表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豪徳寺弥彦と15人のフィアンセ  作者: 水野葬席
【序章】
10/179

【8話】その女、御霊石雫

ここまでが序章です。【9話】~【75話】が第1章・前半に該当します。

弥彦(やひこ)


茂布川(もぶかわ)は俺が教室に入ってからだいぶ遅れて教室に入って来た。

そして実物の七つ子を目にするなり


「ここは楽園(エデン)か?」

「アバンチュールが見えるぜ……!」

「俺の人生は今日この日の為にあったんだ……!」


などとよくわからないセリフを恍惚とした表情で連発。

更には愛依(あい)から真子(まこ)まで1人ずつ丁寧にお茶に誘うも7人全員にキッチリ断られる始末である。しかもリベンジまでして綺麗に2回ずつ断られた。

そのオチまでの芸術的なまでの流れに俺は軽蔑の念を込めて白い眼を送る。

俺だけではなく、七姉妹を含めた教室の中にいる全員がそうだった。


「その、悪い奴じゃないんだが……ごめんな……。」

謝る俺。苦笑いの七姉妹。ショックの余り五体投地する茂布川。

その様相は余りにもいたたまれない。助け舟は出さないが。


「あれはナシね。絶対にナシ。あり得ない。」

「まあアリナシ以前の問題よねー。」

果音(かのん)珠希(たまき)も頼むからトドメを刺さないでやってくれ。


そんな白昼の茶番劇はさておいて。


教室がざわついたのはそれから間もなくのことであった。

この教室に入って来たのは漫画のような瓶底眼鏡を掛けた長身の女子である。

ドア枠を態々くぐって入るあたり、明らかに俺が今までに見た中で一番の長身だ。

恐らく同学年では男子でさえ彼女の身長を超える者はいないのではないだろうか。


「来たね、(しずく)。名簿を見た時は驚いちゃった。まさかあんたも来てたなんて。」

最初に彼女の名を呼んだのは愛依であった。そこにあったのは俺が初めて見る愛依の雰囲気だった。

目は鋭く、正に彼女を威嚇しているといった様子である。


「ああ、説明しておくね。豪徳寺(ごうとくじ)君。あの子は……」

咲花(さきか)は何か事情を知っているらしく俺にそれを説明しようとした。

豪徳寺君、と俺に呼び掛けたその時、その長身の女子は俺の方を向いた。


「ほう、貴殿が豪徳寺弥彦殿でありますな。吾輩は御霊石(みたまいし)雫であります。よろしくお願い申し上げるのでありますな。」

雫と名乗った彼女が俺の名を呼ぶと同時にクラス中がまたざわめきだす。こういう話が好きな年頃なのだ。

因みに俺は彼女のことは全く知らない。仮にこんなに濃い知り合いがいたら絶対に忘れるわけがないだろうし、間違いなく初対面だ。


だが長身云々以前に彼女が俺に話しかけた時その口調が一気に頭にこびりついた。

この話し方を古式ゆかしい等と表現するのは間違いなく無理があろう。

キャラ付けにしたってそのルックスでこんなキャラ付け必要なのか?

俺の中で彼女に対する警戒心がワンランク上がる。


「正に俺がその豪徳寺だが……俺に何か用か?」


「いや無視すんな雫!」

俺が返答をして御霊石が答えるその前に割って入ったのは愛依であった。

愛依はさっきの反応からしても御霊石とは何か関係があるらしい。


「む、さっきから耳障りなコバエが飛んでいるのかと思いましたがこれはこれは、まさか愛依でありましたか。へー。ところで今ちょっと取り込み中なので3億年くらい後にしてほしいであります。」

御霊石は常に飄々と話す。だがそれが愛依に対する一種の挑発の意図を含んでいるのは間違いなかった。

それを感じ取ったのは俺だけではない。クラス中が感じていた。

一触即発。いつ爆発してもおかしくない剣呑な空気だ。


「はい、そこまででーす。」


凪乃(なぎの)のそんな間の抜けた声が聞こえた。彼女は俺の後ろからスタスタと2人の間に当然のように割って入った。

そのままいつの間にか移動していた真子と一緒に愛依の両脇を捕らえ、ズルズルと引き摺って強制退場させる。


「雫もそこまで。良いわよね?」

御霊石に声をかけるのは果音である。当たり前だが愛依と知り合いなので自動的に七姉妹全員とも知り合いらしい。

「これはこれは果音嬢。ご無沙汰しているでありますな。まさか姉妹にまでご迷惑をかけるとは失礼いたしましたであります。ううむ失敬。」

御霊石は愛依以外に対しては挑発的な態度を取っていない様子だった。

それどころか久々の再会を懐かしんでいる様子ですらある。


「あはははは!相変わらず変わんねえなあ!雫!久しぶり!」

笑いながら声をかけるのは春佳(はるか)である。

変わんねえなあ、と言うからには彼女の印象も喋り方も愛依とのやり取りも今までずっとこうだったのであろう。


「ええとね、雫は私たちの昔の同級生で…愛依とはその頃から犬猿の仲なの。今の一部始終でよくわかっただろうけど……。」

そういう咲花は頭を抱えていた。その彼女の言葉通り、俺は今の一幕でその関係性を何となく理解した。

ところで俺はその御霊石に1つ聞きたいことがある。


「なあ御霊石、あんた俺のことを知っているみたいだが何か用か?」

態々一発目の挨拶が俺に対してだったのものだから、彼女は俺に何かしら用事でもあるのだろう。

尤もそれが会社関係なら一切受けないが、とにもかくにも話を聞いてからだ。


「いや、現状は特にこれといった用事はありませんな。ただ、()()()()殿()()()と興味があっただけであります。貴殿のことは噂で存じ上げておりましたからな。少々ジャマは入りましたが、これからよろしくお願い申し上げるであります。」

何か用事があると思っていたので彼女の答えは意外だった。噂が何かは知らない。

責めて悪い噂でないことを祈るばかりだ。

【75話】まで毎週金曜日の投稿を予定しています。

次回は2月16日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ