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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ(打ち切り)  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅱ】
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【98話】弥彦のプレゼント選び(1)

弥彦(やひこ)


「さて、どうしたものか…。」

日曜日の昼下がり、俺はパソコンを前に1人呟いた。

画面に映されているのは七姉妹の誕生日プレゼントの候補の品々だ。


7月7日、七夕。夢原(ゆめはら)七姉妹の誕生日でもある。

何でも毎年その日はパーティーをやるらしく、俺も昨日知らされた。

普段から何かと世話になっている身だ。勿論参加させてもらうしプレゼントだって用意する。

ケーキは苦手だがこの際そうも言っていられまい。


そしてそれ故に俺は今プレゼントを用意している真っ最中。

当日までは既に一ヶ月を切っている。余り猶予がある訳でもない。

ただし贈るからには喜ばれたい。だからこそ徹底的な品定めをする。


幸い俺は先月に退院祝いの席でプレゼントを贈られている。

それを基に愛依(あい)珠希(たまき)春佳(はるか)真子(まこ)へ贈る物はすんなり決まった。

正確に言うならどれも手元にはない。ただし既に手配は済ませた。


問題はそれ以外の3人。つまり果音(かのん)咲花(さきか)凪乃(なぎの)の分だ。

こちらについてはプレゼントのジャンルさえ決まっていない。


退院祝いの席で果音と咲花から送られたのはお守り。凪乃からはアクセサリー。

ちなみに果音と咲花がくれたお守りはそれぞれ無病息災と学業成就。

無病息災は大怪我をした俺への贈り物としてはこの上ない選択。

尚その時にテストを控えていた身だったので学業成就も同様だ。


凪乃のくれたアクセサリーはぶじかえるという縁起物。

込められた意味としては果音のお守り無病息災と同様だろう。

つまりこの3人は俺のシチュエーションに合わせた贈り物をしてくれたのだ。

だからこそ安直にお守りやアクセサリーを買ってくるなどという真似はできない。


俺もシチュエーションに合わせたプレゼントをするというのがこの場合のベスト。

だからまずはそのシチュエーションとやらを考えることからだ。

ただし金銭感覚について何度か白い目で見られている。

余り高すぎるのも考え物だ。猶予はないが条件は多い。


わかりやすいところでは果音は料理が得意。好んでやっているようだ。

昨日アルバイトの面接をしてきたカフェでも既に調理役を任されたらしい。

つまるところ調理器具がプレゼント候補に入って来るが生憎俺は詳しくない。

果音が今どんな調理器具を持っているのかを(らん)若葉(わかば)に調べてもらう必要がある。


咲花は勉強のイメージが強い。ただし参考書はプレゼントとして的確だろうか?

折角の誕生日プレゼントが勉強関係ではガッカリしてしまわないだろうか。

少なくとも俺は反応に困るし世の学生の大多数がそうであろう。

これも蘭か若葉に一度聞いて、そこから考えてみよう。


凪乃。学校での会話が特に多い訳でもなく、何を贈るべきか見当もつかない。

1度の大きな事件をきっかけに俺に対して態度が大きく変わったとは思う。

心をより開いてくれた、とでも言おうか。俺の事を気にかけてくれている。


だが、それはそれとして好みや趣味などは全くわからない。

凪乃についても蘭や若葉に下調べを頼む他ないだろう。

それで何か有効な手掛かりが見つかれば良いのだが。


パソコンの画面を切り替える。

個人宛てのプレゼントについては一旦ここまで。

次に俺が考えるべきは全員にプレゼントできるものについてだ。

普段から世話になっていることを考えればこれくらいは用意してあげたい。


潤鷲(うるわし)も登下校に使っている運転手付きの送迎リムジン。

一瞬頭に思い浮かんだがどう考えてもそれが必要な距離ではないので却下。


油田や鉱山の経営権…は貰っても困るか。

俺だって専用の会社を作って丸投げしてる現状があるもんな。

それに運良く儲かれば良いがそうでないこともある。一種の博打だ。


島。

大きい物ならともかく、それなりの無人島は手頃な値段で買えることも多い。

だが島に行って遊ぶには島の整備が必要だ。その他、移動手段の確保も要る。

そこまで考えると用意したとてまた白い目で見られるような気がしなくもない。


思考が暗礁に乗り上げた。果たしてどうしたものか。

そのままウンウン唸っていた時、部屋のドアがノックされた。


「ん?どうかしたか?」

俺の声に反応して聞こえてくるのは蘭の声。

「果音がプリン作ってくれたけど、食べる?冷蔵庫に入れておく?」


「今食べるよ。そうだ蘭、丁度話があるんだが、良いか?」

これはグッドタイミング。プレゼントの件について、今話してしまおう。


◆◆◆


よく冷えたプリンは力加減を間違えると崩れてしまう程に柔らかい。

そして抜群の甘さが口の中に広がるこの感覚は言葉にできない。

ほろ苦いカラメルとの組み合わせは芸術的ですらあると思う。


果音お手製のプリンを味わいながら蘭に例の事を話した。

それを聞いていく内に段々と蘭の顔は怪訝になっていく。

その変化の様子は昨日の金庫の件と全く同じように。


「3人の件はわかった。こっちで下調べしてみる。問題は7人全体に何か贈りたいって方だけど…正直、島なんて整備とか移動手段とか関係なく、そんな物を貰ったって困るだけだと思うけど。」


「…そういうもんなのか。」

「君の考える手頃な値段って絶対に手頃じゃないと思うし。」

一先ず第一候補、ダメ元で島を挙げたが蘭の評価は予想より更に厳しかった。


「物じゃなくて【豪徳寺(ごうとくじ)】のサービス優待券とかでも良いと思うよ。そういうのは手に入ったりしないの?」


「…そんな物で良いのか?」

蘭が言う類の物は持っている。事あるごとに貰うので余らせているくらいだ。

というか俺も滅多に使ったりしないので大抵は茂布川(もぶかわ)にあげてしまっている。


「勿論。君だからこそできるプレゼントだし、オリジナリティがあって良いと思うよ。そもそもそれだって普段ちょっとやそっとじゃ手に入らない物だしね。」


言われてみればそうかもしれない。言う通りオリジナリティはあろう。

あれが余って仕方のない高校生など俺以外ではこの地球上にそうはいない。

その中でも特に七姉妹(あいつら)が喜びそうなやつをピックアップしてやるとしよう。


「ありがとうな、蘭。参考にするよ。」

「どういたしまして。じゃ、下調べはしておくからね。」

できる家事手伝いに恵まれて助かった。早速何か探してみよう。

弥彦が退院祝いで何を貰ったかは【74話】にて。

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