E11 モノにしてやるよ!!
魔術を使った犯罪が当然だからこそ、必要な存在がいる。それが『ピースキーパー』及び『ピースメーカー』と呼ばれる者たちだ。
ピースキーパーは、児童労働法が成立したのと同時に設立された、〝学生〟と名がつく者たちの郎党である。子どもなど、魔術を使った犯罪の前には全くの無力では? と設立当初は訝られていた。当然だろう。高校・大学生ならともかく、小中学生に街の治安維持を任せるなんて酔狂な話、正直発足人すらうまくいかないことを織り込み済みだったはずだ。
しかし、天才児たち、いわゆる〝ギフテッド・ウイザード〟と呼ばれる大人の魔法使いにも負けない強さを誇る天才児たちが台頭していくにつれて、市民たちはピースキーパーを受け入れるようになった。
といっても、魔術犯罪の取り締まりを担うのは大人の義務だ。なので、既存の対魔術特化治安維持をピースメーカーとし、ピースキーパーの子どもたちとの連携を強めた。
現在、ライデンの姿はピースキーパー向けである。そして、守原美夢はピースメーカーでも充分闘える。もちろん守原当人の意志も絡んでくるが、そこはうまく説得しなくてはならない。
『おん。守原くんは寝ているのかね?』
「あぁ」
『なら、口説き文句でも考えたら良いだろ。おーん。ちなみにパパは、サムライとニンジャ連呼したらママと付き合えたぞ』
「知りたくもねぇ情報、どうもありがとう……」
こういう爆弾発言を平然としてしまうから、父は危なっかしい。
だけど、その道へ進めるように親が舗装してくれたのも事実だ。
「……そうだよな」
もちろん、善意や成功の道だとも限らない。
それでも、自分の進む道は自分で切り開け。
こんな場面で使われる使い古された言葉が、やけに胸に染み渡った。
「ありがとよ、パパ」
『感謝するのなら、結果で示してくれ。おーん』
電話を切り、ライデンは守原の部屋へ向かっていく。
大いびきをかきながら爆睡する守原など気にも留めず、ライデンは彼女のベッドの下に確かに置かれていた魔導書へ手を伸ばした。
(上等だ、やってやる。二度目の人生、モノにしてやるよ!!)
魔力がなければ、触れた瞬間意識が遠のく魔導書でも、今のライデンであれば大丈夫だ。表紙からページに移り、ライデンはその内容を理解していくのだった。
*
酒潰れで眠っていた守原美夢は、夕方になってようやく目を覚ました。きょうは休みなので、早速近くに置いてあった焼酎に手を伸ばそうとするが、
「え?」
金髪で褐色肌の美少女が、泡を吹きながら地面に転がっていた。まるで死んでいるかのように、彼女はピクリとも動かない。
「な、なにが……、ライナちゃん?」
口元に手を当てる。死んでいるように見えて、呼吸自体はしていた。外傷もなく、ただ死んだかのごとく、目を閉じながら眠っているだけなのか。
「この前もそうだったわよね。急に寝ちゃって。やっぱり、親御さんの件でメンタルが苦しいのかしら──」
そのとき、
金髪幼女のパジャマから、バイプ音が鳴った。スマホがズルっと落ちてくる。
「え。〝父親〟?」
普通であれば出ないほうが良いに決まっている。守原は他人の家庭に口出しできるほど、偉い人間でもない。せいぜいこの小さな少女の面倒を見ることくらいしかできないし、してはならない。
それでも、
気がついたときには、守原の耳元にスマホが当てられていた。
「もしもし、ライナちゃんのお父さんですか?」
『そうだよ、おーん』
「……は? もしかして〝テックマジカ〟の鈴木部長?」
『良く覚えているね。おん。で、娘はどうした?』
「あの、夫婦喧嘩していて、兄の家に逃げてきたとライナちゃんから聞いたんですが」
少し語気を強め、守原はそう言った。




