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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ(打ち切り)  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅱ】
122/180

【100話】七つ子の誕生日

前回が6月の中旬で今回が7月7日です。

いきなり飛んでわかりにくい部分があって申し訳ないです。

弥彦(やひこ)


「すげえな、こりゃ…。」

以前もこの景色を見た時、同じようなことを言った気がする。


食卓の上を埋め尽くすのは技巧を尽くされた果音(かのん)の手料理の数々だ。

和洋中ジャンルは様々。メインは炒飯とステーキだが前回同様に餃子もある。

それだけでも腹は膨れそうだが更にピザ、グラタン、山盛りの鶏の唐揚げが続く。


「果音嬢、ケーキが見当たらないでありますぞ?」

くいだおれ太郎のコスプレで質問するのは来客の一人、御霊石(みたまいし)

幾らなんでも浮かれすぎだ。だがそれと同時に似合いすぎでもある。


「ケーキはメインだもの。食事の後ね。今は冷蔵庫で冷やしてあるわ。」


これだけ食べてケーキが入るかと問われれば甚だ疑問だ。

まあ俺はケーキが苦手だし、このボリュームを口実にはできるか?


「ウチ実家から笹を送ってもらったんや。後で皆で短冊飾ろな。」

あの玄関脇にあった笹は畳ヶ原(たたみがはら)からだったか。七夕だもんな。


豪徳寺(ごうとくじ)、ちゅ~る持ってないか?」

「どうして俺が持ってるんだよ。持ってる訳ないだろ。」

飛籐(とびとう)はどうやらヤマトがお気に入りらしく好かれたいらしい。

ただし当のヤマトからは全力で塩対応のようだ。報われない愛である。


「飛籐さん申し訳ないけどヤマトをケージに入れてくれる?もう始まるから。」

咲花(さきか)に促され渋々ケージに入れるとヤマトはすぐさま寝床に引っ込んだ。

飛籐に構われていたのは相当イヤだったらしい。つくづく報われない愛である。


「さて、役者も料理も揃ったし始めよっか!」

愛依(あい)がパンと手を叩いた。彼女の言う通り、既に準備は万端だ。

集うは主役たる七つ子に加え(らん)若葉(わかば)、俺、畳ヶ原、飛籐、御霊石の計13人。

いくら広いリビングとはいえこれだけ集まると少し狭く感じるが、そこはご愛敬。


因みにこのメンバーが全員揃うのは初めてか。

そして男は俺しかいない。まあ今更気にすることでもない。ヤマトはノーカン。


さあ、パーティーの始まりだ。

俺を含めた全員がクラッカーを掲げる。

誘われた手前、最高に楽しい誕生日パーティーにしてあげよう。


全員が同時にクラッカーの紐を引き、大きく乾いた音が空間に響いた。

夢原(ゆめはら)七姉妹、ハッピーバースデー。


◆◆◆


13人で囲むと多く見えた食べ物も瞬く間に無くなってしまう。

会話が弾んだ分時間の流れを早く感じたのもあるかもしれない。

食事が終わった時、部屋の時計は丁度20時を指していた。


今からバースデーケーキが出てくる。そう考えると身構えてしまう。


ケーキは苦手だ。5歳の誕生日のあの時から。

幸い腹が膨れている。もう何も入りそうにない。

とはいえ、真正面から断るのはやはり勇気がいる。

どうしたら傷つけず、場の雰囲気を壊さずに断れるか。


誕生日の宴席でケーキに口を付けないのは礼儀に反していると思う。

ただし一口食べただけというのも暗に不味いと言っているかのようだ。

勿論、一番正しいのは言うまでもなく出されたケーキを完食することである。


「これからケーキなのでありましょう?吾輩、食べられるか不安であります。」

そう言う御霊石はどうやら食べすぎたようだ。腹をさすっている。

というかあの細身で中々食べるものだ。十分だと思う。


「そ…そうだなあ。ご馳走、美味かったから俺も食い過ぎたみたいだ。」

半分は御霊石に便乗しての口実作り。正直、罪悪感がある。

そしてもう半分は純然たる事実である。少し苦しい。


「あ、そうか。(しずく)も豪徳寺君も果音のケーキ食べたことないんだ。」

凪乃(なぎの)が思い出したかのように言った。確かに今まで一度も食べたことはない。


更に凪乃の言葉に珠希(たまき)が続く。

「別腹でペロッと入っちゃうわよ。美味しすぎて。」


「どうしてもって言うなら仕方ないけど、でも絶対に今日の内の方が美味しいからできれば今味わってほしいわ。とびきりの自信作よ。」


果音が自慢げに胸を張る。拒否しにくい雰囲気になって来た。

「ほほう、では是非とも楽しみにさせていただくであります。」

追い打ちのように御霊石も説得されてしまう始末。

別に食えない訳じゃない。ここは腹を括ろうか。


果音と(らん)が2人掛かりでケーキを運んできた。想像以上に大きい。

とはいえ13人で分け合う訳で、そう考えるとサイズは丁度良い…のか?


七つ子がケーキにキャンドルを挿していく。

16だから大きいのが1本。小さいのが6本で丁度1人1本ずつ。

それをサクサク手際よく終えると、今度はテンポよく火を灯していく。


「はいカメラ準備オッケー。もうちょっと真ん中寄ってー。」

更に真子(まこ)がいつの間にか三脚を立てて撮影の準備をしていた。


「はいタイマースタート!」

真子はそう言って急いで戻りピースサインを取る。

数秒してカメラがフラッシュの閃光と共にシャッター音を鳴らした。

気付くのが遅れた俺は慌てて対応したので表情が変になってないか不安だ。

まあ変だったら変で、それも含めて思い出に残るのかもしれないが…。


真子がカメラで撮影した写真を確認する。

「お、良い感じじゃん。今日中には全員のスマホに送るから。」

どうやら真子的には満足できる出来栄えだったようだ。何より。


電気を消してバースデーの歌を歌い、七つ子がキャンドルの日を吹き消す。

その流れに参加しながら俺は自分の誕生日の事をうっすらと思い出していた。

誕生日の思い出で楽しかったのは4歳の時くらいで、それ以前は記憶にない。


ああ、そうだ。本来誕生日ってこんなに楽しい物だったんだな。

2024年12月23日(明日)~2025年1月5日までクリスマス・年末年始の連続更新をします。

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