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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅰ】
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【64話】暖かい光

若葉(わかば)


「一人より二人いた方が何とかなりそうな気、しない?」

そう言って私に微笑みかける(らん)ちゃん。表情が眩しい。


私に優しく微笑みかけてくれたあの時から、あなたはいつもそう。

その暖かさが凍てついた私をやわらかく包み込んでくれる。


私の問題は私だけじゃどうにもならない。

きっと蘭ちゃんが一緒に考えてくれたところで変わらない。

でももし彼女の言う通り、この出会いが奇跡だったなら…。

蘭ちゃんが王子様に出会えたことと同じだったなら…。


「ねえ、蘭ちゃん…。私の話、聞いてくれる…?」

治療費の問題がどうにかなる訳じゃない。生活がどうにかなる訳じゃない。

わかっているけれど、縋りつきたい。蘭ちゃんが手を出してくれているのなら。


「うん、勿論。」


◆◆◆


私は蘭ちゃんに全てを打ち明けた。勿論、解決なんてできない。

ただ私の心は軽くなった。錘が全部どこかにいってしまったみたいに。

紫墨(むらすみ)さんの言葉がようやくわかってきた気がする。私は考えなきゃいけない。

どうにもならないのはわかっているけれど、考えなければ絶対に前には進めない。


蘭ちゃんは難しい表情を浮かべる。

「ごめんね。こんな話されても困るよね…。」

もしかしたら…ううん、絶対に負担になってしまった。

「聞いてくれただけでも、私はありがたかったから…。」


何も変わらないかもしれないけど。息苦しいままかもしれないけど。

それでも前に進まなきゃ何も始まらない。私はずっと逃げてたんだ。

私は生きてる。状況は良くなってる。それだけは事実。

蘭ちゃんの優しさに私は報いたい。


私は、生きたい。


「若葉、ちょっと離れるね。豪徳寺(ごうとくじ)君と相談してくるから。」

蘭ちゃんはそう言い残して隣のベッドに行き相談を始めた。

相談をしてどうにかなる問題じゃないよね…?


蘭ちゃん、彼のことが本当に大事で、大好きなんだろうなあ。

あの部屋で外で誰かが名前を叫んだ時、青ざめて取り乱していたっけ。

でもそれも蘭ちゃんの話を聞けば全部納得できた。

きっと彼も蘭ちゃんみたいに暖かい人なのかな。


蘭ちゃんはすぐ私の所に戻ってきた。時間は5分も経ってない。

「治療費、全部豪徳寺君が立て替えてくれるって。」

「…え?」


どういうこと?どうして何も知らない彼がそんなことをしてくれるの?

「だってここのお金はすぐにでも必要でしょう?」

それはそうかもしれないけど…。


「でも私、返せないよ…?」

「それも落ち着いてからゆっくり考えれば良いんじゃないかな?…だよね?」

蘭ちゃんが視線を向けるのは隣の彼。私はさっき感謝を言ったくらいだけど。

彼は蘭ちゃんの言葉に頷いて肯定の意思を示す。


「別に返すことなんかどうでもいいから、それは受け取っとけ。必要だろ?」

そうは言うけど高校生の懐から簡単にポンと出るような金額ではないハズだ。

ましてや彼は私以上の大ケガをしていて、自分の治療費のことだってあるのに。


「まあ、そんなこと言ってるくらいだからそれは追々…ね?」

いやいやいやいや、流石に金額が金額。返すことがどうでもいいって何?

そもそもどうしてそんな大金を簡単に赤の他人に貸せる判断ができるの?


「本当に…良いの?そんなお金…。」

「金はこういう時に使ってこそだろ。俺からしたらその程度は負担でも何でもないんだ。油田の運営も右肩上がりみたいだしな。俺はこれ(●●)しか取り柄がないからさ。親切心だと思って受け取ってくれ。」

豪徳寺君はそう言って左手でお金のハンドサインを作る。

彼、お金持ちなんだ…。油田とか言ってたし。


「油田って何…?初耳なんだけど…?」

蘭ちゃんも驚いてる。多分、一般的に高校生は持たないものだよね…?

「実は俺も詳しくは知らなくてな。高校の入学祝に叔父さんから権利を貰っただけで実務は任せっぱなしなんだ。」

そう言って豪徳寺君は笑う。多分、おかしいこと言ってるよね?

高校の入学祝で油田の権利って貰わないよね…?


「まあ、彼はあの調子だから、別に彼の負担とかは気にしなくても平気。」

彼には駄菓子を買う程度の感覚でここの治療費がポンと出るみたい。

自分の治療費だって、お金は微塵も心配してないんだろうな。

「そういうことなら…。お借りします…。」


「そっちは解決として。次に家の事なんだけど…。」

「そ…そこまで面倒を見てもらう訳には…!」

当たり前のように蘭ちゃんが話し出したので流石に口を出した。

その勢いが怖い。なんでそんなスムーズに話が進んでるの?

最近ちょっと縁があっただけの他人の家庭事情なのに。


「あの時の蘭みたいだなぁ。そっくりだ。」

そう言って豪徳寺君が私を見て笑う。

「そう?私、こんなだった?」


「ともかく…。家の方もさ、後で相談できる人たちが来てくれるから、皆が来たら1回話してみようか。」

そう言って蘭ちゃんは私に微笑んでくれる。


もしかしたら私はものすごく出会いに恵まれたのかもしれない。

次回は2話同時更新です。

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