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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅰ】
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【12話】愛依を探せ 本館の巻

弥彦(やひこ)


金閣(きんかく)町が誇る『ビッグモール』は縦にも横にも広い。

本館を探す、と言ってみたものの地下1階から6階まで探していてはキリがない。

つまり、愛依(あい)の行きそうなところに目星をつけて探す必要がある。

もしも捜索に時間がかかりそうなら生鮮食品を持っている咲花(さきか)に先に帰ってもらうことも考えなければならない。

早いところ俺か別館の果音(かのん)の目の前に現れてくれれば良いのだが。


さて、まずはどこを探してみるべきだろうか。

愛依は集合場所について咲花から説明を聞いて頷いていたのは俺も見ていた。

だから一度はベンチに向かったか、もしくは今もその真っ最中のハズだ。

あるいはスポーツショップにそもそも辿り着いていない可能性もあるだろう。

だがどちらにしても渡り廊下のある本館2階は一度探してみる価値がありそうだ。


2階は子供向け用品が文房具からオモチャに至るまで数多く置いてある。

端にはちょっとしたゲームコーナーもあり休日は子供連れで賑わっている。

別館地下のオモチャ屋がマニアック向けな品揃えなのに対してこっちは子供向けのラインナップを強くしているからかそれなりに棲み分けできているようだ。


「ここにはいない、か。」

一通り回って結論をポツリと呟いた。

愛依、ひいては夢原(ゆめはら)姉妹は女子にしては身長がある方だ。

それより身長のある飛籐(とびとう)御霊石(みたまいし)がどちらかといえば例外な方であろう。

平日昼間という客足の少ない時間に彼女がこのフロアにいたら俺が見つけられない訳がない。


最後にゲームコーナーをもう1度確認するが、愛依どころか他の人の姿もない。

様々なゲームがピロピロガチャガチャと軽快な音楽を鳴らしているだけだ。

そんな時、ふとゲームコーナーの一角の休憩スペースが目に入った。

休憩スペースと言っても背もたれのないベンチソファがポツンと置かれているだけに過ぎないものだ。


だがそのベンチソファはメッセージを俺に伝えるようだった。

瞬時に俺の脳裏にはある1つの可能性が過ったのである。

それは愛依が集合場所について『ベンチ』としか聞いてなかった可能性だ。

咲花の話の最中も地図アプリと格闘していた。それも咲花のスマホで。

愛依のことだからそういうことがないとは言い切れないだろう。


他に何かアテがある訳でもない。だからこの可能性には試す価値がある。

つまり俺が今やるべきはそれらしいベンチを片っ端から巡ってみることだ。

場所は絞れる。ベンチが置いてある場所とは言っても、少なくとも今俺がいる2階と咲花が待つ場所に近い1階のフードコートは除外できる。


そうと決まれば頭の中でベンチがある場所を思い出す。

この『ビッグモール』の中に背もたれなしのベンチソファは無数にある。

だがそれらの中に待ち合わせ場所に適しているものはかなり少ないと思う。

愛依が話半分しか聞いていなかったとしてもそういう場所は避けるだろう。

ある程度は待ち合わせ場所に適していそうな箇所を選んでいるだろう。


4階のフロアの端には休憩スペースがありウォーターサーバーが常備されている。

テレビがある他、広いので地域の住民が井戸端会議に花を咲かせていたりする。

6階の本屋の中の休憩スペースのベンチソファは漫画の試し読みが無数にある。

実際金閣学園の生徒も放課後はよくあそこで時間をつぶしている奴がいる。

俺が思い浮かんだのはその2か所だけだが、ダメ元でも向かってみよう。


◇愛依◇


今並んで歩いている女の子、梅堂(うめどう)(らん)さんは私を案内してくれるらしい。

なんでそうなったのかはよくわからないけど親切な人なんだなあ。

私一人だといつの間にか変なところに出ちゃったりするから助かる。

実際さっきもテーピング買うまでにかなり時間かかっちゃったしね。


そんな蘭は本館と別館を繋いでいる通路を歩いている最中、突然にふらついた。

咄嗟に彼女の身体を支えた時、その表情から体調が良くなさそうなことを察する。

「ああ、悪いね。ありがとう。」

「顔、青いけど大丈夫?」


「最近ちょっと立ち眩みが酷くて。まあ、大丈夫だよ。」

蘭はそう言ってよろめいた体を起こして歩き出す。

でもその足取りは重く見える。


やっぱりさっきのパン1個なんかじゃ足りないんじゃないかな……。

「どこかで一休みした方が良いよ。別に私は遅れても大丈夫だから、一回お水飲みに行こう?」

確かさっきウォーターサーバーのある休憩所を通りがかった気がする。

上の階だったかも知れないけどエスカレーターがあるから平気だと思う。


「ああ、悪い。助かるよ。ごめんね、妹さん探してる最中に。」


◆◆◆


4階の端の休憩所で水を飲んで一息。

「やっぱりあのパンだけじゃ足りないんじゃないの?」

思い切って口に出して聞いてみた。余計なお世話なのはわかってる。

「いや、マジで大丈夫だっt……」


『ぐうううううう』


彼女の言葉は彼女自身のお腹の音にかき消された。

「……いや、マジで大丈夫だから。」

彼女は言い直したけど、もうその言葉に説得力はない。

言葉とお腹の音、どちらが正直かなんて聞くまでもない。


彼女が腰を上げ、私も立ち上がる。

ここにいた時間は5分くらいだっただろうか。

それでも正しい待ち合わせ場所で果音か咲花か、或いは豪徳寺(ごうとくじ)君が待っているかも知れない。

そう考えると待たせてる時間もそろそろ洒落になっていない。


歩いていたその時、突然にあたりが暗くなった。


◇◇◇


停電発生

弥彦:???

愛依:本館4階 休憩所付近

果音:別館 地下1階

咲花:本館外 入り口横ベンチ

次回投稿は3月1日(金)です。2話同時投稿です。

愛依捜索編は次回投稿の2話で終了です。

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