【71・5話】麗寧が隠す秘密
◇◇◇
「潤鷲さん、ちょっと良いかな。」
「あらこれは凪乃さん。如何されまして?」
放課後に背後から呼び止められ、麗寧はその足を止めて振り向いた。
相手は夢原七姉妹が五女、凪乃である。
凪乃はいつも夢原七姉妹か御霊石雫と一緒にいる。
それ以外では基本的に口数が少なく大人しい。
それこそ凪乃が自発的に麗寧に話しかけたのは入学式のその日以来である。
故に麗寧はこの状況を珍しいと感じると同時に何かがあると察した。
そしてその内心のざわめきは実際に的中しているのである。
「お昼休み、豪徳寺君のこと何か私たちに隠したでしょ。」
この場合において沈黙は悪手。そんなことは麗寧もわかっていた。
しかし押し黙るのはその凪乃の勘の鋭さに驚くばかりが故。
凪乃の推測は図星である。
麗寧の反応に凪乃の表情はより険しくなる。
「…私が一から十まであなた方に話す理由がありまして?」
言ってから麗寧は少し下唇を噛んだ。冷たい言い方だと思ったからだ。
「これだけはお約束いたしますわ。私はあなた方に対して何か謀があって隠し事をしているのではありません。寧ろその仲を案じるが故の事。話す必要のないことは話さない。…たったそれだけの事でございましてよ。」
麗寧の言葉を凪乃は目を閉じ、飲み込んだ。
「…わかった。信じる。」
「助かりますわ。」
「急にごめんね。じゃあ、私はこれで。」
「凪乃さん、私からも一言良いかしら?」
去ろうとする凪乃を今度は麗寧が呼び止める。
「…どうかあなた方だけは、最後まで彼の味方でいてあげてくださいませ。」
麗寧のその言葉が何か意図を含んでいるのを凪乃は理解した。
その含まれた意図に恐らく麗寧の隠した秘密が関連していることも。
しかしそれはそれとして、凪乃が返すべき答えに何ら変わりはなかった。
「そんなの、当然だよ。」
そう笑って答え、凪乃はその場を後にした。
その背中が小さくなり見えなくなるのを麗寧はそこから見送った。




