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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅱ】
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【亜以流断章】Road to AIRU

◇◇◇


玄楼島(げんろうじま)亜以流(あいる)

母親は元アイドル海耳(うみじ)モモエ。父親はタレントにして実業家の玄楼島憲治(けんじ)

そんな家に生まれた亜以流が幼くして芸能界に入るのは必然だったかも知れない。


上手くいっている内は世の中の全てが彼女に優しかった。

努力をした分だけ伸びる人気は視聴率やファンレターの数に表れた。

番組スタッフや共演仲間だって誰もが亜以流の頼もしい味方だった。


人気絶頂期に亜以流のかつての代名詞『くっきんぐ☆あいるん』が始まったことも彼女自身の大きな追い風となった。

同世代やちびっ子たちから獲得した今までとは桁違いの注目と尊敬の念。

それは彼女のモチベーションに貢献し、彼女の役者街道にも花を咲かせた。


しかし、幸福は長くは続かなかった。


冠番組『くっきんぐ☆あいるん』、放送打ち切り。

演出の迷走で視聴率の低下を重ねていたところに番組で亜以流の助手を務めていた俳優の不祥事がゴシップで暴かれたことがトドメだった。


亜以流の成長に伴い子役としての出演が減っていたタイミングでこれは大きな痛手だった。

自らの非はないにもかかわらず突如として亜以流は地に落とされた。


『くっきんぐ☆あいるん』打ち切りで彼女は多くの物を失った。

目に見えてファンレターの数が減った。イベントに来てくれるファンが減った。

遂には仕事も全盛期の10分の1を下回った。番組終了から僅か半年で、だ。

スタッフの目が、共演者の目が、彼女を取り巻く全てが冷たくなった。


それでも亜以流は諦めなかった。


亜以流は中学入学と同時に母の伝手を頼って音楽の道を志した。

アイドルという存在に憧れがあった。女の子なら誰もが一度は夢見る輝きだ。

実際に最先端のアイドルを現場で見たこともある。だからこそ余計に。

幸い実の母親は元アイドル。手本も参考資料も山のようにあった。

少なくとも夢が夢物語に終わらないだけの環境は整えられていた。


中学2年の夏、初めてのライブ。


親の知名度などで客を呼びたくはない。

かつての名声『くっきんぐ☆あいるん』に頼るのも違う。

それ故のAIRU(アイル)としての再スタート。門出は小さなライブハウス。

インディーズではそこそこ名の知れたロックバンドの前座としての出番。


まばらな客。その全員が最初はステージ上で歌うAIRUを見向きもしなかった。

そんなことはAIRU自身も覚悟の上だった。実績がないのだから仕方ない。


見え透いていた結果。だが悔しいものは悔しかった。

そんなライブを何回も繰り返した。何十回も繰り返した。


中学2年の冬、初めての音源リリース。


仲良くなったガールズバンドの勧めもあって音源のリリースに踏み切る。

約4ヶ月の活動は細々とではあるが実り始め、この時には数人のファンがいた。

音源のリリースの理由は彼らの声によるところも多分にあった。

AIRUは寧ろ普段熱心に通う彼らへの恩返しとさえ思っていた。


この音源リリースこそAIRUのアイドル人生を花開かせる最初のキッカケであった。


AIRUは音源リリースの際CD制作だけでなくデジタル音源の配信も行った。

元はCD制作に助力してくれた母親の知り合いによるアドバイスだった。

未来のファンの為、というそれらしい文句では納得するしかなかった。

AIRU自身はデジタル配信を承諾すれども、期待はしていなかった。


故に1週間後、その報せを聞いたAIRUの目は驚愕と困惑に見開かれた。

それはデジタル配信の販売数の報せである。


期待していなかったこともそうだが、デジタル配信については担当スタッフに一任していたこともありAIRUはエゴサーチを用いて反響を調べようなどという気は一切起らなかった。

故にそのスタッフと顔を合わせたタイミングで初めてそれを知った。


それはインディーズのアイドルで歴代20位という輝かしい記録である。

決して歴史的な快挙という訳ではないが、それでも十分に素晴らしい結果だ。


そしてこれ以降、AIRUの快進撃はまだ続いていくこととなる。


この成果を受けてAIRUの存在を知った者も少なくなかった。

その中にはイベントのオーガナイザーも含まれていた。

結果、AIRUにはアイドルとしての仕事が舞い込んだ。


北は北海道から南は沖縄まで。アイドルの為なら休日なぞ返上で上等。

人が仕事を呼び、その仕事が人を呼ぶ。素晴らしい好循環だ。


時にはかつての子役時代の共演者と再会することもあった。

地方では有名なローカルアイドルとも多く共演した。

全ての現場の声援と経験を吸収し、AIRUは強くなる。


高校は父親の伝手で金閣(きんかく)学園に入学。

アイドルとしての活動を優先させても良いという特段の確約付き。

それがある以上、少なくともアイドルとしてやっていく上では最良の環境だ。


そしてそんなAIRUに追い風のように1件の仕事が舞い込んだ。

全てのインディーズ・アイドルが夢見る最上の舞台、『イグニッション』である。


AIRUの今の夢、それはアイドル。

大きなステージで歌い、踊り、輝き、人々に夢と希望を与える存在。

そしてその為に、AIRUは現状に満足する訳にはいかなかった。


『イグニッション』は最高の舞台だ。

かの【81Club(エイティワンクラブ)】も最初のきっかけは3年前の『イグニッション』の優勝。

一昨年の優勝者も去年の優勝者も今やフェスや音楽番組では引っ張りだこの存在。


出場が叶うこと自体が勿論大きな名誉だが、出場するからには狙うのは優勝。

AIRUは真の意味でアイドルになるべく、『イグニッション』出場を決めた。

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