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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅰ】
33/179

【28・5話】蘭のいる日常

弥彦(やひこ)


「あ、お帰り。晩御飯、6時で良い?」

「うおっ!……悪い。まだ慣れなくて。」

「ふふ、別に良いよ。」


家に帰り玄関を開けると(らん)がキッチンに立って晩御飯の下拵えをしている。

この光景そのものは日曜日から数えて連続6日目だが、まだ慣れない。

どこからか調達したらしいピンクのエプロンは似合っていると思う。


別に俺が家事を頼んだ訳ではない。本人曰く恩返しらしい。

無下にするのも悪いのでお願いしてしまっている。

楽しそうにやってくれているのは何よりだ。


掃除、洗濯、食事の支度、更には風呂を沸かすまで、一通りこなしてくれる。

どうやら昔からやっていたようで、確かにそれを裏付けするように手際が良い。


しかし二軒分、しかも七つ子もいるとなればその量は半端ではない訳で。

精力的にやってくれることはありがたいが、くれぐれも無理しないでほしい。


「別に好きな時に休んで良いんだぞ?まだこっちの環境には慣れてないだろ?」

「そんなことないよ。七つ子(みんな)もよくしてくれてるし。それに……。」

視線の先には珍しく今週1つも減っていないカップ麺の山。

「正直、こんな食事してる人ほっとけないって。」

「はは、それを言われたら立つ瀬がないなあ。」


「笑い事じゃないんだけど。」

カップ麺の山から俺に方向転換した蘭の視線が突き刺さって痛い。


「やってくれるのはありがたいんだけどさ、無理して倒れたりしないでくれよ?」

「そういう言葉だけでも嬉しいよ。ありがとう。あ、自分の部屋に行く前にお弁当出していってね。洗っちゃうから。今日の、どうだった?」

鞄の中から弁当の入った包を取り出し手渡す。


「ああ、美味かったぜ。珠希(たまき)春佳(はるか)に半分くらい取られたけどな。」

蘭はクスッと笑う。実際彼女の弁当は本当に美味しい。

茂布川(もぶかわ)は泣いて羨ましがってたな。やらんけど。


「そういや明日は土曜日だから弁当がないのか、そう考えると寂しい気もするな。」

思ったことを素直に口に出すと蘭は眩しい笑顔で答える。

「そんなに気に入ってくれたんだ。嬉しい。明日は色んなおかず買ってきてあげるからさ、楽しみにしててよ。」


そう言われちゃ期待せずにはいられないな。今日の晩飯も楽しみだ。

この話で7+1編(蘭加入編)は終了です。

ゴールデンウィーク期間(4/27~5/11)は毎日更新します。

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