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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅱ】
112/179

【90話】待ち構えていた果音

弥彦(やひこ)


「お疲れ様、()()()。」

『イグニッション』から帰って来た俺たちを出迎えてくれたのは果音(かのん)

その表情は満面の笑みだが、何か怒っている雰囲気を感じなくもない。

珠希(たまき)は心当たりがあるらしいが、さっき”2人共”を強調したことからもしも用事があるとすれば俺にもありそうだ。


だが俺に怒られる筋合いはない。

一体どうして俺まで含めて待っていたのだろう。


「話は中でするわ。豪徳寺(ごうとくじ)君もこっちに来て。」

「はあ…。」

言われるがまま、案内されるがまま、俺は夢原(ゆめはら)家にお邪魔する。


リビングに入った時、果音の要件に関連する物がわかった。

それがテーブルに並べてあったのと珠希の顔が蒼くなったからだ。

そして確かにこれは全く俺が関係していないとも言えなさそうである。


並べられていたのは女性物の下着と1つのコスプレ衣装。

では何故そんな物に俺が関係があるのか。その答えは簡単だ。

昨日珠希の買い物に付き合った際、最後に俺が買った物だからだ。


「見覚えあるわよね、豪徳寺君?」

「…まあ、そりゃあな。」

どういう訳か俺が買ったことも筒抜けらしい。

それの何が悪いのかは全くわからないが果音は不機嫌だ。


「あんたねえ…。」

溜息をついたのは咲花(さきか)

その言葉は珠希に向けられているようだ。


「動かぬ証拠もある訳だけど、ここにある物は豪徳寺君に買ってもらったってことで良いのよね?」


果音はそう言ってクシャクシャのレシートを珠希に突き付けた。

俺が昨日ゴミ箱に捨てたハズだが、(らん)若葉(わかば)が見つけたのだろう。


「べ…別に無理やり買わせたりしたんじゃないわよ。」

…そうだっただろうか。少々強引だったような記憶がある。

いやまあ、俺も嫌とは言わなかったし無理やりではない…のか?


「この金額の場合、そうだとしても問題はあると思うけどね。」

凪乃(なぎの)がジトッと珠希を見上げる。

確かに12万円は安いと呼べる金額ではないかもしれない。


「そりゃ金額を確認しなかったのは悪いけど…」

「いや全面的に最低だから。」

言い訳がましく粘る珠希を真子(まこ)が刺す。


「っていうか豪徳寺君も甘やかしすぎ。」

「俺?」

愛依(あい)の言葉に珠希以外の5人が同意するように頷く。


「いやいやいや、普通は払わねーだろ、12万円なんて。」

春佳(はるか)にさえ一般論で苦言を呈される始末。


「そりゃ大金と言われりゃそうだが、別に大した金額じゃ…」

…等と更に口答えしてしまったことは悪手だった。


「うーわ、金銭感覚ヤバすぎ。」

「豪徳寺君の生い立ちからしたらわからなくはないけど、それにしてもね。」

真子からは直接的に非難された挙句白い目で見られる。

凪乃も言葉を濁すが、言いたいことは同じだろう。


「それは一旦置いておきましょうか。豪徳寺君を責めたって仕方がないしね。」

咳払いをして果音が話の流れを戻そうとする。特に否定はしてくれなかった。

ということは果音も内心では俺の金銭感覚に思うところがあるのだろう。

贅沢は幼少期から婆ちゃんに咎められていたし、それもあって自分ではそんな自覚が全くなかっただけに少しショックだ。


果音は視線を珠希に向ける。

「豪徳寺君の前だもの。お説教は勘弁してあげるわ。…で、さっき皆で話し合って決めたんだけど、あんたの仕送りから毎月2万円を豪徳寺君に返済することにしたから。豪徳寺君、それで納得してくれる?」


「ちょっと待って酷くない?それじゃ新しい水着が買えないじゃない!」


俺が反応するより早く反抗を示したのは珠希当人。

だが。


「いやいや、あんたが悪いんじゃん…。」

「水着1つ買ってもらった程度だったらこんなことになってなかったのにね。」

愛依、凪乃の珠希に対する反応は辛辣そのものだ。

毎月2万円という額が珠希に取ってどれ程のものかはわからないが、反応を見るに影響がある額なのは間違いないだろう。


それに何より、だ。

「別に貸した訳じゃないんだし返済なんかいいって…。」

12万円という金額は確かに小さくはない。一般的な感覚として。


だが俺は色々あってこの金額が出て行くことは全く痛手にならない。

大きな買い物は滅多にしない故、貯まる方が圧倒的に多いのである。


「それを甘やかしすぎって言ってるんだけど。」

隙を見逃さず飛んでくる真子の言葉は鋭く突き刺さって痛い。


「不本意だろうけど受け取ってほしいの。ケジメだし。」

「豪徳寺君にしてみれば雀の涙みたいなお金かも知れないけど、流石に12万円分なんてタダで受け取っちゃう訳にはいかないし…。」

咲花の説得に凪乃がフォローを添える。


「それと、今後は珠希が我儘を言っても甘やかしすぎないでほしいのよ。一応今回の事はよく言って聞かせるけど…。それを言いたくてウチに寄ってもらったの。」


「ぶー。」

果音に向いて珠希が口を尖らせる。

あたかも我儘なんて言っていないと意思表示しているかのようだ。

いや、無理やりではないにせよあれは我儘ではあっただろう。流石に…。


「わかった。そういうことなら受け取るよ。甘やかす甘やかさないは…まあ努力はする。」

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