オレは守護衛士のマオ・ユーグナル。
オレは今、≪ ウェッティシュ帝国 ≫の中にある≪ カグザークの街 ≫に来ている。
観光で立ち寄ったわけじゃなくて、道中に素行が悪過ぎて冒険者を剥奪されて盗賊に転職した奴等から襲われていた馬車を助けた所為で此処に居いる。
“ 助たすけた所せ為いで ” ってのは言こと葉ばが悪わる過すぎたかな…。
ガッツリと武ぶ装そうした盗とう賊ぞく達たちに無む防ぼう備びな馬ば車しゃが襲おそわれているのを見みたら、善ぜん意いの親しん切せつ心しんから助たすけに走はしってしまうのは、これはもう人ひととして致いたし方かた無ない事ことだとオレは思おもう。
オレだって、戦たたかう術すべを持もたなくて…丸まる腰ごしだったら、盗とう賊ぞく達たちに襲おそわれている馬ば車しゃを助たすけるなんてしない。
だけど…オレは戦たたかう術すべを体たい得とくしているし、戦たたかう為ための武ぶ器きも装そう備びしている。
守しゅ護ご衛えい士しのオレは職しょく業ぎょう柄がら、戦たたかい慣なれているし、かなりの数かずの極ごく悪あく人にん達たちを斬きり捨すてて来きている。
オレの両りょう手ては既すでに他た人にんの血ちで汚よごれてしまっているんだ。
そんなわけで、見みて見みぬフリなんて出で来きるわけがないんだ。
オレは何い時つもの癖くせで、一いっ方ぽう的てきに襲おそわれている馬ば車しゃのピンチに駆かけ付つけて、完かん全ぜん武ぶ装そうした盗とう賊ぞく達たちを1人りでノックアウトさせた。
個こ人じん契けい約やくをして、オレが護ご衛えいしている雇やとい主ぬしの吟ぎん遊ゆう大だい詩し人じんのセロフィート── オレは親したしみを込こめて “ セロ ” って呼んでる ──に言いわれて、盗とう賊ぞく達たちは殺ころさないで生いかしている。
セロから「 盗とう賊ぞく達たちを〈 合ごうキ成せいメ獣じゅうイラ 〉の餌エサにしたいです 」と言いわれたからだ。
オレが馬ば車しゃの中なかに居いる人ひと達たちの安あん否ぴを確かく認にんしている間あいだに、セロは古こ代だいエンシェント魔ま法ほうマジックを発はつ動どうさせて、気きを失うしなって倒たおれている盗とう賊ぞく達たちを回かい収しゅうした。
盗とう賊ぞく達たちが身みに付つけていた装そう備び品ひん等などは1つ残のこらず、セロが戦せん利り品ひんとして回かい収しゅう済ずみだ。
毎まい度どの事こと、ちゃっかりしてるよ…。
助たすけた馬ば車しゃに乗のっていた人ひと達たちから、≪ カグザークの街まち ≫迄までの護ご衛えいを泣なきながら頼たのまれたから、致いたし方かた無なく護ご衛えいを引ひき受うけたんだ。
そんなわけで、セロと一いっ緒しょに馬ば車しゃを衛まもりながら≪ カグザークの街まち ≫へ向むかって歩あるいたんだ。
≪ カグザークの街まち ≫に入はいる為ためには幾いくつか面めん倒どうな手て続つづきをする必ひつ要ようがあるらしいけど、馬ば車しゃの主あるじの厚こう意いもあって、簡かん単たんな手て続つづきをするだけで済すんだのは有あり難がたかったと思おもう。
まぁ、どうせセロが〈 テ原げん質しつフの源みなもと 〉を構こう成せいした身み分ぶん証しょう明めい証しょうを使つかえば、何なんの苦く労ろうもせずに甚いとも簡かん単たんに≪ カグザークの街まち ≫へ入はいる事ことが出で来きるわけだけど…。
馬ば車しゃの主あるじとは、《 ギルド街がい 》の前まえで別わかれる事ことになった。
どうやら商しょう人にんギルドに用よう事じがあるみたいらしい。
オレがセロと一いっ緒しょに《 宿しゅく屋や街がい 》へ行いく事ことを伝つたえると、お薦すすめの宿やど屋やがあるらしくて、態わざ々わざその場ばで紹しょう介かい状じょうと小こ切ぎっ手てを書かいてくれた。
≪ カグザークの街まち ≫に滞たい在ざいする間あいだ、小こ切ぎっ手てに書かいた金きん額がくを使つかってくれ──と言いう事ことらしい。
急きゅう遽きょ護ご衛えいを頼たのむという無む茶ちゃ振ぶりを快こころよく引ひき受うけた事ことに対たいする感かん謝しゃの気き持もちを報ほう酬しゅうという形かたちで表あらわしてくれたんだろう。
折せっ角かくの厚こう意いを断ことわるのは失しつ礼れいになるから、素す直なおに受うけ取とる事ことにして、宿やど屋やの紹しょう介かい状じょうと小こ切ぎっ手てを有あり難がたく頂ちょう戴だいした。
──で、セロとオレは紹しょう介かい状じょうに書かかれている宿やど屋やを探さがす為ために《 宿しゅく屋や街がい 》の中なかを歩あるいている最さい中ちゅうだったりする。
マオ
「 ──なんかさ……、順じゅん調ちょう過すぎて一寸ちょっとさぁ…不ぶ気き味みだよな〜〜〜 」
セロフィート
「 はて──、何ど処こがです? 」
マオ
「 えぇ〜〜……。
セロは思おもわないのかよ… 」