第3話
麻由の詳しい検査が行われた。
北大路医師が検査結果を厳しい顔で見つめている。
「北大路ドクター、厳しい顔なさってますよ」
病棟の看護師長が声をかけた。
「七瀬師長」
「はい」
「入江さんの担当看護師と一緒に来てもらえませんか」
「わかりました。すぐに呼んでまいります」
「それではカンファレンス室で」
カンファレンス室には主治医である北大路医師と担当看護師の高岡看護師、病棟看護師長の七瀬看護師長の3人が揃った。
「外傷性視神経症ですね。頭を打った衝撃が、眼球から脳への視覚情報を伝える視神経に損傷を与え、入江さんの場合失明に至ってしまったと考えます」
北大路医師が検査結果を話した。
「それで今後ですが、唯一の治療は移植しかありません。怪我が快方に向かい精神が落ち着いたら退院という流れになります。
北大路医師がそういうと、担当の高岡看護師が
「ご両親を亡くされていますし、ひとりでは生活できない訳ですから、はい退院ですよと言うわけにもいかないですよね」
「ご本人の希望もありますからなんとも言えませんが、視力障害の方の施設もありますけどね」
この事を全部持ち寄り麻由に話す事を決めた。
◇◆◇◆◇◆◇
麻由と高岡看護師との信頼関係ができ始めてきたのか、高岡看護師が声をかける前に
「高岡さん。今日は早いんですね」
病室に入ってきた看護師に声をかけた。
「なぜわかったんですか? 入江さん、エスパーの素質隠してたんですね」
「そんなわけないですよ。高岡さんの足音ですよ」
そう笑ってネタバラシをする。
「じゃあ今度はもっと静かに歩いてこようかな」
「先にそれを言ったら、いつもと違う足音がしたら、高岡さんだとすぐ分かりますよ」
「あっ、そうですね。入江さん、それではどんな些細なことでもナースコールで呼んでくださいね」
「わかりました」
少し雑談をして病室を出る高岡看護師。