第6話
麻由ちゃんには怒られるかも知れないけど、偶然を待っていられないから思いきってかけてみようかしら。
そう思い迷いなく登録しておいた高岡さんを呼び出し発信する。
(緊張するわね。ふふっ、昔を思い出すわ)
そんなことを思いながら呼び出し音を聞いている。
「はい。高岡です」
「もしもし。私、入江麻由の家族の者ですが……」
「どうも。どうされました?」
「麻由のことで相談があって連絡させていただいたの」
「そうなんですね。大丈夫ですよ。外出はできますか?」
護は、寄り添ってあげたいと思っていた。
「それじゃあ、前に会ったスーパーの近くにあるファミリーレストランで待ち合わせしましょう」
「わかりました。道中お気を付けて。では後程」
電話を切ると、麻由に買い物してくると伝えた。
◇◆◇◆◇◆◇
「突然の連絡ごめんなさいね」
「いえ、大丈夫ですよ」
テーブルを挟んで座り一通りの挨拶を済ませるふたり。注文していた飲み物が運ばれてきた。
「麻由さんに、何かありましたか?」
護が声をかけた。
「麻由、外に出たがらなくてね。合格していた看護大学も今は休学手続きをしていたんだけど、退学届にしなくちゃいけないかしらって不安もあるの」
「退学届はしばらく待ってあげてください。北大路医師からもお話があったと思いますが、麻由さんは角膜の移植の登録をして待機中です。視力が回復した時、何も無くなっていてはかわいそうです。生きる希望は残しておいてあげてください」
「そうですか。わかりました。しばらく休学にしておきます」
「次の休みに麻由さんと出かけてもよろしいですか? って言っても麻由さんに断られる可能性もありますけどね」
「断るようなことはさせませんよ」
ふたりで顔を見合わせ笑っている姿は周りから見たら仲良い祖母と孫と言ったところだろうか。