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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅰ】
15/179

【11話】愛依を探せ 別館の巻

果音(かのん)


1階、2階、3階……どこも広くはないけど、愛依(あい)の姿はどこにもない。

待ち合わせ場所が本館なのだから本館の方に行ったと考えるのが自然なのかな。

でもあの愛依のことだから、どこで見つかったって全く不思議なんかじゃない。

それこそ、建物の外に出てないことを祈るばかり。多分大丈夫だと思うけど。


「全く、一体どこを彷徨ってるのかしら。」

思わず口から零れる。我が姉ながらこればかりはいつも手を焼く。

しかも今回はよりによってスマホがないと来た。全く面倒くさい。

早く帰って7人分の夕飯の支度をしなきゃいけないのに。


「あ、ここ地下もあるんだ。」

本館にあるんだから別館にあったって何もおかしくはないか。

ということは探す場所がもう一か所増えたということになるんだけど。

別館は専門店が多く、地下には漫画やオモチャの専門店があるらしい。

まさかそんなところに愛依がいるとも思えないけど、一応は探しておくか。


◆◆◆


「……で、あなたたちはここで何してるの?」


エレベーターを降りた先で鉢合わせたのは凪乃(なぎの)真子(まこ)(しずく)

更にこの場に似つかわしくないクラスメイト、畳ヶ原(たたみがはら)さんを入れて4人。

前者3人はアニメ専門店の紙袋を両手に下げていた。

休日を機に揃って買い物に来たことは想像に難くない。

凪乃と真子と波長が合う雫はやっぱり中々に変人なのだと思うけど。


そしてこの3人と一緒にいる畳ヶ原さんがとても浮いて見える。

というか実際この場でただ一人和装の彼女は浮いている。

周囲の通行人が絶えずチラチラ見ている。

本人は大して気にしていなさそうだけれど。


「見ての通り、買い物に来たんだよ。果音ちゃんはこの階に何の用事があるの?」

まああまり状況には口を出さないでおくとして。

私も多分、普段ならこの階に用事なんかない。


「愛依がいなくなっちゃって探してるんだけど、見てないかしら?」

私の言葉に4人は顔を見合わせるが、誰一人として心当たりはなさそうだった。

「愛依の方向音痴は未だに直っていないのでありますか?鮭以下でありますな。」

雫の言葉は手厳しい。でも私も正直心のどこかでそう思ってないとはいえない。


「愛依って今スマホ持ってないのよね?全く面倒くさいわー……。」

そう言う真子は本当に心底面倒くさそう。私だって内心そうだけど。

「そうなると心配やなー。一体どこにおるんやろ?きっと愛依ちゃんも不安やろうな。早う見つかるとええけど。」

畳ヶ原さんも心配してくれている。能天気だし不安にはなってないだろうけど。


「この階には来てないと思うなあ。ホビーの方にもいないだろうし。」

凪乃がそう言ってオモチャ専門店の方を見る。

その中では春佳(はるか)が誰かと仲良く買い物してるのが見えた。


「あら、春佳も来てたのね。」

隣の女子にも見覚えがある。彼女も私たちのクラスメイトで初日からやたらと春佳と仲が良い飛籐(とびとう)さんだ。

凪乃と春佳が言うには、彼女は日本一セパタクローが強い女子高生とのこと。

話を聞くに球技とのことだけど、私はセパタクローが何なのかは知らない。

どうして今その彼女が春佳と一緒になってラジコンに興奮してるのかも知らない。


「うーん、私も一緒に探そうか?」

凪乃が申し出てくれたが、流石に仲良く買い物中にそれは申し訳ないと私は断る。

「もし見つけたら私か咲花(さきか)に連絡して、愛依は引き留めておいて。」

私の言葉に畳ヶ原さん以外の3人がビシッと敬礼で了承の意思を示す。

畳ヶ原さんは少々困惑していた。


「あ、そうだ果音ちゃん。今日の晩御飯なんだけどさ、雫と畳ヶ原さんと飛籐さんも一緒で良い?」

去り際に凪乃からそんな質問が飛んできた。

久々に雫と会えたことや新しい友達ができて嬉しいんだろうな。


雫や新しい友達を歓迎したいという凪乃の気持ちが伝わってくる。

凪乃の友達なら私でも他人じゃない。

「仕方ないわね。良いわよ。」

私ははにかんで即答した。


エスカレーターに手を掛けた瞬間、突然バチッと火花が弾けるような音がした。

それと同時に周囲の明かりは一斉に消える。停電だ。

地下フロアで照明が消えては何も見えない。

あちらこちらで人がざわついている。


「ちょっと何!?どういうことよ!?」

多分こういう時は落ち着いていた方がいい。それはわかっているけれど。

でも実際にこの事態に直面した時、そんな判断ができる人の方が少ないだろう。

私を含めたこの場の誰もが状況を飲み込めていない。


ただ一人、凪乃を除いては。


凪乃の行動は実に早かった。

すぐにスマホを取り出しライトを点灯させ、自分と周囲の状況を確認する。

凪乃のライトで私や真子たちも互いの位置が確認でき、冷静を取り戻せた。


凪乃の行動を真似て周囲の人たちもスマホのライトを点ける。

それからほどなくして店員さんたちが大声で案内を始める。

パニックに陥っていた状況が平静を取り戻していく。


しかしこうなると、本当に愛依が気がかりになってくるわね。


◇◇◇


停電発生

弥彦:???

愛依:???

果音:別館 地下1階

咲花:本館外 入り口横ベンチ

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