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不思議屋へようこそ  作者: I.D.E.I
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02 五人の女冒険者

 店の設置も終わり、ついでの神殿の設置もいつの間にか終わった、その翌日。


 今日も良い天気だった。もしかしたら聖域には雨が降らないんじゃないだろうかと予測する。おそらくはその通りだと、井戸の横で歯を磨きながら、聖域の外の森を眺めて考えた。


 「外は豪雨か。音は聞こえないが光は明滅してるから、カミナリも激しいんだろうなぁ」


 暗く重い雲によって森の上空は夜のようで、はっきりとは見えない。


 「せっかく作った神殿が汚されたくないから、この周辺は雨が降らないんじゃ無いのか?」


 なぜかスマホが振動したような気がしたが、きっと気のせいだと決めつけてポケットから出す事もしなかった。


 ケーゴは店作りにかまけていたせいで風呂の建造に手が出なかった。今までは五右衛門風呂で済ませていたが、本格的に風呂が欲しいと思い、しっかりと着手する事を決める。


 「この世界だと、五右衛門風呂でも贅沢なんだろうけどなぁ」


 そしてスマホのアプリである【古物商ツブツブ屋】を開くと【!】が点滅している。選択してみると【温泉宿】と言うのがあった。


 「おそらくお湯の源泉は超時空的な何かで引かれるんだろうなぁ。まぁ、中途半端だった状況のお詫びみたいなモノかな」


 設置場所は屋敷と店の間ぐらいの裏にする。ここなら屋敷からも近いし、客にも湯を勧められる。温泉なら湯を沸かす燃料代も節約できるだろうと計算するが、その分、掃除の手間が増えるなとも考えた。


 「いや! 温泉だ! 手間がなんだ! 温泉だ!」


 深く考える事も無く設置。後で後悔する事になっても温泉だから仕方ない、と謎の理論武装で実行した。


 設置された温泉宿を見るとかなり大きかった。森との境界線ギリギリまで来ている。中は、露天風呂型の温泉が二つあって、男女用に仕切りが作られてある。露天風呂なんだが、一つは屋根と壁がしっかりとあって、外との間に雨戸のような壁を張れば内風呂になる形式だった。六畳程の脱衣場も二つ、男女用で作られ、風呂上がりに寛げる畳敷きの大部屋もあった。他は部屋が三つと厨房に控え室という構成で、ボットン形式のトイレも三つあった。


 「小さいながらも完全に温泉宿だな。コックもいないから宿と言うより休憩所ぐらいのノリだが」


 明るい内に早速と言う事で、タオルを取りに全力疾走。お湯の温度を確かめてからかけ湯をして温泉に入った。


 「温泉だぁ~」


 薪の火を気にしないでのんびり入れる温泉で、「ありがたや~、ありがたや~」と呆けた表情で呟く。


 「あんまり硫黄の匂いとか鉄さびの匂いとかしないな。だけど水道水を沸かした様な匂いもしない。えっと、お湯の中の成分がかなり薄いヤツを単純泉って言うんだっけか。この温泉も単純泉の一種って事なんだろうな」


 のんびり入るのは良いが、長湯はしてはいけない、と言う前世の父ちゃんの教えを守り、しっかり暖まってから身体を拭いていつもの作務衣を着る。


 「これからは毎日風呂に入れるが、出来れば寝る前に入りたいな。そのためには照明と電力だな」


 湯気の出る温泉の近くでは、機械類の劣化が気になるので、主に屋外用のLED照明を選択する。


 さらに聖域の一角を完全にソーラー発電所にしてしまう計画を立てる。ソーラーパネルは一時的な処置として地面にベタ置きにしていたが、コレでは地面からの湿気で傷みが早くなる。なので緩やかな屋根型の台座を作り、そこにパネルを並べる。骨組みは塩ビのパイプを使い、電動ドリルで穴を開けてジョイント金具でネジ止めするだけ、と言う簡単構造だ。


 十歳児にとってはこれだけでも重労働だったが。


 長いペグをこれでもかと打ち込んである。本来なら地面にコンクリートで基礎を作り、そこに埋め込む形で鉄パイプや鋼材の柱を使うべきなのだろうが、体力的な問題でここまでだった。後は聖域の穏やかな天気に期待するしか無い。


 一応の完成を見た。


 高さは十歳児のケーゴの頭よりも低いが、東と西向きで緩い傾斜の屋根型。ソーラーパネルの一枚一枚の間には間隔を開けて風が逃げるようにしてある。もしも雨が降ったら、雨宿りには適さない感じだ。

 電源コードは塩ビのパイプに通して地面の下に埋めてある。馬車が通ったぐらいでは問題無いはずだ。


 温泉宿の照明設備の設置も含めて五日かかったが、毎日風呂に入っていたので心の負担は少なかった。


 そしてその翌日に洗濯機をどうしようかと考えていた時に、次の客が来た。


 五人組だ。小柄だから女性か子供かと想像する。それでもこの森に入ってきたのだから、それなりに武力は持っているのだろうと予測できる。


 ケーゴは頭に巻いていたタオルを取って作務衣の懐にしまいながら、ゆっくりと五人組に近づく。


 五人組は全て女性の冒険者だった。初めは二十人程の男女混合のグループで、仕事によって配置を換えながら協力して仕事をしていた。だが、一つの仕事の失敗からグループ内の関係が悪化。借金は作らなかったが、蓄えは無くなり、一部の者は女性達に娼婦になって稼げとまで言い出した。それを断ると女性達を選んで厳しい仕事を強引に割り振り初め、今回の審判の森の調査を女性の五人だけで行えと言う話になった。


 そして冒険者ギルドの担当官の誘導で森まで来た。担当官は森に入るのを見届けた後は近くの村で数日待機してからギルドに戻ると言う。コレは探索や討伐に良くある形式だった。


 その後、五人の女性冒険者は、携帯食料も尽き、方向も見失ったまま彷徨い、十五日目に聖域に辿り着いた。


 「ここは審判の森なのか? いつの間にか森を抜けていた?」


 小柄な五人組の中では一番大柄な女性が迷うように呟く。大柄と言っても、ほぼどんぐりの背比べ状態だが。


 「見て! 神殿がある」


 「あ、誰か来る」


 「え? 子供? あんな軽装で。やっぱ森を抜けてた?」


 「いえ。周りは森で囲まれています」


 「おそらく、この場所の長の息子とかじゃないか? 一応失礼が無いようにしておこう」


 最後をまた大柄な女性が締めくくる。一応はリーダーらしき立場だろうと思われる。


 そしてケーゴが立ち止まって様子をうかがっている五人組に、普通に会話が出来る距離にまで近づく。


 「いらっしゃいませ。何でも屋、不思議屋へようこそ」


 「へ? あ、あ、何でも屋?」


 リーダーが呆けた声を漏らす。


 「はい。何でも、と言うと語弊があるかも知れませんが、大抵のモノはお取り寄せいたします。何かご入り用はございますでしょうか?」


 五人はその場に座り込んでしまった。


 「す、すまない。食糧も尽きて、魔獣から逃げる日々が続いたせいで力が抜けてしまった」


 「それはご苦労なさいましたね。どうですか? 食事などをご要望ですか?」


 「そ、それが、手持ちは無い」


 「おやおや。それでしたら魔獣の魔石を買い取らせて頂いてもよろしいのですが?」


 「魔石? 討伐証明用に抜き取ってきてあるが、あんなモンでいいのか?」


 「はい。街では二千で買い取ってくれたらその業者は相場を知らないのか、と言われる程とか。ですがここでは真の適正価格で取引させて頂いております」


 適正価格と言われても、どんな値段かも判らない。そう顔に出して、五人は互いに顔を見合った。


 「お持ちの魔石を一つ、見せて貰ってもよろしいですか?」


 「あ、ああ」


 リーダーは血に染まって汚れた小袋を取り出し、中から適当に石を取りだして渡してきた。


 ケーゴはそれを見ながらスマホを操作して鑑定した。


 【魔力トカゲの魔石 炎属性 属性が付いた魔石は珍しい 街での買い取り価格:五千 古物商ツブツブ屋での買い取り価格:二十五万】


 「コレは普通の魔石ではありませんね。他の魔石はお持ちでしょうか?」


 「あ、それじゃ買い取って貰えないのか?」


 「いえいえ。コレは炎属性が付いた珍しい魔石なので、コレ一つで十三万で買い取らせて頂きます」


 「「十三万!」」


 「普通の魔石でしたら、五万から八万が相場ですね。そう言った普通の魔石もお持ちですか?」


 「あ、ああ」


 「では、たっぷりと持ち合わせがあると言う事で、良いお取引が出来そうです。改めて、何でも屋、不思議屋にようこそ。先ずは店に入りましょう」


 ケーゴの案内で不思議屋と漢字で書かれた看板を掲げた店に入っていく。異世界の文字だから、ケーゴ以外は読めなかったが。


 店に入り、さらに通路を抜けて十人まで対応出来る部屋に通す。五人用の部屋でも良かったかも知れないが、ギリギリはよろしくないと言う判断だった。


 椅子を勧めて、「お売りできる魔石を準備して下さい」と言い残し部屋を出て給湯室へと向かう。


 まずレトルトのシチューを八人分、鍋に入れて湯を沸かす。他にロールパンを十個と瓶入りのジャムを三種類を三個ずつ、他にバームクーヘンをホールで二つ用意し、包丁で切り込みを入れておく。あとはスプーンとフォークを多めに。シチュー用の陶器の皿を準備し終わった所で、シチューが温まるまでの時間用に水とジュースと紙コップをトレーに乗せて運ぶ。


 「おまたせしました」


 飲み物を乗せたトレーを持って、ケーゴが部屋に入る。この部屋は戸を取り払って暖簾にしてある。


 「ああ、一応魔石は用意できた」


 「判りました。では査定している間、こちらをどうぞ。果実水と水になります。今、お食事を用意させて貰っていますので、その繋ぎとお考え下さい」


 そう言って、スマホの鑑定と計算機を駆使して合計していく。


 「はい。結果は七十二万となります。こちらでお取引頂けますか?」


 「そんなにいいのか?」


 「はい。あ、失礼。お食事の準備をして参ります」


 少し茹ですぎたか? と心配になりながらシチューを皿に開け、プラスの三人分を均等になるように五つに分ける。具のある汁物だから難しかった。こんな事なら全員分を二人分ずつ入れた方が楽だったと少し後悔。


 キャスター付きのワゴンに乗せて、コロコロとシチュー、パン、ジャム、バームクーヘンを運ぶ。


 後は、欠食児童の群れと言うか、親の敵のようなと言うか、雲霞のごとくというような状況が始まった。女性なのだからと見ない事にして部屋を出るケーゴ。


 モノの十五分で綺麗に食べ尽くされていた。


 「お粗末様でした」


 ケーゴが片付けながら言う。


 「い、いやいや。とんでもない旨さだった。どうやったらあんなに旨い食事が作れるんだ?」


 「私が作ったわけでは無いので言及は出来ませんが、その道のプロが長く研究して作り上げた、と申しておきましょう」


 「それは残念だ。是非自分たちでも作ってみたかったが」


 「ご希望でしたらお教えしましょうか? 少々お時間を頂く事になりますし、皆様の街では作るための材料が揃うかが判りませんが」


 「え? そんな事が? い、良いのか?」


 「ただ、砂糖やバター、生クリームを使いますので、街で材料が手に入るかどうか。それとトウモロコシと小麦粉ですが、小麦粉は選別が必要ですね」


 「砂糖か、確かに高いが手に入らない事は無いな。バターもあるが、生クリームというのは?」


 「バターがあるのでしたら、ミルクはありますね?」


 「ああ」


 「絞りたてのミルクから油部分を取り出したのがクリームです」


 「油部分を取り出す? 出来るのか?」


 「遠心分離機、えっとクリームセパレーターという道具があります。絞りたてのミルクを入れてハンドルを回せば、生クリームと油を抜いたミルクに分けられます」


 「その道具というのは手に入るのか?」


 「はい。もちろんです。三万程でお分けできますが」


 「それじゃ、作り方を教えてくれるのはいくらかかる?」


 「作り方の方は無料で結構ですが、道具代と材料費だけは頂く事になります」


 「えっと、全部で大凡いくらになるのかな?」


 「道具は五人それぞれが持ちますか? それとも全員で一つのモノを共有と言う形にしますか? 大凡ですが、道具も込めまして五人分で三十五万ですね。行っても五十万は行かないだろと」


 「先ずは一人分の道具を見せてもらえるか?」


 「かしこまりました。少々お持ち下さい」


 慎重だけど勇気を持っている感じがするリーダーに好感を抱きながら、ケーゴは一旦席を外す。


 まず用意するのはミリタリーの大容量バックパック。そこにステンレス製のボールをサイズ違いで六個セットで重ねて保管できるタイプ。同じく取っ手がとれて重ねて保管できる鍋。金網を三つと目の細かい振るいを二種類。おたま、ヘラ、泡立て器、調理用ハサミ、ピーラー、クリームセパレーター、四角いフライパン、丸いフライパン、蒸し器、包丁セットを入れていく。


 どうせ用意する事になるからと、五人分と、店にサンプルで置く分も購入しておく。


 そして小麦粉を、薄力粉と中力粉、強力粉の三種類用意する。さらに砂糖。グラニュー糖は? とも考えたが用意できそうも無いからどっちも砂糖を使う事にする。この砂糖も、この世界の砂糖とは違うと思われるが、甘さを基準に考えてもらえれば多少は融通が効くんじゃないかと期待する。


 卵はとりあえず十個入りを買った。本格的に料理教室が始まっても、一日三十個は必要無いだろうと予測する。


 「卵の取り扱いとかも聞かないとなぁ」


 中世の西洋だと、二週間前の卵とか平気で売っていたらしい、という話を聞いた事がある。せめて三日前ぐらいにしてもらいたい。


 「とりあえずこんなモンかな」


 そう呟いて、バックパックを台車に乗せて運ぶ。既に十歳児の体力では持ち運べない重量だ。


 「お待たせしました。お一人用の料理セットです。あ、すみません、重いので持ち上げてテーブルの上に乗せるのを手伝って頂けますか?」


 「あ、おう。って、本気で重いな」


 「料理教室で使う小麦粉なども入れたので重くなってしまいました。実際はもう少し軽くなるとは思います。本当に少しだけですが」


 「こんなに必要なんだ?」


 「例えば、皆さんが召し上がったシチューを作るだけでしたら、五分の一ですみます。バームクーヘンでしたら半分は必要ですが。とりあえず、お一人でお店を開く場合に必要な器具を取りそろえたらこうなった、と言う感じです」


 「店…」


 「ほ、本当に店が開けるのか?」


 「それは存じません。ですが、先ほど皆さんが召し上がった食事を作る事は出来るようにはなる可能性はあります。あくまで可能性ですが」


 「あ、あの食事なら…」


 「あのシチューだけでは、店としては難しいかも知れません。ですので、この量の調理器具を使い、あのシチュー以外の料理も出来る様になって貰わないと、と考えます。どうでしょうか? あのシチューだけにしますか? それとも、この調理器具を使いこなしますか?」


 「………」


 五人は黙り込んでしまった。


 もともと荒事専門の冒険者というのは、長く出来る仕事では無い。身体に不安を感じたら引退を考えなくてはならないのは当然だ。でなければ死が待っているだけである。


 五人もある程度金が貯まったら別の仕事を探すつもりでいた。冒険者として実績があれば、他の仕事に就く時に信用になるという事も大きい。


 旨い料理の作り方を教わる、と言うのは千載一遇のチャンスだった。普通は家庭料理の域を出ない食事を出す店に手伝いとして入る事になるか、一流料理人に弟子入りして下積みから始めなければならない。先ほど食べたシチューは、おそらく一流料理人で無ければ再現不可能だろうと考える。ならば、いきなり下積み経験を飛ばして技能を取得出来る事になる。


 実際に店を構え無くても構わない。だが、あのシチューを作れると言うは相当な財産になるはずだ。


 「どのくらいで取得できる?」


 「期間は十五日から二十日を想定していますが、取得までは保証できません。覚えられなかったらそれまで、となります。ですが、五人全員で同じ事を習い始めれば、お互いにフォローできるので覚えられなくは無いかと考えます」


 五人で覚えた事を補完し合えば五人全員が同じ事を出来る様になる。それ以降は五人がバラバラに店を持つ事も出来るだろう。他人に欺されなければ、だが。


 「その間の食事や寝る所はどうなる?」


 「屋根があるだけ、と言うモノですが、寝所に関しては簡易宿泊所があります。一人当たり一泊二百。五人で一泊一千になります。食事に関しては何もでません」


 「自分たちで審判の森から調達しろという事か?」


 「あ、いえ、食事を作る練習を行うのですよね? ならば、食材はありますので、練習で作ったモノを食べたり、別口で自分たちで作ると言う手も出来ます」


 「あ、そ、そうか」


 「それで、如何いたします?」


 五人はお互いに相談すると言う。そこでケーゴは一旦退席する。


 名目は飲み物とつまみの補充だ。


 『ど、ど、ど、どうしよう! 料理なんて他人に教えられる事なんて無い! どげんしよう? だうしやう、教えて、てぃちみぃほわぁいぃ』


 給湯室で天に手を上げ古き舞を舞いながらスマホを取り出す。


 「検索! この世界のずぶの素人に料理を教える手順!」


 そして、大量のテキストの流れを見る事になった。


 一方、五人組は。


 「私は一通り教わるのが良いと思うが、皆はどうしたい?」


 「損は無いと思う」


 「あの金額で、どれだけの道具が手にはいるのか…」


 「他に、武器とか買うのにいくらかかるかも聞いておくべきじゃ?」


 「あの料理なら財産にはなると思うが、他人に知られれば何も持っていないのと同じになる可能性も…」


 五人の話し合いは紛糾した。暫く頭を冷やす必要があるようだ。一度ケーゴが水とジュースとクッキーを持って行ったが、その時も決着は付かず、皆が黙り込んでじっと考えている状態だった。


 『その場の勢いとノリで決めるよりも、ちゃんと考えて決められるのは良い傾向だなぁ』


 ケーゴは再び離席して、給湯室で教育方法を読み込む。そして三十分程経過した後にまた五人組のところへと向かった。


 「如何ですか?」


 「あ、ああ。ちなみにだが、途中で教わるのを中止してもいいのか? 全員では無く、一人とか二人とか」


 「はい。お教えするのは無料ですから、教わるのも、教わらないのも自由にして結構です」


 「それから、料理以外は何かあるか? 武器とか…」


 「少々お待ちを」


 そう言って倉庫から、前の三人組の兵士にも出した剣鉈、コンバットナイフ、コンパウンドボウを一つずつ持ってくる。


 「こちらでしたら、料理の道具を差し引いた残りの金額で、五人分の購入が可能です」


 この五人も前の三人組と似たような反応を示す。


 「凄く便利そうだが、もう少し軽いヤツはあるか? その分、短くなっても構わないが」


 「こちらは剣鉈という部類になりますが、少し小さめとなりますと単なる鉈になります。今お持ちしますね」


 また退席して倉庫に向かうフリをしながら通販サイトを立ち上げる。そして持ってきたのは三種類の鉈だった。


 「こちらは竹割鉈。手首程度の太さの木材を打ち払うのが主な目的の鉈です。そしてこちらがククリ刀という、鉈としても、剣としても、投げナイフとしても使えるモノです。最後のこちらはウナギ鉈と申しまして、見たとおり先が引っかけるような感じで曲がっています。振って切るというよりは引っかけて引いて切ると言う感じになりますね」


 「い、いろいろあるんだなぁ。あ、値段は?」


 「重さもありませんし、一番初めの剣鉈よりも若干ですがお安いです。ですが、魔獣のいる森では、その分、危険が増すと考えてもよろしいかと」


 「うん。そうだな」


 五人はそれぞれ交換しながら重さやバランスを見ている。


 「これ、このククリ刀だっけ? これ、けっこう凶悪かも」


 一人がそう言い、他の者に渡して、振り具合を話し合っている。


 「人同士の戦いでも、戦いにくいと評判ですね」


 「うん。判るわー。きっと間合いがはっきりしないんだ」


 「ククリ刀の小さめのヤツを、ナイフ代わりにして、いざという時投擲して使う、と言う物もあります」


 「え? 見たい! 見たい!」


 この女性は武器にこだわりがある様だ。


 大型ナイフと同じぐらいの大きさだが、横から見るとくの字に曲がっているような刀身を持つククリ刀と言うよりククリナイフと言った方がしっくりくるサイズの物を、鞘付きで持ってくる。


 「これ良いわー。コレ欲しい!」


 かなりお気に召したようだ。


 結局、武器は補助の投げナイフの感覚で使えるククリナイフを五人分となった。鉈の方も欲しがった様だが、今使っている武器があるのでそれほど必要とは思わなかった様だ。


 このククリナイフが功を奏したのか、全員が料理の道具を買って授業を受ける事にした。


 そのためにケーゴは重要な準備をした。


 「料理をお教えする事になりましたので、重要な物を買って頂く事になりました」


 「え? 聞いてないが」


 「買って頂くのはコレです」


 と言って見せたのは、収縮して汗を吸ってくれ、肌触りも良い下着だ。下腹までガッチリ押さえるショーツにスポーツブラ。Tシャツとデニムのズボン。さらに茶色のデニム地の作務衣と胸元から膝上までを一枚の布地で裁断して紐を縫い付けたエプロンだ。下着類は十、普段着になりそうなシャツとズボンは三、作務衣は二、エプロンは五の配分で五人分。

 さらにバスタオルが二枚にハンドタオルが四枚、ハンカチが四枚に、布巾が十枚、サンダルが一足だ。


 ついでにと、櫛とブラシ、爪切りと手鏡を巾着に入れて渡す。


 「皆様には清潔を心がけて貰います。なので、刃物を持って魔獣と戦うと言う場合は別ですが、店などで料理を作る時には、常に綺麗な身支度を習慣づけて下さい」


 「お、おう…」


 冒険中は着替える事も命がけになるから、十日ぐらい同じ下着で過ごす事もある。街の中でなら毎日変える者もいるが、数日ならという者も多くいる。なので下着まで用意されてしまった事に、一種の恥ずかしさと驚きを感じた。


 「では、これからお風呂に入りましょう」


 「風呂?」


 「はい。これから向かう先に温泉があります。なので、毎日最低でも一回は入って下さい。では大きいタオル一枚と小さいタオル一枚、下着上下を一枚ずつ、そしてTシャツとズボンとサンダルを用意して下さい」


 渡された服から慌ててより分ける。


 「あとで簡易宿泊所に案内しますので、荷物はこのままで構いません。では行きましょう」


 どう反応して良いか判らない五人が慌ててケーゴの後を追う。


 「審判の森の中で風呂かよ」


 「おんせんって何です?」


 「後で神殿に行ってみたいんですが…」


 「常に清潔で、ってそこまでする事なのか?」


 「このタオルふかふかです。信じられません」


 五人それぞれが、それぞれの反応を示す。それに構わずケーゴは歩き、温泉宿に到着した。


 「ここが風呂のための建物です。ここにいる間はいつ使っても構いません。では、女湯にご案内します」


 通販で『男』『女』の大きめの暖簾を買って取り付けてある。色は青と赤だ。


 「現在聖域には我々六人しかいません。ですが念のために男女で分けてあります。温泉の入り方はご存じでしょうか?」


 「今まで川で水浴びか、桶に汲んだ水で身体を拭くしかやった事がないんだ。出来れば『入り方』も教えて欲しい」


 「判りました。では」


 と言って男湯の方に案内する。


 そして女性は女湯の方で同じ事をして下さいと断りを入れて、壁に作り付けられている棚に脱いだ服を入れていく。そして全裸になると、ハンドタオルを一本持って湯の方へと進む。


 「まだまだ子供だが、将来は楽しみですなぁ」


 と五人組の一人がニヤニヤと言う。他の四人もニヤニヤしてる。だが、五人とも実際の経験は無い。単なる虚勢だ。


 先ずは、と言いながら備え置きの木製の桶を一つ取って、温泉の湯を汲み上げる。そして身体に何回か掛けると、タオルを濡らして身体をこする。


 「こうやって、お湯に入る前に身体を洗います。お湯には他の方々も一緒に浸かる事になりますので、あまり汚さない事を念頭に置いて下さい。特に股間やお尻は念入りに洗っておきます」


 わざわざ、股間を洗うのを見せる。ケーゴにとっては特に重要だという認識だ。


 五人の女性達は、タオルでこすられて、あっちに向いたりコッチに向いたりするのをガン見していたが。


 「洗い終わったらもう一度湯を掛けて、お湯の方に浸かります。風呂のお湯にはタオルを浸けない、と言うのも守って下さいね」


 じっくり暖まったら、と言ってお湯を出て、桶でタオルを洗って良く絞り、身体を拭いていく。そして全裸のまま脱衣場に戻ると大きいタオルで身体をしっかりと拭いて、服を着ていく。


 「風呂上がりに下着を交換するのが最も気持ちよく過ごせますね。服の交換などはお好みで、ですが」


 五人はにやけたまま頷いている。じっくり見てたけど、しっかり聞いていたかは疑問だ。


 「では私は店に戻りますが、皆さんは女湯の方でしっかり汚れを落として下さい」


 その後、女湯の方で女同士の喧騒が巻き起こるが、ケーゴはそれを知る事は無かった。


 一時間と少し。店にホカホカと茹で上がった五人が戻ってきた。


 「お風呂は如何でした?」


 「あれは良い物だ」


 「長湯しますと疲れる上に体調を崩す危険もありますので気をつけて下さいね」


 「それにこの下着も凄い。胸も動いてしまうのを押さえてくれているのに苦しくない」


 「残念ですが、この布地の織機などは、当店でも取り扱っておりません」

 『たぶん工場用の注文品しかないんだろうな。通販じゃ取り扱っていなかった』


 「それは残念だ」


 「ですが製品としてのそれは取り扱っておりますので、ご入り用でしたら承らせて頂きます」


 「そうなのか。では、頼みたいのだが」


 「他の種類もございます。ですが、それらは胸の形に合わせる必要がありますので、直接胸に合わせる必要がありますが、如何いたしましょう?」


 今話しているリーダーが他の四人と顔を見合わせる。同じタイプの物でも良さそうだが、別の物もこのように気持ちよく着けられるのかと期待が湧いてくる。


 「えっと、それは貴方が、あ、そう言えば名前を聞いていなかった。私たちも自己紹介をしていなかったな」


 「そうでした。申し訳ございません。私、不思議屋の店長を勤めさせて頂いているケーゴと申します。ここには私しかおりませんので、単に店長とお呼び頂いても構いません」


 「ケーゴ店長か。私はアミナ。こいつはベルダ。そしてシアラとダイナとエリスだ」


 「よろしくお願いいたします」


 「それで、店長が胸を見るという事か?」


 「はい。ですが男に胸を見られるのがお嫌でしたら、仕方ありませんが諦めるという事に…」


 「別に店長が邪な気持ちで見るという事も無いのだろう?」


 「いえいえ。私も、おっぱいを目の前に見たら、むしゃぶりつきたくなりますよ」


 「え?」


 そこでまた、五人が顔を見合わせる。まさかそんな言葉が出るとは思わなかったらしい。だが、ここで胸元を押さえて拒絶の姿勢を取る事だけは我慢したようだ。


 「て、店長も男だという事かな?」


 「はい? 男でも女でも、生まれて直ぐ、おっぱいにしゃぶりつくと言う本能は持っていますよね? 必要無くなってからは、おっぱいをしゃぶりたいとは言えなくなって、忘れがちになると思いますが」


 「あ、あ、赤ん坊の頃だけ、じゃないのか?」


 「どうでしょう? 乳離れの時に遠ざけられる躾で、むやみにしゃぶりつく事は無くなりますが、本能としては残っていると思われます。私にはしっかり残っていると思われます。女性に対して失礼に当たりますから普段は決して言わないと心に決めていますが」


 そう言って他の四人の女性を見る。するとエリスが。


 「あ、私、判る。変な意味じゃ無くて、純粋にベルダのおっぱいしゃぶりたくなる時があるよ。特にお腹すいてる時とか」


 ベルダは五人の内では一番大きい。


 「おっぱい吸われても乳は出ないぞ」


 ベルダも当たり前の様に返す。そしてリーダーのアミナが誰もがおっぱいを欲すると言う話にとりあえず納得して言った。


 「はぁ。そう言う物かも知れないな。確かにおっぱいなんて、赤ん坊に乳を与えるために膨らんでるんだからなぁ」


 「子作りする時に男に弄られるのとは違うかも知れませんけどね」


 「「「「「知ってたのかよ!」」」」」


 ケーゴの最後の台無し台詞に五人がハモった。


 「こんな形とは言え私も男です。まだ子を成す能力はありませんが、女性に対しての特別な感情は普通に持ち合わせています」


 「えっと、これぐらいの頃って、子作りの事とか考えてたっけ?」


 ケーゴの発言に五人が動揺している。顔を赤らめている者もいる。


 「子供が出来ないんだったら、一発やってみっか?」


 と悪戯っ子の表情でダイナが身を乗り出してきた。


 「どんなタイミングで精通が始まるのか判りません。出来ないと高をくくっていたら子種が送り込まれていた、などという状況になる可能性もあります。ダイナさんがお嫁に来てくださるというのでしたら別ですが、無謀な冒険はお薦めしません」


 「お嫁にかぁ。それも良いかも~」


 更にふざけるダイナ。


 「大変ですよ? 何しろ私、ハーレムを作るつもりですから」


 「「「ハーレム?」」」


 「まさかハーレムと言い出すとは。どんなマセガキだよ」


 ベルダが呆れたように言う。


 「私をこの地に送り込んだ者が、是非ともハーレムを作り、子供をバンバン作りまくれ、とおっしゃったので」


 「それって、親じゃないんだ?」


 「育ての親になるのかな? いや、生みの親? 違うような、違うと言ってよ、と言うか、声はすれども姿は見れず、ホンに貴方は…、なようなような」


 などとブツブツと呟くケーゴ。まさか創造神ジワンとは言い出せないようだ。言うつもりも無いようだが。


 「あ、失礼しました。私のハーレムの話はどうでも良いですね。で、おっぱい、お見せできます?」


 「ならアタシが見せてやるよ」


 ダイナがケーゴの前に座り直し、Tシャツを脱いでスポーツブラも躊躇無く脱ぎ捨てる。現れたおっぱいは小ぶりだけどしっかりと膨れて、下乳はあんパンを思わせるカーブを持っている。つんと斜め上を向いている乳首が特徴的だ。

 ダイナは「どーよ!」と胸を張って堂々と突き出している。


 内心の嬉しさはひた隠しにして、巻き尺を取り出してダイナに抱きつくように腕を回す。


 「え? え? ちょ、ちょっと、店長?」


 そこでダイナは慌てたが、構わずに巻き尺を引いていく。


 「胸回りを測りますので、普通にしててください」


 「な、なんだ、先に言えよ」


 かなり残念そうな顔でため息を吐いた。


 「アンダーはOKです。次はトップを測りますね」


 そして巻き尺の位置を少し上にずらして、手前の交差位置を乳首の高さに合わせて、ほんの少しだけ食い込ませて計測する。


 それをダイナ当人もだが、他の四人もじっくり見つめてる。


 「はい。計測は終わりました。後はカップの形と位置は直接合わせて見ましょう」


 そして席を立って、倉庫に向かい、木製のトレーにトップとアンダーの数字だけは合わせた、いくつかのブラを買い、乗せていく。


 「お待たせしました」


 ケーゴが戻った時、ダイナはまだトップレスのままだった。


 「こちらを見てください。おっぱいの形になっているのが判りますか? この形が合わないとおっぱいが窮屈になります」


 ケーゴはカップ付きのブラをダイナに渡す。ダイナと四人は興味深く見ている。


 「じゃあ、ちょっと合わせて見ますね」


 そう言って、ブラの片方だけを下から押し上げるように押しつけた。


 「どうですか? 特に痛いとか引っかかるとかが無ければ、ちゃんと装着してみますが」


 「うーん。まぁ、よく判らないからやってみて」


 ダイナから承諾が来たので、肩紐を通させてブラをおっぱいにあてがい、後ろに回ってホックを閉めた。


 「では、前屈みになってもらえますか?」


 「え? こうか?」


 ブラを着けていなければ、おっぱいが真下にぶらんと垂れ下がる形になる姿勢だ。そうさせておいて、ケーゴはブラとおっぱいの間に手を差し込み、脇の下の肉をブラのカップの中に収まるようにすくい上げる。


 「ちょっ! ちょっ! ちょっ!」


 焦ってダイナが声にならない声を上げるが、構わず反対側の方も同じ処置をする。


 「はい。起き上がってください」


 「あ、ああ」


 ブラジャーをきちんと装着できたダイナが立っている。


 「どうですか?」


 「胸が軽い」


 「え?」


 胸が大きいいベルダが反応した。


 「あー、腕を振り回すのには向いてないけど、普段の生活の中なら、こっちの方が楽になりそうだ」


 軽く体操のような動きをしながらダイナが言う。その姿を四人が追った。


 「いきなり手を突っ込まれた時は焦ったけどな」


 「やり方さえ判れば、ご自分でも出来ますよね?」


 「ああ、おっぱいって、脇の下にまで膨らみが広がってるんだよな。それを引っ張ってこいつの中に無理矢理押し込むって事だよな」


 「無理の無い範囲でお願いします」


 「でも、こいつがあれば、さらしを巻かなくて済むな」


 「あ、あの、店長。私もそのカップというのが欲しいのだが」


 ダイナのご機嫌な態度のせいで、胸の大きなベルダが懇願してきた。胸で苦労しているようだ。


 「ではまず寸法を測りましょう」


 「判った」


 そしてベルダもトップレスになって、トップとアンダーを測る。その結果を持って倉庫へ。


 同じくトレーにベルダのサイズのブラを乗せて戻り、ベルダに着けていく。


 「おっぱいをカップに入れるコツは判りますか?」


 「ちょ、ちょっと自信が無いから、やって貰っても構わないか?」


 「判りました」


 「ひゃっ」


 ベルダの奇声と共に装着が終わった。


 「どうですか?」


 「本当だ。スポーツブラと言うのも楽だったが、コレは本当に収まるべき所に収まっている、と言う感じだな」


 ベルダも納得した所で、他の三人もカップ付きブラを試す事になった。その寸法を測っている最中、ダイナがブラの胸をケーゴの頭の後ろに押しつけて悪戯している。


 「あの。嬉しいんですが?」


 「嬉しいんなら良いじゃん」


 「そうですね」


 そして採寸を再開。皆、このやり取りに困った笑い顔を見せる。


 「ほらほら、店長~。おっぱいですよ~」


 ダイナはとうとうブラを取って、生乳を押しつける悪戯に移った。


 「ダイナさん。乳首弄っちゃいますよ?」


 少し邪魔に思ったケーゴが追い払う意味で言った。


 「どうぞ~」


 つままれて引っ張られるぐらいだろうと、笑って受けるダイナ。


 そこで、ケーゴはダイナの乳首のてっぺんを人差し指の表面で、触れるギリギリの位置ですーっとこすった。


 「ひゃん!」


 思わず胸を押さえて座り込むダイナ。


 ケーゴは十歳児の身体だが、一ヶ月ほど前は三十二歳のおじさんだった。短い期間だったが恋人と付き合った事もあるし、たまに行く風俗が最近の唯一の息抜きだったという、涙あふれる物語もある。つまり、乳首のいじり方のバリエーションは、いくつも経験済みだ。


 「寸法も測り終わったので、ブラを持ってきますね」


 倉庫に行く冷静なケーゴよりも、驚いた表情で胸を押さえているダイナが気になる四人だった。


 「ダイナ。どうしたんだ?」


 「びっくりした」


 「店長におっぱい触られたんだよな?」


 「うん。乳首を本当に軽く、すーって指先で」


 「それだけ?」


 「うん。それだけ」


 「「「「………」」」」


 「ハーレムの第一号にしてくれるかな」


 「「それほどか!」」


 ケーゴが戻り、残りの三人にもおっぱいの脇肉をブラのカップに押し込むという仕事を済ませ、五人には同じ寸法だけど、カップの形や位置が違うブラを試して貰う。


 目の前でブラの生交換が次々に行われる現象に、ケーゴはスマホの録画を始めておいて良かったと心の底から感謝した。


 ケーゴのスマホは、カメラがケーゴの目を使うので、見た目の状況をそのまま録画してくれる。


 動画を録画すると言う概念は無いから、見られても判らないだろうが。


 「でも一応念のため。検索、この世界の物で動画を撮影して残しておける魔道具」


 こっそりとスマホに語りかけると直ぐに返答が返った。


 【思い出の水晶:一つで十分程の録画と録音が可能 記録と再生に魔力が必要 古物商ツブツブ屋にて八十万で販売 街ではオークション物になり平均二百五十万】


 「高!」


 十分の録画に二百五十万かよぉ、と思わず声に出てしまった。


 「店長? どうした?」


 ダイナが聞いてきた。


 「いえ。沢山のおっぱいが乱舞するこの光景に感激して、思い出の水晶を落札しておけば良かったと、少し後悔しておりました」


 そこで五人は、自分たちが店長の前でおっぱいをさらけ出していた現実に気がついた。


 「店長~。あたし達、店長から金取っても良いのかな?」


 「貴方方がご自分たちを商売女であると言えてしまうのであればご自由に」


 「うぐぅぅぅ…」


 店長の返しにグゥの音だけは出るようだ。


 「それよりも、どのカップが良かったですか? 不満が残るモノとかありましたか?」


 そして五人は着けていたブラを外して前に出した。店長に乳首が見えていても隠す事無くスポーツブラにゆっくり付け替える。


 「では、このサイズで見繕ってきますね。大凡何枚ぐらいお入り用ですか?」


 「えっと、ちなみに、一ついくらぐらいかな?」


 「平均で一つ三千と言う所です。二千の物もあれば四千の物もあると言う感じで」


 「うーん、高いんだか、安いんだか。値段でどんなブラがあるのか見れるか?」


 「はい。見本をお持ちしましょう」


 シンプルな物、プリント柄、レースで装飾、がっしりした物、レースで乳首部分が透けている物などなど、色々な物を持ってくる。ケーゴにしてみれば、良い目の保養になったからサービスみたいなモノだ。


 そして五人の女性の目の色が変わった。


 「服着るから誰にも見られないんだよなぁ?」


 ゴージャスなレース編みのブラに目が釘付け状態でアミナが呟く。


 「やはり、男に脱がされた時に見られる下着としましたら、古い生地のシャツよりは、と言う事でしょう」


 ケーゴのセールストークで五人の鼻息も荒くなった。


 「店長はどんなのが良い?」


 やはり男の意見は重要なようだ。


 「出会って始めて脱がす時なら、シンプルな方がよろしいでしょう。肌を重ねる事に慣れてきたら、少し大人ぶっても良いかも知れません。そして少しマンネリ気味になったら、過激なモノで攻める、と言うのはセオリーでしょうか」


 五人がそれぞれ、なるほど、とか、そう言うモノ? とか呟いている。


 「ちなみに、ブラとショーツがお揃いになったセットというのもあります」


 「「「「「なんだってー!」」」」」


 「素晴らしいリアクションでした。二十パーセントオフのサービスタイムが始まります」


 そしてバーゲン会場になった。


 下着類を入れる袋を注文し、落ち着いたのはそろそろ日が陰るか、と言う時間だった。


 「ああ~、時間が押しちゃいましたね。そろそろ、夕飯を作って食べて寝ちゃいましょう」


 昼前に食事も取ったし、風呂にも入った。色々衝撃的な事が起きたが、男に胸を見られる事ぐらいは冒険者の仕事の中でまれにある出来事だし、暫くぶりのゆっくり出来る状況では、とにかく眠りたいだろうと考えた。


 「では、台車を五台用意しますので、それぞれの荷物を乗せて移動しましょう」


 調理器具セットはバックパックに入れて既に全員の分を準備してある。そこに、風呂前に用意した服と風呂後に用意した下着などを乗せて、それぞれに押させて簡易宿泊所に向かう。


 「井戸と炊事場とトイレがあります。トイレでは用足しが終わった後に備え付けの紙を使って汚れを拭き取り、そのまま穴の中に捨ててください。トイレの後にしっかり手を洗うのを忘れずにお願いします」


 簡易宿泊所の周りの施設には、LED照明が設置してある。施設ごとに一つのスイッチでオンオフの切り替えが出来るので、説明しながら明るくしていく。


 まだ周囲は明るいが、LED照明の明るさに五人は驚いている。


 「灯りの魔道具か。見た事のある灯りの魔道具よりも明るいな」


 「灯りの魔道具を見た時は、蝋燭よりも明るいので驚いたが、コレはそれ以上だな」


 「これ買えないかなぁ? 森の中で使えば便利じゃね?」


 「いや、明るすぎる。魔獣を引き寄せる事になるぞ」


 「じゃあ、街でなら?」


 「盗まれないように一日中監視しておく必要があるかも」


 「あぁ~…」


 簡易宿泊所に入る。壁を取り払って柱が林立する大部屋という感じで、六畳ほどの板の間が高さ四十センチほどで設置してある。大部屋の中央に十字の土間の通路があり、その四隅に島のような板の間があるワケだ。


 「申し訳ありません。寝床にするためのモノを用意してありませんでした。少々お待ちください」


 きびすを返すと店に入り、急いで寝具のカテゴリーから厚めのマットレスを選ぶ。同時に敷きパッドも加える。ゆったりサイズのTシャツが脛の位置まで伸びた寝間着をデザイン違いで十枚も。そして夕飯用に徳用パックのドーナツとオレンジ、アップル、野菜のジュースも追加。


 台車にマットレスと敷きパッドを乗せて簡易宿泊所へ走る。


 「皆様が寝る場所に、まずはこのマットレスを敷いてください。その上にこの敷きパッドを乗せます。このマットレスと敷きパッドは、この簡易宿泊所の設備になりまして、次にこの宿泊所を利用する方が使う事になります。なのであまり乱暴な使い方はご遠慮ください」


 「つまりコレがベッド代わりって事か」


 「何コレ! ふかふか! この上に寝るの?」


 「え? マジか?」


 そして再度走って、今度は寝間着と夕飯を取ってくる。


 「こちら、寝間着としてお使いください。一人二枚でお好きな柄をお選びくださって結構です。私の方の不手際で用意に時間がかかってしまったお詫びに、サービスで無料とさせて頂きます」


 「寝間着かぁ。貴族みたいだな」


 「ここでは飛び起きて緊急事態に対処しなければならない、と言う状況にはなりませんので存分にお寛ぎ下さい」


 「確かに宿屋でも気が抜けねぇからなぁ」


 「それと、本来なら夕飯も皆様に作って頂くつもりでおりました。ですが不手際で遅くなってしまいましたので、簡単なモノですが、こちらで空腹を満たしてくださいますようお願いします」


 そう言って、空いた板の間にドーナッツとジュースと紙コップを置いていく。


 「ああ、それから、寝る時にはブラは外すか、スポーツブラにした方がよろしいですね」


 「確かにあのカップとか言うヤツは、寝るのには窮屈そうだしな」


 「はい。起きている普段であれば、あのカップの方がおっぱいの形が崩れるのを防いでくれますから、着ける方が良いのですが」


 「おっぱいって崩れるのか?」


 「はい。年を取った時、張りのあるふくよかなおっぱいが、水の抜けた革袋のようにダルンとしてしまうのを、少しは防いでくれます」


 「「「「「!」」」」」


 その時、五人の女性達の間で鋭い殺気が迸った。


 「その話。詳しく!」


 ベルダが身を乗り出す。


 「ブラはおっぱいを下から支え上げてくれますよね?」


 そう言って、ケーゴは無いはずのおっぱいを想定して、両手で持ち上げる動作をする。それを見て五人がコクコクと頷く。


 「それが無いと、当然ですがおっぱいは下に落っこちようとします。つまり、膨らんだ部分が下に引っ張られるわけです」


 おっぱいを持ち上げる形にした両手を上下させる。それから、右手で左の肩甲骨の辺りを指さす。


 「首から肩のこの辺りの筋肉や肌が、おっぱいに引っ張られるんですね。で、本当に少しずつですが伸びてしまいます」


 左の肩甲骨の辺りから左の乳首の位置ぐらいを指先で往復させる。


 「おっぱいの中身って、初めは少し堅いですが、大人になり、成長が止まる頃から少しずつ柔らかくなっていきます。柔らかく張りが無くなって、上から引っ張り上げる線も伸びたら、結局ダルンとしてしまうと言うワケです」


 「す、凄く納得した。で、カップがそれを防いでくれるのか」


 「下に伸びるのを防いでくれるだけです。ですが、毎日の積み重ねは大事ですね」


 「なら、寝る時も着けて置いた方がいいんじゃないのか?」


 「窮屈で寝づらいとか、ブラの寿命を縮めてしまうという点がありますが、それに目をつむれると言うのなら着けていても良いですね。ですが、せいぜい寝返りで左右に揺れると言う程度ならスポーツブラで十分でしょう」


 ようやくベルダの質問が終わった。やっぱ気にしているみたいだが、他の四人のためにあえて聞いたと言うのもあるのだろうとケーゴは思う事にした。


 「それではお疲れでしょうから今日はここまでにしておきましょう。明日からお料理教室の始まりですね。ではおやすみなさい」


 「「「「「おやすみぃ」」」」」


 五人の返答を聞いてケーゴは店に戻った。今日出した物の整理が残っている。


 灯りを点け、ゴミになる物を片付け、紙のノートを開いて帳簿的なモノを書き込んでいく。途中、忘れた内容は記録映像を再生させて数字を確認。


 おっぱい画像の所で作業が中断したのはご愛敬と言う事にしてくれとケーゴは天に祈った。創造神ジワンなら応援してくれるだろうけど、とも思ったが。後で写真画質の印刷機を買おうと思ったのはご愛敬で済まないかもと思ったが。


 そして明日からの料理教室の進行を考える。


 先ずは小麦粉を練る事からはじめさせるが、パン、うどん、ケーキ用に使い分けられている小麦粉をしっかり認識して貰わないとならない。

 特にパンは主食だろうから、柔らかいパンや惣菜パンの作り方を見せるのは重要だ。イースト菌の確保の方法からが良いだろう。どこにでもある菌だが、しっかり認識して採取できる様になれば困らないはずだ。


 改めてこの世界の事を知らない、と言う事を思い知らされる。そこでスマホを取り出す。


 「検索、この世界の一般的な食事事情」


 そしてテキストと画像が流れる。かなりの量だ。


 シチューというのは一般的では無く、主にスープだけのようだ。味付けは塩のみ。酪農家では牛乳スープみたいなモノもあるらしいが、一般的ではない。スープの具は野菜が一種類から三種類のみ。干し肉を使った場合は贅沢な部類に入るようだ。屠殺場兼肉屋では、黒くなるか、匂いが出るまで売り場に残り、その具合で値段が変わる。良い部分の肉は契約してある料理店などに優先されるが、コレは仕方の無い話だ。


 パンは鏡餅みたいに丸い。中はともかく表面はかなり堅く、スープに浸けないとかなり食べづらいようだ。他は小麦粉を水で練って焼いただけのパン? パンというか小麦粉焼きか? 屋台でこの小麦粉焼きに塩抜きした干し肉を挟んで軽食として売っているようだ。軽食とは言っても、コレ一つで一日を過ごしている者もわりといるらしい。


 「検索、この世界、いや、ローワン王国周辺で手に入る調味料とその解説」


 出てきたテキストは塩、香草関連、種や豆もある。その中から使えそうなモノをピックアップしていく。


 「検索、ローワン王国周辺で重曹を入手する方法」


 【薬を扱う店で胃の薬として販売 街での販売価格:薬匙一杯二百五十】


 通販サイトで見ると一キロで七百とあった。流通事情や需要も関わっているから、二百五十でも良心価格なのかも知れないと感心する。


 「検索、この世界でのジャガイモの入手方」


 【なし】


 ふと気になって検索したらこのような結果が出てケーゴは机に突っ伏した。


 「検索、この世界にあるジャガイモと似たような物」


 【トローモ 食用 一般的な農家で作られている 街での販売価格:一キロ二千】


 ふぅ、と息を吐いて落ち着く。画像も出して見るが、ジャガイモによく似ていた。気になって人参、タマネギ、アスパラ、大豆、ウリ、トウモロコシと、似たものが無いか次々と検索していく。


 「人参はあるが、あまり甘みは無さそうだな。タマネギもネギよりは丸っぽいって感じか、全体的に品種改良が進んでいないと見るべきだな」


 ケーゴはさらに片栗粉に似たもの、コーンスターチに似たもの、揚げ物油に利用できる物、と言う感じで検索していき見つけた端から一キロずつ取り寄せる。その際、手回し式の油絞り器が売っている事にも気付いた。


 「油がたっぷりあれば揚げ物が出来るよな。でも機械が無い頃の油って高かったんじゃ無いのか?」


 検索してみたら、やはりこの世界でも油は高かった。油を使う必要がある料理屋などでも、月にコップ一杯程度、と言う利用率だった。


 「検索、この世界で一般的に油取りに利用されているもの」


 あえて果実とか種子などとは入れず、大雑把にものという表現にした。その甲斐あってか望んだ回答があった。


 【主なものは獣脂 猪系統に限らず色々な獣や魔獣の背脂を混ぜて販売している 種子では油草 ユイカの花の種 コロベナの種が食用 灯油用で利用されている】


 基本的に植物の種からはどれでも油がとれるが、風味と量が違う。そのコストパフォーマンスで勝ち残ったのが油草、ユイカ、コロベナというワケだ。


 料理教室の教材だ、と言いながら獣脂、油草、ユイカ、コロベナを五キロずつ買い、手回し式の油絞り器も五つ買った。

 そして油を溜めておくためのガラス瓶や、密閉できる容器関連を買い漁る。


 さらに今の季節に手に入る果物を検索し、野いちごみたいなルブロという果実やプラムみたいなモズスという果実、それにレモンによく似たキーラという果実も購入。


 次にパン釜を作るための石材を検討。石の板材で積み木形式のボックスを作り、両脇をコンクリートブロックで押さえて倒れないようにしておけばと考える。先ずは構造。時間があれば耐熱レンガとモルタルで、一日がかりで作ってもいいかも知れない。


 『本気で、なんちゃって料理教室、だな。あまり誤解をされないように説明しないとならないな』


 料理教室を開く資格がある程知識が無いのに、俺は何をやってるんだか、と自己嫌悪しながら石材を人数分取りそろえて、終了。

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