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第十八話 誕生日パーティー

「お兄ちゃん、ここ手届かないから手伝って欲しいの!」


 柚衣は華燐の手が届いていない部分を飾ってリビングを装飾していく。


 午後二時ごろ、柚衣と華燐は柚衣の家で誕生日会の準備をしていた。

 琴美には悪いが柚衣の部屋で待ってもらっている。

 本当は昨日が誕生日だったのだが、やはり簡易的なもので華燐は納得しなかったらしい。

 

 リビングの飾り付けを行ったり、ケーキの準備をする。

 ケーキと言ってもスーパーに売っている市販のロールケーキだが無いよりはマシだと思い買ってきていたのだ。

 市販でも最近のロールケーキの味は進化しているので美味しい。

 もうすぐ小腹が空いてくる頃なのでおやつにもちょうど良い。


「オッケー、こんなもんかな。随分と変わったな」


 柚衣と華燐は玄関から見える誕生日会用に装飾されたリビングを見る。

 全体的に赤メインで装飾されていて、百均で買った『Happy Birthday』の文字も赤色だ。


 四隅にはハート型の置物やピンク色のリボンが置かれている。

 装飾の監修は華燐で柚衣はアドバイスしただけなので素直に柚衣は感心する。

 

 しかし一つあることが抜けていることに気づく。


「あ、そっか、あとプレゼント置いとかなくちゃな」


 柚衣は包装で包まれたプレゼントをソファに置いてある枕の後ろに隠す。

 プレゼントの中身はハンドクリームだ。

 店員に勧められたもので店員曰く上品なネロリの香りで爽やか系のくどくない香りとなっているらしい。

 あまり詳しいことはよくわからないが女子用のプレゼントで間違いがないものらしいので買った。

 少し値段はしたがそれでもハンドクリームなので財布には優しいものだった。


 華燐はうさぎの人形をデパートで買い、昨日姉に渡したらしい。

 人形がいくつか部屋に置いてあったのを思い出して所持金の二千円を使って買っていた。


 渡すプレゼントはないのだが、手紙を書いたそうだ。

 子供のすることは自由でそれが可愛らしく思える。

 琴美はきっと喜ぶことだろう。


「じゃあお姉ちゃん呼ぶか?」

「うん! 呼ぶー!」


 柚衣は華燐とともに琴美がいる自分の部屋のドアを開ける。

 真っ先に華燐は琴美めがけて飛び込む。


「お姉ちゃん、目瞑って」

「目瞑るの?」

「瞑ってくれるとありがたい。サプライズがあるんだ」


 琴美は不思議そうにしながらも目を瞑る。

 そんな琴美の手を取り、柚衣はゆっくりとエスコートしながらリビングへと歩かせる。


「目開けて良いよ! お姉ちゃん」

「......これは」


 琴美は驚いたような顔をする。

 まさか二日連続で誕生日会をするとは思わなかったのだろう。

 それにかなり凝っている。


「私のために?」

「華燐が提案して華燐が自分で用意したんだ。盛大に祝いたいってな」

「そうなの?」

「そうだよ! 昨日の誕生日会はあんなの誕生日会じゃないもん」


 華燐の若干拗ねている様子に琴美は笑う。

 柚衣は二人の椅子を引き座らせるように促す。


 二人は促されるまま席につき、柚衣も座る。


「誕生日ケーキはロールケーキで代用だ。すまんな」

「いえいえ、大丈夫です、ありがとうございます」


 そして華燐が仕切って久々に聞く誕生日の歌を歌う。

 柚衣も琴美も年頃なので少し気恥ずかしく感じるが華燐が笑顔なので二人も一緒に歌う。


「というわけで一日遅れだけど誕生日おめでとう」

「お姉ちゃん! これあげる!」


 華燐は手紙を琴美へと渡す。

 何が書かれていたのかは知らないが、それを読み終えた後琴美の目は少し潤んでいた。

 すっかり出来上がっている二人の世界を柚衣はただ眺める。

 

 そして琴美は華燐を抱きしめる。

 

 以前、姉としてのあり方について琴美は悩んでいたが華燐にとって琴美は一人しかいない姉だ。

 華燐が琴美のことを嫌いなわけない。


 二人の世界が解けてきた頃で、柚衣は隠しておいたプレゼントを取り出す。


「誕生日プレゼント。勉強のお礼も兼ねてだ」

「ありがとうございます、開けても良いですか?」

「どうぞ、それなりに使えるやつだと思う」


 プレゼントを渡すだけなのにどうしてこうも気恥ずかしいのだろうか。

 遼に軽く誕プレを渡す時も別に何も思わない。喜んでくれたら嬉しいと思う程度だ。

 ただ、今は違う。少し意識してしまい、目の置き所に困ってしまうので視線が行ったり来たりしている。


「......ハンドクリームですか! 嬉しいです! ありがとうございます!」

「お、おう、よかった」


 琴美は中身を見ると満面の笑みを柚衣に向ける。

 素でいていいとは言ったものの、素の笑みの方が光が強いので柚衣としては困りものだった。


 ここまで喜んでくれるとは思わず、さらにいたたまれなくなってきたので飲み物を入れにいくことにした。


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