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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅰ】
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【9話】弥彦と姉妹のショッピング

この話から第1章・前半です。

弥彦(やひこ)


俺と愛依(あい)果音(かのん)咲花(さきか)の4人は並んで中央商店街を歩いていた。

今日は木曜日。世間は勿論平日。だが俺たちはまさか4日目にしてサボっている訳ではない。

金閣(きんかく)学園は謎の水道管の破裂とやらで急遽今日明日と休みになったのである。

即ち、突然に四連休となり今日がその初日という訳だ。


「どう愛依、多少は覚えられそう?」

並んだ姉妹の中央を歩く長女に話しかける左隣の三女咲花は問いかける。

問いかけられた愛依はというと、スマホの地図アプリをまじまじと睨みながら上下左右に傾けていた。

いかにも微妙そうな表情をしている。彼女の眉間の皺が心情を雄弁に物語る。

「一人でここに来るのはしばらく先になりそうね。」

その様子を見た右隣の次女果音はそう言って溜息をついた。


今日俺たちがここに来た理由は大きく分けて2つある。

その1つは果音と咲花が商店街のどこにどんな店があるのか知っておきたいから。

引っ越してきて間もない姉妹を金閣町に住んで長い俺が案内している格好だ。

彼女らは姉妹だけで住んでいるらしく、そうなれば必然的に買い出しも彼女たちがすることになる。

そして特にその役回りを担うらしい果音と咲花が昨日俺に頼んできたのだ。

因みに今日もそれなりに買うものがあるらしい。


もう1つの理由は愛依が自分の住んでいる町で迷わないようにするための訓練。

本人たっての願いであるが、その効果が出るにはまだまだ時間がかかりそうだ。

「うーん?これ、今はこの方向で合ってるよね?」

咲花が愛依の言葉に反応してスマホを覗き込む。

「逆さまよ。」


愛依の用事はさておき、果音と咲花の買い物については順調に進んでいた。

食料品や日用品は大して重くはないが、どんなものも積もれば山になる。

俺の両手のレジ袋には現にズッシリと手応えある確かな重量を感じる。


「大丈夫?別にそこまでしてくれなくても良いのに。」

俺の様子を見かねて心配してくれるのは咲花。

「何、全然問題ないさ。せっかく一緒に回るんだからこれくらいカッコ付けさせてくれよ。」


そんな4人で行く道中もいよいよ佳境。時刻は既に昼を回った。

「後は私本屋を探してるんだけど、どこかにあったりする?」

果音が振り返って俺に聞く。俺は真正面のショッピングモールを視線で示す。

「あの5階6階は丸ごと本屋だ。品揃えもここらじゃ一番だな。」


「私も欲しい参考書があるんだよね。一緒に行こうかな。」

果音に続いたのは咲花だ。進んで参考書を買うなんて勤勉なことで。

俺が本屋に用事があるのは漫画かラノベくらいだってのに。


「あ、私春佳(はるか)にテーピング頼まれてるんだった。」

愛依は愛依で別に用事があることを思い出したようだ。

「スポーツショップは確か別館3階にあったな。全部あそこで済みそうだし、丁度良いじゃないか。じゃあ俺は地下の食品フロアで自分のメシでも探すから、時間がたったら適当に落ち合おうぜ。」


◆◆◆


待ち合わせの時間は13:30。現在時刻13:28。

俺の次に果音が到着し、続けて咲花も遅れずにやってくる。

「しかし買うものと場所を考えたら愛依の方が先に着きそうなもんだがな。」

愛依の向かったスポーツショップは片隅にある1テナントである。

狭いことこそないものの、正直そんなに広くない。


要所要所にはフロアの案内マップもある。

故に俺は愛依が館内で迷うことはないだろうと思っていたのだが。

13:45。約束の時間から15分が経っても愛依の姿は見えない。

「これ、絶対に迷ってるわね……。」

果音は渋い顔をしてそう言った。


「まさかそんなことあるか?地図だって案内だってあるのに迷う要素ないだろ?」

俺の言葉に果音と咲花は顔を見合わせ、揃って溜息をついた。

「私たちもそう思ったから1人で行かせたんだけど、まさかここまでとは……。」

咲花の言葉に俺は返す言葉がなかった。愛依の方向音痴は相当に深刻らしい。


「仕方ないな。じゃあ連絡とってくれよ。俺が迎えに行くから。」

咲花がポケットからスマホを取り出し、電話を掛けようとしたその時だった。

「ねえ、愛依ってスマホまだ壊れたままじゃない?」


果音が言うまで俺も思い出せなかった。愛依のスマホは壊れている。

この前の日曜日、俺と愛依が出会った正にその時に壊れた。

さっきまで当たり前のように使っていたのは咲花の物だ。


そして次の日から昨日まで3日間の平日。つまり愛依がスマホを買い替える機会はなかった。

つまり今、愛依は誰とも連絡が取れない状態でどこか迷っていることになる。


「こうなったら誰か1人ここで愛依を待つとして、残りの2人で手分けして建物中を隈なく探すしかないだろう。」

俺が本館、果音が別館、咲花はここに残る、ということになった。

本館は広いので年単位で慣れている俺の方が適任だ。

別館は4階から上が改装中だから探す範囲も広くない。

慣れてない果音でも十分だろう。


果音が買った中には生鮮食品もある。余り時間はかけていられない。

何より、きっと愛依も不安だろうしな。早く見つけてやらないと。

【14話】まで毎週2話ずつ投稿します。

構成上そちらの方がわかりやすいと思ったので。

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