【71話】ゴールデンウィーク明けの七つ子
PCで見てる人は【設定資料】1年A組 クラス名簿 も同時に開いた方が良いかも。
◇愛依◇
ゴールデンウィーク明けはクラスメイトとの会話が弾んで楽しい。
自分がどこにも行っていないなら尚更。
いや、仕方ないじゃん!
若葉のことでドタバタしてたし豪徳寺君のお見舞いもあったんだし!
悲しくなんかない!悲しくなんかないんだもん!本当だもん!
畳ヶ原さんは北海道に。飛籐さんはスポーツ観戦に。
瓶底眼鏡は日本全国ダーツの旅に。いやおかしいおかしいおかしい。
最近仲が良い潤鷲さんはヨーロッパで美術館巡りしたんだって。
いやゴールデンウィークで海外って思い切るねえ……。
豪徳寺君は入院が延長してなければ今頃ここにいたのかなあ。
尤も、理由が理由だから彼には感謝しかないんだけど。
それこそ茂布川辺りと話が弾んでたのかな。
他に彼が話す相手と言えば……私たち ?
いや、他に同性の友達がいるハズ。
何故か全くイメージできないけど。
◆◆◆
ちょっと気になったのでお昼の時間に皆に聞いてみた。
「ねえ、豪徳寺君が茂布川の次に仲の良い男子って誰だと思う?」
「……いざ言われてみるとイメージ浮かばないわね。見たことないかも。」
果音は私の次に豪徳寺君と席が近いけど、そんな果音でもわからないっぽい。
「茂布川以外で彼が一緒によくいる相手って、もしかしなくても私たちかしら?」
咲花の予想は当たってるかも。私たちの誰かと一緒にいる姿は思い浮かぶ。
それこそ豪徳寺君と仲が良いと言いきれないのは珠希になってくるんだろうけど、それも他の男子と一緒にいることと比較すれば簡単にイメージできてしまう。
珠希に聞こうと思ったけど、珠希は私たちと一緒にご飯食べないんだよね。
いつも玄楼島さんと熱心に話し合いながら食べてる。
「凪乃は誰か心当たりある?」
凪乃だったら流石に1人や2人は出て来るんじゃないかな。
いつ聞いて回ってるのか知らないけど。クラスメイトについて詳しいんだよね。
人間関係どころか好みとか近況まで把握してる。どういうアンテナしてるんだか。
でもそんな凪乃も私の質問には何やら考え始めてしまった。
「パッと思い当たる人はいないね。中学も一緒だった人、多いハズだけど。」
「それについては私からお答え差し上げますわ。」
口を真っ白なハンカチで拭きながら会話に入って来たのは潤鷲さん。
その手元にはティーカップで湯気を立てる紅茶。その傍らにはポットもある。
……学校にティーセット持ち込む人、後にも先にもこの人しか知り合わなさそう。
「とっつきにくい、ということだと思いますの。それこそかの【豪徳寺】の知名度は言わずもがな。その創業家の一人息子ともなればおよそどんな権力を持っているか到底わかりかねるというのも当然。更に悪いことには彼自身が友人作りに積極的ではないのですわ。ケガで入院することが多く、学校で人間関係を築けないということもあるとは思っていますけれど……。」
「豪徳寺ってそんな入院してるんだ?」
誰もが思った疑問を口に出したのは春佳だった。
「まあ、彼も態々そんなもの話はしませんわね……。中学の時はそれこそ一番最初、入学式からいませんでしたわ。そのまま1学期を丸々お休みになっていましたの。夏休み明けから松葉杖で登校して、結局2学期はずっとそんな状態だったかしら。2年生の時も3年生の時もそんなことがままあって、結局彼は体育祭や修学旅行への参加もなかったと記憶しておりますわ。」
「それは人間関係なんか作りようがないわね……。」
私を含めた姉妹が絶句する中で果音の呟きは残酷だった。
「そうやって言う割に潤鷲さん自身は彼との仲、そんなに悪くないよね?」
今度の質問は真子から。確かに一緒にいて話しているのを何度か見たことはある。
「私は彼とは社交界で既に知り合っていましたの。同世代など片手の指ですら余りますから、必然的に話し相手になるのですわ。」
あ、そっか。豪徳寺君も潤鷲さんも大企業の御曹司なんだよね。
潤鷲さんは【潤鷲財閥】で【豪徳寺ホールディングス】に次ぐ規模の大企業。
そう聞くと改めてこのクラスってVIPが集まってるんだって感じる。
「入院が多くて学校のイベントも参加できなくて……って聞くと、何だかあの性格も納得かも。」
「性格って豪徳寺君の?」
咲花の何気ない一言が気になった。
「彼って私たちや蘭のことは凄く親身になってくれたりするけど、逆に自分のことは全然どうでも良さそうじゃない?諦観してるというか、無頓着というか。でも彼が今まで色々と苦い経験をしてきた上でそこに至ったと考えるなら、何だか納得できちゃうなって。」
「何だか聞いてて悲しくなるわね。」
咲花の言葉に果音が寂し気に感想を述べた。
「それ以前に生まれで怖がられてるってのが納得いかないよなー。」
春佳はそう言って如何にも不服だと言わんばかりの顔をする。
「尤も、当人はそれも割り切ってるんだろうけど。」
溜息交じりに続ける真子の言葉がやはり物悲しい。
「きっとそんなことを気にしないで関わってくれるあなた方の存在は豪徳寺君からしてみれば大いにありがたい存在だと思いますわ。故に彼もあなた方のことを大切に思ってくれるし行動もしてくれるのでしょう。これは幼少期より彼を知る者としてのお願いですが、どうかこれからも彼と仲良くしてあげてくださいまし。」
潤鷲さんはそう言って深々と頭を下げた。
「ちょっとちょっと!頭上げてよ!そんなのお願いされるまでもないって!」
私の言葉に果音が続く。
「友達だもの。当たり前じゃない。」
「友達っていうか、それ以上に大恩人になっちゃったしね。」
咲花の言う通りだ。果音の件だってまだ恩返しができてないのに。
加えてこの間の凪乃の件で、彼は私たちに取ってかけがえのない恩人になった。
どうやって恩返しすれば良いのか。それにどれくらい時間がかかるのか。
わからないけれど彼の青春に私たちが少しでも何か輝きを与えられるなら。
それと願わくばその先も、ずっと友達でいたいと思う。
誰にも言わないけど、本当は私はその先にだって……。
9月22日
書き直し損ねていた部分があったので修正しました。




