♥ ラムネ売りがやって来た 3
──*──*──*── 宿屋街
──*──*──*── 彡夊亭
馬車の主から受け取った紹介状と小切手を持って、セロがフロントでチェックインをしてくれている間、オレは食堂に居た。
食堂は意外にも賑わっている。
オレの気の所為なのか、人相の悪い宿泊客や柄の悪そうな宿泊客が多いように見えるんだけど……。
オレは空いてる席がないか探して食堂を歩く。
どうやら空いてる席は無さそうで、相席するしかないみたいだな…。
そんなわけで、オレは1人で席に座っている人を探してみた。
マオ
「 あっ──、彼処にするかな 」
オレは幸薄そうな男が1人で座っている席へ向かって歩いた。
マオ
「 ──こんにちは。
席が無いんだけど、相席させてもらってもいいかな? 」
初対面の相手だから、なるべく下手に出て話し掛けてみた。
幸薄い男
「 …………あぁ?
まぁ…いいけど…。
どうぞ… 」
マオ
「 ──本当?
良かった!
助かるよ、有り難う! 」
幸薄い男
「 どうも… 」
目の前に居る幸薄そうな男は口数が少ないのか無口みたいだ。
オレは厚意に肖って椅子に腰を下ろして座る。
マオ
「 オレはマオ。
今日、≪ カグザークの街 ≫に来たばかりなんだ。
カグザークは宿泊施設が多いね。
此処に着く迄に1時間以上も掛かったよ… 」
幸薄い男
「 あぁ…そうだな。
何処の≪ 街 ≫も宿泊施設は多いらしいからな… 」
マオ
「 へぇ…そうなんだ? 」
幸薄い男
「 ……ここいら一帯の宿屋を取り壊して《 宿屋街 》を宿泊施設だけにする計画も進んでるらしいからな… 」
マオ
「 え…そうなの?
宿屋を取り壊して宿泊施設だけにするなんて、横暴だなぁ… 」
幸薄い男
「 ……マオ、だっけ?
1人で旅をしてるのか? 」
マオ
「 ううん。
連れが居るよ。
オレは連れに個人的に雇われた専属護衛なんだ 」
幸薄い男
「 はぁ……護衛ねぇ?
子供なのに凄いな 」
マオ
「 ……オレ、これでも成人してるんだ…。
もう20歳だよ… 」
幸薄い男
「 …………そうなのか?
見えないな…。
……あぁ、オレはカナミダって言うんだ。
旅の薬師だ 」
マオ
「 薬師?? 」
カナミダ
「 知らないのか?
個人で薬剤を調合して売り歩く薬屋だ 」
マオ
「 へぇ、そうなんだ?
じゃあ、カナミダさんはフリーの調合薬剤師なんだ? 」
カナミダ
「 そうだな… 」
マオ
「 カナミダさんは1人で旅をしてるの? 」
カナミダ
「 いや…流石に1人で旅は出来ないな…。
勇者と旅をしている 」
マオ
「 勇者?? 」
カナミダ
「 ≪ 街 ≫には勇者ギルドがあって、≪ ウェッティシュ帝国 ≫ではSランクの冒険者は勇者ギルドで登録する事が義務付けされているんだ 」
マオ
「 そうなんだ…。
カグザークには勇者が居るんだね 」
カナミダ
「 勇者は待遇が良くなるからな。
冒険者は勇者になる事を目標にしている 」
マオ
「 へぇ〜〜。
勇者ギルドかぁ。
行ってみたいな…。
勇者って何をするの?
魔王でも倒すの? 」
カナミダ
「 魔王?
ハハハ──、何だいそれは?
魔王って……絵本の読み過ぎだな…。
勇者がするのは亜人類狩りだ 」
マオ
「 えっ…亜人類? 」
カナミダ
「 あぁ…≪ ウェッティシュ帝国 ≫の中に “ 魔境 ” って呼ばれる所があるんだが、亜人類が現れて人類狩りをしているんだ。
勇者は帝国内を旅しながら亜人類を狩るのさ 」
マオ
「 …………魔獣や怪物じゃないんだ… 」
カナミダ
「 それは冒険者の役目だな 」
マオ
「 ふぅん……役割が違うんだ…。
カナミダさんは勇者と一緒に帝国内を旅してるんだね 」
カナミダ
「 まぁな…。
帝国内では薬師は重宝される職業さ。
勇者や冒険者と旅をしていると命懸けだけどな… 」
マオ
「 そうなるよね… 」