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豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【第一章・Ⅱ】
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【80話】弥彦の帰宅のビフォーアフター

(らん)


豪徳寺(ごうとくじ)君も可哀そうね。後で珠希(たまき)にはキツく言っておくから。」


昼食を食べに帰った折、愚痴を聞いてくれたのは果音(かのん)だった。

早朝に出て行ったからお昼前には帰って来ると思っていたのだけれど、残念ながら帰って来ないまま既に時刻は13時を迎えようとしている。


豪徳寺君の為に用意した朝食は最終的に私と若葉(わかば)の朝食になった。

それから、待てど暮らせどいつまで経っても帰って来る気配はなくて。


別に彼がいるいないが私のやることに大きな影響を与える訳ではない。

平日は常にいない訳だし、何なら明日だって珠希と出かけてしまう。

だから今のこの状況は私にとって特別なんかじゃない。

だというのにどういう訳か、寂しい。


「でも、どうして帰って来ないんだろう…?」

若葉が疑問を呈する通り、いくら何でも時間が経ちすぎている。

服を買いに行くとは言っていたんだけど、それだけではないっぽい。


「何かトラブルだったら連絡くらい寄越すわよ。ま、珠希のことだしね。あの子はオシャレには強烈に拘りあるしそれで長引いてるのかしら。あとはいつもの悪い癖かもね。」


「悪い癖?」

私が聞き返すと果音は頷いて答える。


「あの子、男の子を弄ぶのが大好きなのよね。弄ぶって言っても二股とかヤり捨てとか全然そういうのじゃなくて、からかって遊ぶ程度の物なんだけど…。早い話、タチが悪いのよ。」


「ああ…。」

普段の珠希のイメージと特に大きく乖離がある訳じゃない。

寧ろその様は鮮明に思い浮かんでしまう程だ。


「それで今まで何人が毒牙にかけられてきたことか…。」

果音は実の姉妹を毒牙呼ばわりしてやれやれと首を横に振る。


「逆にそれで豪徳寺君に怒られてたりして。」


「うわっ、びっくりした。」

会話に混ざって来たのは真子(まこ)

いつの間にか隣に座って紅茶を嗜んでいた。


「それはそれで自業自得だから別に良いんだけど、でも豪徳寺君ってそういう理由で怒ったりしなさそうじゃない?寧ろなあなあで付き合っちゃう気がする。」


「うーん、私もそう思う。学校でも豪徳寺君って滅多に怒ったりしないでしょ?」

豪徳寺君が激しい感情を露わにしているのを私は一度も見たことがない。

穏やかとか優しいとか、それも別に間違ってはいないけど違う気もする。


「というか、私たち以外だとそれこそ茂布川(もぶかわ)くらいとしか絡みないしね、彼。」


茂布川君、その名前には聞き覚えがある。

豪徳寺君と会話していても時々出てくる名前だ。

逆に他の男の子の名前は彼の口から聞いたことがない。

想像通りだけど、豪徳寺君の交友関係はそう広くはないらしい。


「その茂布川は珠希の毒牙にかけられっぱなしだしねー。」

「あれ毒牙にかけられてるっていうかパシリにされてるだけじゃない?」


「そ…そうなんだ。」

学校での人間関係は狭いなら狭いなりに複雑らしい。

経験したことがないから一度経験してはみたいと思うけど。


「それで話を戻すけど、珠希が豪徳寺君を弄んでるなら時間かかっちゃうかもね。帰ってきたら労いの言葉でも欠けてあげたら?」


「うん、そうする。」

話を聞いてる内、胸中の寂しさは気づけばかなり薄らいでいた。

豪徳寺君が帰ってきた時の事を考えればモチベーションも湧いてくる。

疲れて帰って来る豪徳寺君の為に夕食は気合を入れて作って上げなきゃ。


「珠希の事情聴取は私たちに任せて。徹底的にやるから。」

「まあ、それはお手柔らかに…。」

真子は何か珠希を詰めることにやる気が湧いてるみたい。

それがどうしてかは知らないけど、それは任せておこう。


◆◆◆


「ただいまー。悪い、遅くなった。」


待ち人、帰宅。15時を回るより少し前の事だった。

珠希にからかわれていたのか表情はかなり疲れている。

「お帰り。ご飯今作ってる最中だけど、先に何か食べる?」


私の質問に豪徳寺君は首を横に振る。

「いや、確かに空いてるけど待たせてもらうよ。」

「ふふ、わかった。じゃあ頑張って作るね。できたら呼ぶから買ってきた服の整理でもしてたら?」


「おう。楽しみにしてるよ。」

幾つも大きな紙袋を両手に下げ、豪徳寺君は自分の部屋に上がっていく。

明日用の服どころかそれ以外のものまで結構買ってきたみたい。

クローゼットに余裕はあるから大丈夫だと思うけど。

どんな服を買ってきたのか後で見ておこうかな。


「…蘭ちゃん、ちょっと嬉しそう。」

「ふふ、そう?」


自分でもわかるくらいテンションが上がってる。

私、彼が帰ってきてくれて嬉しいんだ。


夕食、頑張って作らなきゃ。

彼に満足してもらえるように。

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