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氷の華-クビ切り社畜、最強幼女に生まれ変わる-  作者: 東山スバル
シーズン2 鈴木ライナの憂鬱

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27/39

E27 始末書を添えて

「て、テメェ!!」


 こうなると、桑田もなりふりかまっていられない。彼は凍らされていない左足でライデンを蹴り飛ばす。


「ぐうッ!」


 体重40キロにも満たない幼女の身体は、桑田の火事場のクソ力か魔法の一種かによって、駐車場の壁まで跳ねることなく吹っ飛んだ。


「はぁ、はぁ……。クソガキがァ!!」


 壁にぶつかり身体を全く動かせないライデンへ向けて、桑田はもはや後先考えず拳銃の照準を合わせるが、


「ピースメーカーよ!! 魔術犯罪で貴方を逮捕するわ!!」


 氷の上をパキパキと割りながら、身長の高い女が現れた。彼女は足が凍って動けない桑田の拳銃を、引力で引き寄せるかのごとく自身の手に収めた。


「チィッ!!」


 〝大熱波〟で氷を溶かしてしまえば良いが、せいぜい逃げることくらいしかできないだろう。なにせ、片足が壊死し始めているからだ。まともに闘えるわけがない。

 ならば、桑田は最適解を取るべきだ。


 刹那、


 凄まじい熱波が、一瞬だけ桑田を中心に広がった。車の窓ガラスが割れ、銃火器なんて使い物にもならない。

 溶鉱炉のように、すべて溶かし尽くす気なのか? ライデンは薄れゆく意識の中、顛末をしっかり見る。


 そうすると、


「やはりか……!! ピースメーカーたる者、ピースキーパーのガキを守るのが最優先事項になるんだなぁ!?」


 その背丈の高いキツネ顔の女──守原美夢は、ライデンのほうへ駆け出した。自身の魔法でその幼女を守ろうとしたのだ。

 だが、それが仇となった。桑田は姿をくらませたのである。


「ライナちゃん、しっかりして!1 骨、折れてるわよね!?」


 一瞬だけ桑田の方向を向いた守原だったが、すぐにライデンへ向き直した。彼女は膝をつき、ライデンの身体に触れてなにかしらの魔法を使い始めた。


「あの、桑田っていう、無法者を逃して、良いんですか……?」

「……貴方が無事なら、それで良いわ。今はね」


 やはり犯罪者をみすみす逃したのに思うことはありそうだが、それでも守原は気丈に振る舞う。

 やがて、電流を流されたように、ライデンの身体がビクッ!! と動く。そうすれば、ライデンの身体は動けるようになっていた。


「ライナちゃん、良かったわ。〝修復術式〟が効いて」

「良かったです……。でも、美夢さんなしで動いちゃダメみたいですね。もし美夢さんが駆けつけてこなかったら、と思えばゾッとします」

「そうよ。これからは、よほどの緊急事態じゃない限り私を待ってから動いてね」

「そうだ、理亜と合流しなきゃ」

「理亜って、あの子よね。性別が分からないっていう」

「そうです。スマホがやられているので、自分の足で出向かないと」


 なんとか身体を修復され、ライデンは理亜の隠れている場所へと向かう。かなり奥のほうにある、もうひとつの入口兼出口に理亜は身を潜めているはずだ。


「理亜~。どこにいる?」


 その呼び声とともに、理亜が車の横から現れた。


「熱波、大丈夫だったの?」

「うん。ここまでは来なかったよ。ごめんね、戦闘向けの魔法使えないからって、ライナちゃんに押し付けちゃって」

「イレギュラーはつきものだから、仕方ないよ」

「で、隣にいる方が守原さん?」

「うん」


 第六感を操れるという宮居理亜は、数歩足を後ろに下げた。なにか危険な兆候でも覚えたか。


「(汗で濡れて可愛らしいわ。身体ペロペロしたいわね……)」

「美夢さん、聴こえています。理亜がドン引きしているの、気が付かないんですか?」


 ひとまず、戦闘が終わった。

 なお、後々ライデンと理亜は、ピースメーカー不在での戦闘行為に対する始末書を書かされる羽目になったという。


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