E19 猪突猛進の意気込みで
(強盗犯はふたり組。まずは……〝幻獣型〟でなければできない術式を使うべきだな)
強盗犯ふたり組、男女ペアが銀行から出ていく最中、ライデンは一瞬で思考を固めた。
「〝雪女〟の力って、どこまで使えるのかな……」
小声で呟きながら、ライデンは自身の魔力を探る。すると、指先から冷気が漏れ出してくるのが分かった。
(よし、これなら……!!)
ライデンは地面に手をつき、一気に氷の道を作り出す。すると予想通り、強盗犯のふたりは滑って転倒。しかし男のほうは、すぐさま魔術で氷を溶かそうとする。
(火属性か。だけど……)
男が放った炎は、むしろ氷を強化してしまう。並大抵の火では、取得に時間のかかる=強力な〝幻獣型〟の餌食にされてしまうのだ。
「な、なんだ? この氷は!?」
「待って、あれを見て!!」
女が指差した先には、金髪褐色の少女が立っていた。
(せっかくだから、演出も付けてみるか)
ライデンは両手を広げ、周囲の温度を急激に下げていく。すると白い霧が立ち込め始め、視界が悪くなっていく。
「クソッ、〝幻術型〟の霧魔法か!?」
「違う! これは──」
女が言いかけたところで、ライデンは一気に近づく。スタンガンを男の首筋に当て、一撃で気絶させた。
「ちょっと!!」
女が魔術を展開しようとするが、すでに遅い。霧の中から現れた少女の手には、最前のスタンガン。ただ弾は切れていた。
となれば、それを投げてしまおう。それは女の顔面に命中し、ライデンの魔術によって弱っていた彼女も意識を失ってしまった。
(よし。これで──)
『試験終了』
ゴーグルを外すと、先ほどの壮年男性が微笑んでいた。
「見事だね。普通の受験生なら、魔術で派手に戦おうとするんだ。でも君は、与えられた道具を上手く使いこなした。そしてなにより──」
男性は一呼吸置き、
「〝幻獣型〟の力を完璧にコントロールできている。君は合格だよ。特待生級の天才児だ」
「特待生?」
「あぁ。〝大魔術師〟として君を迎え入れようと思ってる」
ライデンの顔が、やり遂げたことで出てきた笑みから、少し怪訝なものへと変わった。
(〝大魔術師〟っていったら、一国の軍隊とやり合えるって聞いたな……)
魔法使いには、序列というものがある。それらは5段階に分けられ、強さだけでなく人格や教養を問われるときもある。
序列は弱い順から、一般人→魔術見習い→魔術師→大魔術師→超魔術師……と続き、ライデンは2番目に高い評価を得てしまった。つい数日前、魔力不足でクビになったことが嘘みたいだ。
「10歳の〝大魔術師〟など前例もないが、歴史は常に前へ進み続けるのだよ。ライナくん」男性はライナの目を見る。「しかし、どうも君は大人っぽいというより、大人にふさわしいだけの思考能力を持っている。なにか隠し事がありそうな雰囲気だな」
ライデンは口を曲げ、
「隠し事があったとして、それを話す義務はありますか? 小生意気なことを言っているのは、重々承知ですが」
「ないな。だからひとつだけ言っておく。自分の嘘の重たさに潰されるくらいなら、いっそ暴露してしまったほうが良いぞ。それほどの才能があるのだから」
という会話をしていたら、
保護者代わりの守原が現れた。
「ライナちゃん、どうだった?」
「〝大魔術師〟に認定されました、美夢さん」
「へ?」
「詳しい話はいっしょに詰めていきましょう。私たちはまだ、スタートラインに立ったばかりです」
さぁ、リスタートだ。二周目の人生、モノにしてやろうじゃないか。どうせ失うものなんてない。甘えたければ甘えれば良い。なら、猪突猛進くらいの意気込みで行こう。
シーズン1、おしまいです。シーズン2をお楽しみに!!
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