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朧気に覚えている、幼い頃の記憶。

いじめられて泣いていた、男の子を助けたことがあった。

……他の子供たちに囲まれて、泣いていたあの子。

肩まで伸びた、セミロングの赤い髪が綺麗で……あぁ、確か、女みたいだと、いじめられていたんだっけ。


私は、そう、その子に駆け寄って、周りの子に大きな声で怒って、彼を助けてあげた。

……彼は、泣きながらも、私に跪いて、私の手の甲にキスをして言った


「かっこいいおひめさま。たすけてくれて、ありがとう。おとなになったら、あなたのことを、こんどはわたしがまもります。だから、私がむかえにいくまで、まってて_」


……私の、初恋だった


________


「ちょっと!何やってるの!」


膝を着いた私に、すかさず平手が飛んでくる。

荘厳なステンドグラスから通る太陽光に照らされた協会に張り詰めた音が鳴り響く。


「申し訳、ありませ」


もう一度平手が飛んでくる。


「謝ればいいと思ってるの!?聖女としての教養も威厳も全くない!本当に貴方は馬鹿な子ね!」


聖女……全く都合のいい言葉だ、この国では聖女なんて政略結婚の駒に過ぎないくせに。


聖グレイス帝国、世界で唯一聖女の産まれる大帝国。

そして今までの会話からお察しかもしれないが……私がその聖女、レイだ


俗に言う異世界転生……と言うやつでこの国に産まれた


前世?……クラスメイトに虐められて、それで飛び降りました、死にました。……はい終わり、それ以上の説明とかいらないよね、話したくもない。


んで目覚めたら聖女としてこの帝国に産まれていたって訳。

……いや、どう言う訳かは私にも分からないけど


ただこの国の聖女の扱い方は……まぁ、それはもう劣悪で。

16歳になると共に、私に聖女の力があると知った両親に国に売られ、引きずられるようにここに連れてこられた。

いつか見知らぬ国に政略的に嫁がされる為だけに私は大教会で厳しい花嫁修行をさせられている。


「……。……っ、すみません。やり直し、ます」痛む頬を気にしながら、ボロ切れのようなドレスの袖をまくり、窓拭きを再開する。


……ふきんをしぼり、窓につけようとしたその時


思い切り後ろから髪を引っ張られ、乱暴に床に転がされる


「ずっと私たちを騙していたのね!この魔女が!折角高い金を出してお前を買ったのに!偽物だったなんて!どうりでみすぼらしい訳だわ!」


顔を上げると、私のしつけ係だったシスターが杖を振り上げていた。


あ、殴られる。

……そう直感的に感じ、丸くなるが、背中を思い切り杖で打ち付けられ、痛みで頭が真っ白になった。


「何、言って、にせもの……って、どうして、そんな」


喉から絞り出すように呟くと、答えが返ってくる

「本物の聖女が見つかったのよ!お前みたいな偽物とは違う!神々しくて女神のような本物!」


そう言って告げられた名前は


「……私の、妹?」


……アリナ。幼い頃から、彼女は苦手だった。


妹である彼女は顔立ちも良く、無邪気で……姉である私にもよく懐いていたが、彼女は……人のものを良く欲しがった。


私のお人形。ワンピース。夕飯のハンバーグ。……挙句の果てには人の彼氏。


そして奪った後には必ずと言っていいほど

「ごめんねお姉ちゃん……私、そんなつもりじゃなかったの……許して、ごめんなさい、ごめんなさい……」


か弱く、なよなよと涙を流しながら私に謝る。


……しかも何故か大勢の目のあるところで、時には土下座してみたり、靴を舐めてみたり、ぶたないで、と泣いてみたり。


と、言うことだがまぁ腐れども姉妹だ。……事情は読めた。

羨ましかったのだろう、私の聖女という立場が。


何度も杖で背中を打たれた後、乱暴に教会から追い出され、路頭に迷う。


……これから、どうしよう。……街を行き交う人々を見ながら、ぼんやりと考える。


……なんで、いつもこうなるのだろう。

私がいくら頑張っても、普通の幸せなんて到底手に入らない。


前世から、そうだった。

……どれだけ勉強しても、テストはいつも赤点。

どれだけ明るく、優しく振舞っても、いつもいじめられる。


……そう、転生してからもそうだ。

いい子であろうとして、妹のわがままも聞いてやった。……親も、私よりも妹を見ていたから、私がいい子であるのは当たり前だった。


手のかからない子、可愛くない子、いらない子。

……頑張ったけど、だめだった。

教会に売られてしまった。


……だから、教会では、好かれるように、明るく振舞った。

……でも、頑張れば頑張るほど、みんなは私を見下す。


……前世では、弟が1人。

親の関心はそちらに向いていて、私はいつも二の次だった。


そして今世では、妹。

親はやはり妹に構いっきりで、私には無関心。


……もう、何かしらの運命なのだろうか。


愛されたいと願うほど愛されない。




……死にたい。


首を吊って、あるいは飛び降りてしまいたい。

もう疲れた、終わりにしたい。


そう思うと、いつも彼を思い出す。


赤い髪の、綺麗な……あぁ、私の騎士様。


「……助けてくれるって、いったのに。……うそつき」

震える声で、そう呟いた


……その声は、誰にも届かず虚空に消えるはずだった


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