術犯罪者には、それ用の留置所と刑務所がある上に、仮に切断石が外れた場合、普通の警察では対処しきれない可能性がある。車は魔術犯罪対策隊が出してくれるので、評定・魔術師に守原が持つ手錠をつけるだけだ。


「あっさり終わりましたね」

「そうね。なにか悪いことの前触れみたい」

「不吉なこと言わないでくださいよ。そうだ、理亜はまだ不貞腐れるのかな」

「一応、電話かけてみるわ」


 守原はいつの間にか交換していた、理亜のスマホに電話をかけた。

 が、待てと暮せとも出る気配がない。


「まさか……!?」


 言霊というものを、あまり侮らないほうが良いかもしれない、とふたりは思った。


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