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シャナ王国戦記譚  作者: 越前屋
第二章
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第二章 41話 姫を守るのは男の浪漫

カストール家にフォルラン侯爵からの降伏勧告の使者が現れ、それを追い返した日まで遡る。

使者を追い返すと、カズマは主だった者たちを会議室に集めた。


「ついに、フォルラン侯爵から降伏勧告の使者が来た。まぁ、丁寧に追い返してやったけどね。」


その時の場面を思い出したのかカズマはクックックッと笑った。


「あれは傑作だったでやんすね。フォルランが花嫁衣装を着た使者を見た時の反応が見たかったでやんすね!」


使者があまりにも上から目線で物を言うので、腹が立ったカズマがバルカンに命じて、身ぐるみ剥がして、花嫁衣装を着せたのである。ご丁寧にも「私はセシリアです。御主人様、可愛がって下さい。」というプラカード(外れないように錠前で固定する念の入れよう)をぶら下げていた。

バルカンの山賊時代に培った技能(身ぐるみ剥がし)とカトリーヌ夫人の化粧であっという間に花嫁に変身してしまった、少々、むさ苦しい花嫁(使者)は怒りと羞恥心に震えながら、王都へと帰って行った。


「わざわざ、城下町でウエディングドレスを買いに行った時は恥ずかしかったでやんすが、スッキリしたでやんす。」

「まぁ、これですぐにでも討伐軍が来る事は間違いない。そこで、現状を確認したい。セシリア、出陣の準備は?」

「いつでも可能よ。ただ、カストール家がわざわざ戦うことに不満を持っている家臣達が少なからずいるわ。」

「当然だね。それじゃ、出陣前にセシリアの演説で不満を吹き飛ばす必要があるな。頼める?」

「任せて。カストール家の家臣ですから、私が説得するのは当然だわ。」


セシリアは大きく胸を張って答えた。


「それじゃ、ジャスティンとレスター。例のモノは手に入ったか?」

「ヒッヒッヒッ、当然だ。」

「・・・・・・たくさん手に入った。」

「よし、これで士気は大丈夫だな。」


二人の成果に満足げに頷いたカズマは二人からバルカンへと視線を移した。


「バルカン、俺が要望した地形は見つかったか?」

「苦労したでやんすが、バッチリ条件に合う場所を見つけたでやんす。場所はラングレーというところでやんす。」


バルカンはテーブルの上に置いてあった地図にラングレーという場所を指した。


「よしよし、これで勝利に必要なピースは埋まった。」

「そろそろ、教えて欲しいわ。どうやって、討伐軍に勝つつもりなの?」


ヴァレンティナはカズマがどうやって、討伐軍に勝つつもりなのか気になっていた。


「う~ん、そうだな。簡単に言えば、討伐軍の軍勢は大軍だ。だから、俺はその大軍ゆえに生じる、慢心さに付け込む。ルークやガンドロフ将軍が総大将だったら通用しないけど、フォルランなら絶対に引っ掛かる策だね。とりあえず、詳しく言うと・・・。」


カズマは全員を集めて、小声で話し始めた。

話が終わると、全員の顔には希望で満ち溢れていた。


これから一週間後、討伐軍が進軍を開始することになる。



フォルラン侯爵を総大将とする討伐軍が進軍を開始したという報告はすぐさま、カストール家の知るところとなった。カストール家の家臣達は手はず通り、出陣の準備を整えると、城内に作られた軍事用の大広場で隊列を整え、指揮官の到着を待った。しばらくすると、セシリアとカズマが彼らの前に現れると、全員に見えるように用意された台の上に登った。兵士達が注目するなか、カズマが最初に口を開いた。


「フォルランが約10万人の軍勢を率いて、このレイナール城を目指して、進軍中との報告が入った。俺達は()ねてからの予定通り、この軍勢を迎え撃つ。そこで出陣前にセシリア侯爵から話がある。」


緊張した面持ちで隊列を組んでいる兵士達の前でカズマが話を切り出した。

カズマに促されて、セシリアも口を開いた。


「我々は絶望的な戦いへと赴こうとしている。諸君らの中には納得していない者もいるでしょう。何故、私達がどこの馬の骨とも言えぬ者の為に賊の汚名を着せられ、戦わなければいけないのかと・・・。確かにその通りです。カズマはどこの馬の骨とも分からぬ者です。我々が彼の為に戦うべき理由が無いわ。」


そこでセシリアは言葉を切ると、己の声が全員に聞こえているか確かめるかのように兵士達を見渡していった。全員を見渡すと、セシリアは再び口を開いた。


「では何故、私達が戦いに赴かなければならないのか・・・。それは我がカストール家の家訓が『シャナ王国に尽くせ、家名は後から付いてくる』だからよ!シャナ王国は今、繁栄か滅亡の岐路に立たされている! 我がカストール家は指を(くわ)えて、それを見てられない!シャナ王国の繁栄を邪魔する君側の奸達をこの機会に取り除く!もし、私の言葉を聞いても、戦いたくないという者は去っても罪には問わない。諸君に聞く!私と共に戦う者は持っている武器を掲げよ!逆に戦いたくない者は武器を下ろせ!」


セシリアの問いかけに兵士達は全員が手を上げた、武器を握り締めながら・・・・。次の瞬間、口々に兵士達がセシリアを褒め称える言葉が大広場に木霊した。


「我らは誇り高き、カストールの兵なり!」

「セシリア様、万歳!シャナ王国、万歳!」

「フォルランに死を!セシリア様に栄光を!シャナ王国に繁栄を!」


元々、兵士達は先祖代々、カストール家に仕えていた者達だ。その長年によって、培わられた忠義心は非常に厚かった。その上、現カストール家当主であるセシリアは家臣達を常に慈しんでおり、その結果、家臣達は彼女に心服していたのである。多少の不満など、セシリアの言葉で吹っ飛んでしまっていた。その機を逃さずにカズマが更に兵士達を更に煽りたてた。


「フォルランと名乗る、人間の皮を被った豚は愚かにもセシリア様を嫁にすれば、許すと言ってきた!諸君はセシリア様が豚の嫁になっても許せるか?」


カズマの言葉は兵士達のメラメラと燃える闘争心に油、ガソリン、ニトロなどあらゆる起爆剤を放り込むようなものだった。・・・・結果、超新星爆発級の怒りが兵士達の間から一気に噴き出した。


「セシリア様に指一本、豚足一本触らせぬ!」

「豚の丸焼きにしてくれるわ!」

「我らの力、豚に思い知らせてくれる!」


怒り狂った兵士達は口々にフォルランを罵倒していく。


「ならば、豚に己の分を分からせてやろう!見よ、あそこを!」


カズマが空を指差すとそこには何十羽という白鷺が次々と空へと舞い上がっているところだった。


「白鷺はゼノン神様の使いとも言われている神聖な鳥!これは我が軍の勝利をゼノン神様が知らせて下さったものだ!さらに俺に必勝の計がある!この戦、俺らの勝ちだ!!」


カズマの言葉に兵士達の士気は跳ね上がっていった。

ある者は地面を両足で何度も踏みつけ、ある者は何度も両手を天に突き出し、ある者は奇声を発していた。

行動は様々だが、彼らの気持ちは一緒だった。


「出陣よ!!」


セシリアの言葉に大歓声でもって、兵士は応えた。どの兵士も胸を張り、隊列を組みながら、目的地へと行軍を開始した。


後にカズマが兵士の士気高揚の方法を聞かれた時に「男なんて、姫を守るというシチュエーションになれば、勝手に燃え上がる生き物だからね。総大将をお姫様にすれば、簡単だよ。」という答えを返したという。



カストール軍が目的地に向けて、行軍をしている途中、ジャスティンとレスターがカズマ達と合流した。合流した二人は早速、カズマに成果を聞いた。


「ヒッヒッヒッ、首尾はどうだった?」

「・・・・・・?」

「おぉ、バッチリ、バッチリ!良くやった。」


カズマは二人の背中を勢いよく叩いて、労をねぎらった。そんなカズマの言葉に薄々、疑っていたセシリアは確信した。


「・・・・やっぱり、あのタイミング良く出て来た鳥は?」

「自作自演だ。」


何も後ろ暗いことはないと言うかのように、キッパリとカズマは言った。

ジャスティンとレスターはカズマに言われて、白鷺を何十羽か捕まえると、籠に入れて大広場近くの茂みに隠れていた。それから、カズマの合図に合わせて、タイミング良く、白鷺達を籠から解き放ち、ゼノン神の使いにでっち上げたのである。


「鳥とハサミは使いようだ。ちなみに他の奴には内緒だぞ?」


折角、上げた士気が下がらないようにカズマはセシリア達に念を押した。


「あとは策が成功させるだけでやんすね。」

「そうだな。ただ、今回は勝つだけじゃなく、フォルランを討ち取らないと意味がない。更に理想は討伐軍を壊滅に追い込むことだ。打撃を与えた分がゼノン教と邪魔な貴族の勢力減少に直結するからな。ただ、バルカンのお陰でちょうど良い場所が見つかったし、やれることは全てやった。あとはフォルランよりも先に目的地へ着けるかどうかだ。」


カズマの言葉にセシリア達は頷くと、目的地へと急いだ。

数日後、ラファエル国王即位以来、最大の戦いが始まる。



数日後、フォルラン率いる討伐軍はカストール侯爵家の領地に後少しという場所まで進軍していた。


「レイナール城まで、どのくらいだ?」

「あと、2、3日で到着するものと思われます。」


フォルラン侯爵の問いに家臣の一人が即答した。


「全く、セシリアは手を焼かせおって。我らの勝ちは揺るがぬというのに。まぁ、焦らされれば、焦らされる程、セシリアをモノにした時の興奮は倍だしな。2、3日後が楽しみだわい。」


既にフォルラン侯爵は戦いに勝った気でいた。それは見渡す限りに兵がいることによる自信であった。フォルランが率いる討伐軍の数は約10万人。一方のカストール軍は約1万人。天地が逆さまになっても勝てない戦力差。更にローランド大返しの時のようにセントレイズ帝国は勿論、バーネット皇国が援軍として、現れる心配がないのもフォルラン侯爵が自信を深める要因になっていた。

セントレイズ帝国が参戦するにはローランド要塞を突破しなければならなし、現在のところ、そんな報告は入っていなかった。

また、シャナ王国はバーネット皇国との関係は良好な同盟関係にあり、ラファエル王とグローサ国王も非常に親しい間柄である。わざわざ、カストール家との戦いに参戦するとは思えなかった。

つまり、どんなにカズマが策略を巡らそうとも、これ以上、兵力が増える事は無いのである。もはや、フォルラン侯爵にとって、勝利は確定した未来だった。


そんなフォルラン侯爵率いる討伐軍がラングレーと呼ばれる場所に差し掛かった時、ついにカストール軍が現れた。その数、1千人。その軍勢の先頭には黒目黒髪の若者が悠然と立っていた。


後に戦った地名から『ラングレーの戦い』と言われる、(いくさ)の始まりだった。


41話を更新しました。

前回の話が討伐軍出撃前夜とするなら、今回のはカストール軍出撃前夜ですね。

次回から戦闘シーンというか、戦争シーン?に入ります。

更新予定日は私の活動報告をちょくちょくご覧ください。


評価、誤字、脱字、感想 お待ちしております。



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