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お菓子が欲しい男の子

来ていただいてありがとうございます!

前半イクセル視点です



「ええー?!もうなくなっちゃったの?!」

「ごめんなさいね。お菓子はもう売り切れなのよ」



噴水のある中央広場に戻ると十歳くらいの少年がうちの店の前で隣の店の店員に噛みついていた。

「どうしたんでしょう?」

「なんだ?どうしたんだ?」

ユーリアさんと俺は騒いでいるその少年に話を聞いた。


濃い茶色の髪の少年、ミオンは豊穣祭の贈り物をうちの店に買いに来てくれたようだった。

「ここのお菓子をメイジーに、妹に買ってあげようと思ったんだけど、ちょっとお金が足りなくなって……。母さんの手伝いしておこづかいもらったんだ。やっと買いに来たんだけど……」

「売り切れだったんですね……」

ユーリアさんはしゃがんでミオンの目線で会話してる。

「うん……」

「じゃあ、私が買った分をあげましょうか?」

「え?いいの?」

「はい。テアさんにあげようと思ってたんですけど、良かったら……」

いつの間にかユーリアさんは売り上げに貢献してくれてたようだ。でもそれはせっかくユーリアさんが買ってくれたんだから。


「ちょっと待って!うちの店にまだ詰め合わせの方のは残ってるから、俺が取ってくるよ!」

「イクセル様、いいのですか?」

「うん。ユーリアさんのはテアさんに取っておいてあげて。じゃあ、ちょっと行ってくる!」

俺は焚き火に間に合うように急いでリンテ菓子店に向かった。


相変わらずユーリアさんは優しいな。あの時もそうだった。俺は走りながら思い出していた。


あれは入学式の後だった。街で泣いていた小さな女の子を抱き起して涙を拭いてあげてたっけ。あまり裕福な家の子では無かったみたいで服なんかは薄汚れていたから、誰も声をかけてなかった。ユーリアさんは涙を拭いたハンカチをその子にあげて、手をつないで歩いて行ったんだ。


「ユーリアさんは優しいんだよな……」


女の子は最初ユーリアさんの黒い服を見てちょっと怖がってたけど、ユーリアさんが微かに笑うとその子も笑い返してた。


いつもは無表情だけど笑うとすっごく可愛い。その笑顔が見たくて図書室にも通ったんだ。本を読んでるユーリアさんは時々楽しそうに笑ってることがあったから。


「図書室なんてらしくないってよくからかわれたけど」


今日は接客の極意って、滅茶苦茶笑っててちょっと心臓に悪かった。学園にいた時は誘えなかったけど、今夜は一緒に焚き火を見られそうだ。


「今日こそ絶対に……」


俺は決意を固めていた。





✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧





「メイジーはちょっと体が弱いんだ。だから今年はお祭りに来れないんだ」

「そうなのね」

噴水の縁に座りながら、ミオン君と話をしながらイクセル様を待っていた。


「お姉ちゃんは魔女なの?」

「え?」

「いつも黒い服着てたお姉ちゃんでしょ?目立ってたよ」

「ええ?!そうだったの?」

自分では目立たないようにしてたつもりだったのに、逆だったの?!私はショックで呆然としちゃった。


「えっと、私は魔女じゃなくて占い師なの」

「へえ!じゃあ何か占ってよ!」

ちょっと困った。私が一番得意なのはカードを使う占いだ。けど今日は働くために来たからもちろんカードは持って来てない。あとはえーと何かできそうなもの……。私が振り返った先には噴水。

「水鏡の占いならできるかな?おばあ様の方がこういうのは得意なんだけど」

「ねえ!お姉ちゃん早くやってみせてよ!」

「うん。この占いはあまり自信ないけど、何を占う?」

「うーんとね、じゃあ僕の将来の結婚相手!」

「ええ?!」

最近の小さい子はおませさんなのかな?思いつつとりあえずやってみた。


噴水の水に向き合って、手をかざし集中する。今日はお祭りだから噴水は止められてて静かな水面に映像が現れる。

「えーと、大きくなったミオン君の隣に三つ編みの金の髪の可愛い女の子がいるのが見えたわ。きっとこの女の子が将来の恋人なのかもしれない」

「えー?お姉ちゃんじゃないの?金髪のみつあみって……。ふーんそうなんだ……」

ミオン君は何か考え込んでる。心当たりあったのかな?ちょっと嬉しそうに見える。ふふ、なんだかかわいい。


「じゃあさ、じゃあ、妹の、メイジーの事なんだけど。元気になるかな……」

一転して沈んだ声になるミオン君。私も少し心が重くなる。意を決して占ってみた。

「笑ってる……」

「え?」

水鏡の中にミオン君と同じ濃い茶色の髪、緑の瞳の女の子が大人になったミオン君と笑い合ってるのが見えた。ミオン君に似てる女の子。この子が妹さんなんだわ。

「大きくなったミオン君と一緒に笑ってるのが見えるよ」

「ほんと?!良かった!!」


「でも、ごめんね。占いの結果を約束はできないの」

いつも占いをした後にいう事を申し訳なく思いながら言ったら、ミオン君は笑ってくれた。

「大丈夫!お姉ちゃんを信じるよ!占いを本当にできるように僕も頑張る!」

「素敵な考え方ね」

良い占いの結果を本当にするように努力する。本当に素敵な考え方だなって思った。


「じゃあ、お姉ちゃんは?お姉ちゃんは将来どうなってるの?」

「私?」

そういえば自分の事は占ったことが無いかも。小さい頃から占いといえば、明日の天気とか、花が咲く時期とか、おばあ様に言われたことを占って答え合わせをしたりとかそんな感じだったっけ。


「私の将来は……」

できたら、イクセル様と一緒がいいな。なんてあり得ないことを望んでしまったからかもしれない。水鏡に映し出されたのはイクセル様の顔。

「え?イクセル様?」

「イクセル様ってさっきのお兄ちゃん?やっぱりお兄ちゃんはお姉ちゃんの恋人なの?」

「違うわ。……待って、どうして?」

イクセル様の顔はとても苦しそうに見える。しかもその姿は今と変わらない年齢。もっと言うなら今日のイクセル様の服装と同じ……。近いうちに、ううんもしかしたら、今日、イクセル様を苦しめるような何かが起こるのかもしれない……!


「イクセル様!」

居てもたっても居られずに私は立ち上がった。




「失礼、ユーリアさんですか?」

その時、とても上等な服を着た大柄な男の人に話しかけられた。

「イクセル様の使いの者です。少々トラブルがありまして、迎えに行くよう命じられました」

「え?」


トラブルって何?


私は焦ってよく考えもせずにその人の後について行ってしまった。












ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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