E32 事実は変わらない
ライデンはつらつらと語っていく。理亜はその説明にメモを取っていく。
「使用者の魔力を自動で測って、それを元に出力を調整するんだよ。マギア・コードを使う上で、真っ先に覚えなきゃダメなところだね」
相槌を打ちながら、理亜は真剣な眼差しだった。興味津々という態度だ。
そんな理亜は、ライデンへ質問してくる。
「なら、守原さんが使ったあのデバイスは、そういうコードを書いたってこと?」
「そうだね。ただ、手製だから少し条件が違うかも。詳しくは、美夢さんが戻ってきたら聞いてみて」
「うん!」
そんな折、守原が戻ってくる。ベランダに干すとタバコの匂いがつくので、洗濯物はもっぱら部屋干しだ。
「守原さん、あの運転ができるようになるデバイスって、どうやって作ったんですか?」
「いきなりどうしたのよ。まぁ良いけど」守原はソファーに座る。「あれは、超簡潔に言うと、直接脳波に干渉するものよ。脳波を読み取って、魔力を使う代わりに運転パターンを脳にインプットするの。危険察知能力も備わってるわ」
理亜が息を呑む。「そんなこともできるんですか?」
「魔法科学デバイスの最先端は、脳波の制御よ。魔力消耗も最小限に抑えられて、最大限のリターンを得られる。でもまぁ、最初に知るべきことじゃないわね」
ライデンが補足する。「美夢さんレベルの開発者じゃないと、理解するのは難しいよ。私の兄もチンプンカンプンだって言っていたし」
「へー……、守原さんってホントにすごいヒトなんだ」
「すごいヒトだよ。一体なにを目指しているのやら」
「私が目指していること? そうね……世界を変えられる技術者、だったわ」
真面目な表情で守原がそう答えたとき、インターホンが鳴った。
ライデンは頬を緩ませる。「ムック・バーガーだ」
*
3人でハンバーガーを食べながら、理亜は質問攻めを続ける。
「守原さんは、なんで魔法科学の世界へ進んだんですか?」
守原は、ポテトを口にしながら答える。「端的に言えば、才能があったからよ。やってるうちに、しっかり楽しくなってきたけれどね。でも不満もあった。軍事利用や企業の利益追求ばかりで、だんだん嫌気が差してきたの。だから今は、本来の夢だったピースメーカーに入った。ヒトを守るという夢に向かって、前進できた気がするわ」
「なるほど。じゃあ、ライナちゃんはどうしてピースキーパーに?」
ライデンは、一瞬言葉に詰まった。彼女は飲み物を飲み、守原も知っている事実を話すことにする。
「まぁ、なんというか、こう見えても正義感が強いんだ。それに、挑戦してみなければ分からないこともあるしね」
「でも、きょうみたく危険な目に遭うこともあるでしょう?」
理亜の質問に、守原が割って入る。「だから、私がついてるのよ。貴方たちふたりだけに危険な任務をさせるつもりはないわ」
ライデンも呼応する。「美夢さんがいれば、絶対大丈夫ですからね~」
守原は(今のライデンが幼女の姿ということもあり)、ライデンを大事に思ってくれている。その思いにはしっかり答えるべきだろう。
「で、理亜はどうなの? ピースキーパーを経て魔法科学開発者になりたい理由は?」
「僕? 稼げるからと……みんなが魔法を使える世界を作りたいからかなぁ」
「みんなが、ねぇ」
「うん。今の世界は魔法が使えるか否かで、区別分けされちゃう。そんなの、寂しいじゃん」
ライデンは、守原と理亜が見ていない隙を狙い、露骨に口を尖らせた。
みんなが魔法を使える世界? そんな世界が築かれたら、今更作られたところで、ライデンがこんな姿になったのも、魔法科学の世界をクビになった事実も消えない。




