E25 修羅場へと
「クソッ!! ガキだが撃っちまえ!! じゃねぇと、こっちが氷漬けにされちまうぞ!!」
無法者たちは拳銃をライデンのほうへ構え、即座に発砲した。
当然その行動を見越していたライデンは、自らの身体を〝雪〟に変えた。音もなく、ライデンは地面に溜る雪となる。
「あァ? どこ行きやがった……!?」
ライデンが雪になったため、彼らはその褐色肌の金髪幼女を見失う。結構な弾丸を放ったので、警察が顔を真っ赤にして現れるのは必定だ。彼らは荷物と凍った味方を抱え、ワンボックスカーで立ち去ろうとする。
が、その瞬間にライデンは姿を現した。そして、雪玉を黒塗りの車へ投げる。パキパキ、と車のタイヤが凍っていく中、ライデンはインカムで理亜へ連絡した。
「よし、近くにいるピースメーカーか警察に通報してくれ」
『了解。いやー、ライナちゃん強いね。あ、警察機動隊が10分以内に着くってさ』
「分かった」
タイヤが凍ってしまったので、無法者たちは身動きが取れない。しかし、車を捨てて逃げても警察か魔術犯罪に対する逮捕権を持つピースメーカーが現れるのは確定事項だ。
しかし、発砲に武器取引ともなれば、長い懲役は免れない。ここに集った5人の無法者の運命は、今まさに潰えようとしていた。
そのとき、
「ッたく、いつまで経っても取引終わらねぇと思ってたら、なんですかぁ? このザマは」
男、の声が聴こえた。地下駐車場の入口からだ。
それと同時に、理亜がインカムで声をやや震わせながら言ってくる。
『ライナちゃん……。3分、いや5分、時間稼げる? ピースメーカーの応援を呼びたい』
「どういうこと──」
刹那、
ライデンは、身体が溶けてしまうような感覚に苛まれた。熱波だ、夏の暑さすら雪女の力で寒気に変えてしまうライデンが、今まさに魔法を使っているのに、アイスクリームのように溶けそうになった。
「オメェがやったみてぇだな。いやー、最近のガキは怖いもの知らずだねぇ。イリヤ・ファミリーと言えば、笑う子も泣いちまうくらいまで成長したと思ってたけど、おれの見当違いだったようだな」
身長140センチ中盤の幼女ライデンが(当然だが)見上げるほどの身長。推定で180センチはあるだろう。一昔前のホストのような黒の長髪に、威圧感あふれる目つき。白いスーツを着ている。
そんな危険人物は、
「ガキをぶち殺すのは趣味じゃねぇんだが、こっちの部下もやられてるんでねぇ。悪りぃけど、溶け去ってくれないか?」
手のひらをライデンに向けてきた。直感的に危険を感じ、ライデンは氷玉をその男に投げる。
「効かねぇよ」
が、あっさりと氷玉は蒸発してしまった。
「オメェはあれだろ。氷系統の魔法を操るわけだ。魔力が続く限り、雪玉だか氷玉だか分からん物体を投げて当てることで、敵を凍らせられる。それに加え、自身を雪そのものに変怪させることで、銃弾をくらわずに済む。そんなところかね。おそらく、幻獣型だな。モデルは分からんけど」
男は退屈気に、耳へ指を突っ込んだ後、小指をフッと吹いた。
「10歳くらいのガキンチョにはもったいねぇ能力だな。おれも、警察やピースメーカーと真っ向から喧嘩するつもりはない。ただまぁ、オメェ始末していかないと……後々厄介そうだ」
そう呟き、
男は、地下駐車場をサウナのごとく変怪させた。車がオーバーヒートを起こして悲鳴を張り上げ、ライデンから水分が抜けていく。
熱波の所為で壊れゆくインカムより、理亜から連絡が来る。
『ライナちゃん。ソイツは桑田樋熊で、主な魔法は〝大熱波〟術式。評定は大魔術師。ライナちゃんとの相性は尋常でないほど悪い。けど──』
水分がなくなって、喉が砂漠のように乾燥する中、インカムはついに故障した。




