E26 大魔術師ライナVS無法者樋熊
ライデンは口を抑える。「す、水分が……!!」
このままだと脱水で死ぬ。しかしおそらく、この地下駐車場だけに〝熱波〟を当てているはずだ。なら、外へ出てしまえば良い。ライデンは残り少ない水分と力を振り絞り、地上へと向かおうとする。
だが、
「おいおい、逃がすと思うか?」
桑田はライデンのザマを嘲笑し、熱波を風のごとく動かして出口付近に張った。この熱の中外へ無理やり出たら、確実に溶けて死ぬ。雪女の能力を使わず、ただの人間として向かっても死は避けられない。それほどの熱が集まっていた。
(チクショウ……。出られないのなら、やっぱりアイツを倒すほかなさそうだな)
熱波が一点集中したことで、駐車場の中はむしろ普通の温度に戻りつつあった。これなら、雪女の力も使える。ただ油断はできない。ライデンが雪女の能力を使った途端、桑田が再び熱さをこのスペースに広げる可能性のほうが高い。
であれば、どうする? 先ほど、理亜がなにかを言いかけていた。おそらく、攻略方法があるということを知らせたかったのだろう。
(いや、待てよ。武器取引を行っていると聞いたから、ここへ来た。その武器には魔法使いを穿つモノもある……ってことか?)
理亜がそんなことを言っていたのを、咄嗟に思い出した。
ライデンは出口付近から走って、最前タイヤを凍らせた、しかし今は高温の所為で動かない車のほうまで向かう。
「おいおい、なに考えてンだ?」
(気づいていない!! チャンスだ!!)
車のほうまでたどり着き、ロックが壊れたトランクからハンドガンを取り出した。
「おれ相手に、銃弾が効くと思ってンのか?」
「効くと思っているから、持ち出したんだよ!!」
映画や漫画で見た拳銃の扱い方通りに安全装置を解除し、ライデンは桑田へそれを向ける。
そして、
四の五も言わずに、ライデンは桑田の頭を目掛けて発砲した。
結果、
「下手くそだなぁ。オマエ、弾いたことねぇだろ? まぁ……ガキだから当たり前か」
幼女になって弱まった筋力と、そもそも銃を使ったことがない現実、それに加えて……。
「良いか? ヘッドショットできるヤツなんて、軍人でもそうはいない。普通は肝臓を狙うんだよ。有効打になるからな」
ある種の忠告をしてくるかのように、余裕たっぷりの笑みを浮かべながら桑田は言い放った。
「それと、そっちが道具使うなら、こっちも使わなきゃ礼儀ってモンがないよな?」
ニヤリと笑い、桑田は白いスーツの内側からハンドガンを抜いた。
「クククッ……。さぁ、逃げ惑えよ。そっちのほうがそそられる」
〝大熱波〟術式を広げていれば、弾丸も劣化してしまう。劣化すればまともに当てられないだろう。
だから桑田はその魔法を一旦止めて、少なくとも水分不足で死ぬような状況ではなくなった。
なら、今が千載一遇の好機で危機だ。ライデンは雪女の能力を使い、足元にほんの少しの氷を展開させておく。
「逃げねぇのか? つまんねぇな」
(気づいていないな……。相手がガキだからって、舐めているんだ。もう恐怖で足が竦んでいると)
わずかに光る氷が、ライデンにとっての突破口。これをうまく活用すれば、ライデンは生き残れるし、桑田を単独で無力化できる。
そして、
パァン!! というハンドガンの銃声音が響いた。
「……あ?」
しかし、桑田に手応えはなかった。彼は怪訝な面持ちになりながら、再びトリガーを引くが、
「〝グラキエース・デコイ〟……!!」
彼が撃ったのは、ライデンの〝身代わり〟だった。一か八か、一瞬で精巧なデコイを作ったのだ。
「ここからが本番だ!! 〝グラキエース・ワールズ〟!!」
ライデンが幼女らしく愛らしい声を張り上げたとき、彼女は一瞬にして地面を凍らせた。
凍った地面に入り込み、ライデンは桑田との間合いを一瞬で狭める。
そして、
「〝ヒット〟!!」
彼女は桑田の足に触れ、彼の足を凍らせた。




