【閑話】イグニッション東京予選・Aブロック(1)
ゴールデンウィーク最終日『イグニッション東京予選・Aブロック』の話です。
【愛以流断章】の先が描かれていないのは不親切だと思ったので書きました。
飛ばしていただいても問題はないですが、読んだ方がより楽しめると思います。
◇珠希◇
亜以流の…否、AIRUのアイドルとしての正念場、大舞台『イグニッション』。
彼女の友人として、この場に直接来ないなんて選択肢は最初からなかった。
かつて『くっきんぐ☆あいるん』に魅せられた私だから。
大阪で見た生のステージに心を撃ち抜かれてしまったから。
あなたが輝くその姿がいつも私の背中を押してくれているから。
それ以上に、今あなたは私の一番の友達だから。
いつも遅くまで練習していたのを知っている。
今日まで血の滲む努力と試行錯誤をしてきたのを知っている。
知っているからこそ、勝ち進んでほしい。『イグニッション』の本戦へ。
文字通り、これがAIRUのアイドル人生の点火装置になってほしいって思ってる。
ここまで来たら私には祈ることしかできない。
トラブルが何も起こりませんようにって。実力を発揮できますようにって。
それができたら、きっとあなたは本戦への切符を手にすることができる。
あなたの輝き、いつだって背中を押されてきた私が保証してあげる。
◆◆◆
アイドル1組につき1曲のパフォーマンス。MCは曲の前の自己紹介のみ。
評価基準はステージ上の姿。つまり歌とダンスと振る舞いの勝負。
小手先の仕込みを許さない、正にアイドルの本気を問う戦い。
厳しくなんかない。この先に進みたいと願うなら寧ろ当然。
ステージでアイドルが代わる代わる自らの人生を披露していく。
どれだけ披露できたか、それがどれだけ美しかったか、わかるのは最後。
ステージを捌ける時の表情は様々だ。笑顔を崩さない者。唇を咬む者。
その彼女たちの全てに客席からは惜しみない拍手喝采が贈られる。
そして遂にAIRUの出番がやって来た。
「AIRUです!よろしくお願いします!」
何の変哲もない挨拶だけど、実はこれ1つ取っても練習している。
どうやったら最初の掴みで良い印象を客や審査員に与えられるか。
勿論、そんな計算はステージに立つ全員がしているでしょうけど。
「A・I・R・U !! A I R U !! I Love You !!
A・I・R・U !! A I R U !! I Love You !! 」
流れ出すイントロ。気付けば振り上げてたピンクのペンライト。
緊張感と、それ以上の興奮で上がっていく鼓動。体内からせり上がる熱気。
客席の隅で固まっていたピンクの法被の親衛隊が声を張り上げてコールする。
彼らの応援は波紋のように周囲に伝播していく。客席全てが1つの塊になる。
「A・I・R・U !! A I R U !! I Love You !!
A・I・R・U !! A I R U !! I Love You !! 」
毎日浴びるほど聞いたあの曲。気付けば口ずさんでしまうあの曲。
それがステージの彼女たった1人を中心に溢れ出してる幻想的な光景。
脳裏を流れるリリックが今、ステージ上のAIRUのパフォーマンスに同期する。
まるでAIRUのステージに取り込まれて一体化しているみたい。
これでは最早ただ見る側と見られる側の関係ではない。
同じ空間で同じ熱の中で同じ輝きに触れている奇跡。
たった1曲だけのステージでAIRUはあっという間に見る人の心を掴んだ。
これを待っていたハズなのに現実になっている現状がどこか信じられない。
AIRUがパフォーマンスを終えるその瞬間まで、ずっと夢の中にいたようだった。
彼女が笑顔のままステージを捌けた時、言いようのない高揚に包まれた。
きっとこれは達成感。私が達成感を感じているの。
AIRUのステージを一緒に作り上げたことに。
心地の良い疲労感。紛れもなくAIRUと1つになっていたという実感。
これまでにステージに上がっていた誰にも感じなかったこの感覚。
もしかしたら驚いている人もいるかもしれない。
これが私の友達よ。
きっと今のステージのインパクトがそのまま本戦出場までかっさらうんだから。
いつもよりだいぶ短いですが補足的な話なので勘弁してください。




