表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅰ】
19/179

【15話】弥彦と蘭はぎこちない

弥彦(やひこ)


家で一人留守番していたらしい珠希(たまき)は目を丸くしていた。

まさかクラスメイト3人に加え見知らぬ女子1人まで追加でついてくるなんて想像できる訳がないのだから、その反応は自然だと言っていいだろう。

ちなみにその(らん)は俺に背負われたままふてくされていた。


豪徳寺(ごうとくじ)君、プレイボーイなのは知ってたけど出かけた先で引っ掛けてお持ち帰りなんて大胆なことするのねえ。」

そして俺は帰宅早々に珠希からとんでもない誤解を受けている訳だが。

というかプレイボーイって何だ。俺がいつ何をやったというんだ。


「へぇ……。まあお家が大きいからお金で愛だって買えてしまえるんやろなあ……。」

「わー。まあ想像してたけど、やっぱ節操ないんだなー。」

畳ヶ原(たたみがはら)飛籐(とびとう)も待ってくれよ。俺を白い目で見ないでくれ。

「別に吾輩は構わないでありますぞ。」

何が構わないんだ御霊石(みたまいし)。誤解を増長させないでくれ。


「……そうなの?」

そうなの?じゃないだろ愛依(あい)。お前は一部始終ずっと一緒にいたじゃないか。

「ごめん、なんかヤダ。」

蘭も参戦?俺はどうして今四方八方から疑惑を持たれてるんだ?

おかしいよな?これっておかしいよな?


「ほらほら、皆して寄ってたかって虐めないの。この人数となれば夕飯用意するの大変なんだから愛依も珠希も手伝って。さっさと支度始めないと、時間はどんどん押しちゃうわよ。」

混沌とした場を見かねて諫めてくれたのは果音(かのん)である。こういう時、しっかり者はありがたい。


◆◆◆


豪勢な食事の支度が果音の主導の元、迅速に進められる。

俺は普段カップ麺ばかりとはいえ、全く自炊ができない訳ではない。

故に手伝いを申し出たが、お客さんなんだからと一蹴されてしまった。


そんな訳で俺はお客さんサイドで何もせず座っている訳だが、居心地が良くない。


飛籐は春佳(はるか)と2人で盛り上がっている。スポーツの話題だ。

元々かなりウマが合うようで、俺が間に入って水を差すのは気が引ける。


畳ヶ原はキッチンで果音たちの手伝いをしているようだ。

親戚にかなり有名な料亭の主人がいるらしく、和食に詳しいらしい。

見たまんまそれっぽいと言えばそうなのだが。


凪乃(なぎの)真子(まこ)はそれぞれ自分の部屋に入ってしまった。

御霊石は真子についていったが俺が一緒についていくのもおかしな話だ。

この場でただ一人の男という事実が俺に行き場を失くさせる。


結果、俺と蘭は気まずい雰囲気で取り残されてしまっていた。


「その……無理矢理ここに連れてきちまって悪かったな。」

何とか会話を生み出そうとして口から出たのは謝罪だった。

だがこれは謝っておきたかったことではある。


「別に、もう気にしてないけど……。」


以上。蘭の返答の全て。

気にしていないなら良かったと安堵しているとすぐに沈黙が押し寄せる。

次の手立てを頭の中で探るも、良い話題は思い当たらない。


「ねえ、豪徳寺って……あの【豪徳寺】?」


次いで沈黙を破ったのは蘭だった。彼女の俺と同じことを思っているのだろうか。

俺は自分や親戚以外の豪徳寺という苗字を知らないが、その質問の意味はわかる。


「そうだな。多分、その【豪徳寺】だよ。」


俺の答えに彼女の眉がピクリと動いた。

その質問の裏に隠れている真意はわからない。


「あんたの家、ここから近いの?」


蘭からまたも真意のわからない質問。

俺は立場もあって、本来なら迂闊に個人情報なんて口走るべきではない。

事が起こった時、他人とは比べ物にならないレベルで被害が大きくなるからだ。


だがここで答えないのは、却って不信感を招く気がする。

そもそも俺と彼女が出会ったのは偶然だ。

蘭が俺に妙な悪意を抱く暇はなかったハズ。

だからこそ俺は彼女の質問に正直に答えた。


「近いどころか、隣の2階建てがそうだよ。」

「ふーん。」


瞬時に葛藤した末に出した答えに対して蘭の反応は淡泊だった。

まあ俺としては変に食いつかれる方が不安になるのだが。


「愛依って彼女?」


何か思うところあったのか、答えるそばから質問を投げ始めた。

いや別に、俺としては気まずくないならそれに越したことはないのだが。


「いいや。出会ってまだ1週間も経ってないしな。」


俺は蘭の質問にまたも正直に答える。

蘭にはさっき俺と愛依がそう見えたのだろうか。

確かによく関わっているが、愛依に限らず果音や咲花ともそうだ。

そしてその理由は『隣人だから』という一言に尽きる。


またも質問が飛んでくるかと思ったが、そんなことはなかった。

いくらか会話したおかげで雰囲気から刺々しさが失われたような気がする。

じゃあ今度は俺から質問してみようか。


「蘭はここから家、近いのか?」


俺の質問に蘭は陰る表情を浮かべ、窮した。

まさか自分が聞かれるとは予想だにしていなかったのか?

自分で聞いたのだから答えてくれても良いとは思うが。

いや、人には人の事情があるか。


「歩いて帰れる距離。」


まあ、『ビッグモール』に徒歩で来てるんだからそれはそうだろう。

蘭はどうやら自分のことを聞かれるのは得意ではなさそうだ。

じゃあ、今ので最後にしておくか。

次回投稿は3月15日(金)です。

今月は20日(水・祝)にも投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ