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シャナ王国戦記譚  作者: 越前屋
第二章
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第二章 31話 バルカン山賊再結成

ラファエル王は評定後に側近以外の家臣が大広間を出て行くのを確認すると、それまでの無表情だった顔が映画のシーンを取り終えた直後の俳優のような顔になり、玉座に手足をだらしなく伸ばし、深々と座った。


「う〜〜〜、やっぱり僕には王様らしい演技するのは無理だよ・・・。途中で顔引き攣って、大変だったし。普段使わない筋肉だから、明日は絶対、顔が筋肉痛で動かないよ・・・。」


顔面神経痛の患者のような顔で玉座に座りながら、ラファエルは愚痴っていた。


「陛下、ご苦労様です。お陰で全ての貴族が騙されたに違いない、名演技でしたよ。」

「いや〜、陛下があんなに芸達者だとは思いませんでしたよ。明日から役者で食っていけますよ。」

「それやったら、わての知り合いが経営しておる劇場はどうやろか?大当たり間違いなしやよ。陛下、やりたくなりよったら、いつでも紹介しまっせ〜?」


疲れて、座りこむ主君を左右から扇ぎながら、ルーク、フローレンス、グローブが口々に主君を手放しに褒めていた。


「・・・・・・君達、僕を殺す気?」


ジト目で信頼する部下達を見ているラファエルに気が付いたルークは「コホン」と咳をして、話しを変えた。


「まぁ、それはそれとして。あとはバルカン殿が上手くやってくれることを祈っていましょう。」

「そうですな、今頃は収容所に着いた頃でしょう。あとはバルカン殿が何とかしてくれることを神に祈るとしましょうか?」

「せやけど、ゼノン神に仇なす者を助ける願いをゼノン神が聞き届けてくれまっしゃろかね?」

「まさか、慈悲深いゼノン神が自分の事で願いを叶えないはずがないと思うけどね。」


普段は温厚なラファエルも思わず出た、皮肉交じりのコメントに側近達は顔を見合わせて、苦笑していた。









同じころ、ラファエル達に成功を祈られているバルカンはバトゥーリ収容所から少し離れた雑木林に仲間と共に身を潜めていた。

見るからに凶悪そうな悪党面をしたバルカンがバトゥーリ収容所を眺めている姿は極上の獲物を見つけて、舌舐めずりしている山賊を思い起こさせた。


「あそこに兄貴がいるでやんすね。」

「・・・・・・そうだ。」


バルカンと同じように身を潜めていたジャスティンは短く肯定した。


「それにしても・・・・。本当に良かったでやんすか?下手をすれば、お家断絶でやんすよ?」


これまた、バルカンの傍らで身を潜めていた知的な美女にバルカンは心配そうに声を掛けた。その知的な美女こと、セシリアはバトゥーリ収容所をまるで親の敵のように見ていた。


実はバルカンがラファエル達とカズマの脱獄の手順や脱獄後のことを話し合っていた執務室の外でセシリアは聞き耳を立てていた。

セシリアはラファエルが自分のことを心配して、話し合いの場から外している事を感じ取っていた。だからと言って、何も知らずに普段を過ごす事は出来なかったセシリアは話し合いを毎回、執務室の外で聞いていた。勿論、バルカンがラファエルの破門という情報を持ってきたあの晩の日も。

その晩もいつものように話し合いを執務室の外で聞いていたセシリアは廊下を慌てて、走る人の足音を聞き、急いで廊下に一定の間隔で作られた柱の一つに隠れた。

そして、バルカンが執務室に入ったことを確認すると、おもむろに執務室に聞き耳を立てた。そこで、ラファエルの破門という情報とカズマを脱獄させるということを知った。

すぐにセシリアは最低限の後始末をすると、王都の外でバルカン達を待ち受け、バトゥ-リ収容所まで同行したのである。


「大丈夫よ。念の為、母さんには私を勘当するように手紙を送っておいたわ。だから、私が何をしようがカストール家には何の責任もないわ。」


カズマと出会った頃はあれほど大事に思っていたカストール家だったが、セシリア自身も意外に感じるほど、それを捨てる事にさほど、葛藤しなかった。・・・・むしろ、そうすることが自然に感じるほどだった。


「でも、兄貴を脱獄させるのはオイラ達だけでも良いでやんすよ?別に陛下の所に残っても、兄貴は何とも思わないと思うでやんすよ?」

「もう決めたの。それに私はまだカズマの副官よ?副官が上官を助けるのが可笑しいかしら?私もあなた達と同じカズマの部下であり、仲間よ。今更、仲間外れは勘弁して欲しいわね。」


セシリアの強い決意を聞いたバルカンはもはや、自分の手には負えない段階まで来ていることを悟った。


「それなら、もう何も言わないででやんす。

じゃ、確認するでやんすが、オイラ達の目的は兄貴を脱出させることでやんす。つまりは一生大陸中を追われることになるでやんす。もし、そのことが覚悟出来ない者がいたら、今ならまだ間に合うでやんす。別にオイラは恨まないでやんす。一刻程、この場で待つでやんすから、すぐに立ち去って欲しいやんす。」


バルカンはカズマ脱獄作戦を遂行する為に集まった大勢の仲間を一人一人見ながら、話した。

実はこの場にはセシリアやジャスティン、ダグラス、アイザック、レスターのお決まりのメンバーの他に総勢30人ぐらいの元山賊仲間が集まっていた。

さすがに墓場だけでなく、脱獄不可能とも呼ばれた(※1)難脱不出の牢獄に6人で立ち向かうのは荷が重いと判断したバルカンはあらかじめオルデン村に残っていた元山賊仲間を呼び集めたのである。といっても、かつて、カズマの計略で捕らえられる前のバルカンが率いた山賊は総勢150名ほどを数えていたが、集まったのはそのうちの5分の1ほどである。

何故なら、村に溶け込むように暮していた元山賊達はいつの間にか、村娘と恋に落ち、ほとんどの山賊が結婚をして、家庭を持つ父親になっていたからである。

いくら恩のあるカズマを救出することとは言え、脱獄の手伝いに参加すれば、一生大陸中を追われる立場になり、せっかく築いた幸せな家庭を捨てる事に躊躇した元山賊が少なからず、出たからだ。

それでも、カズマに恩を感じていた元山賊や未だに独身で身の軽かった元山賊などが集まり、30人ほどが集まっていた。


「・・・どうやら、覚悟は出来ているようでやんすね。」


約一刻程、バルカンは待つと、おもむろに口を開いた。

結局、誰もその場から動かなかったことにバルカンは安堵を覚えると同時に脱獄が成功することを確信した。


「それじゃ、これから兄貴を脱獄させる作戦を説明するでやんす。日時は明日の夜、

作戦名は『(とら)われの姫君(?)救出大作戦』でやんす!

手順は・・・・・・・・・・。」


バルカンが脱獄させる手順を仲間に説明する言葉が小一時間、雑木林に響いていた。







一方、目下のところ、カズマを危機に陥れている張本人であるフォルラン侯爵は王からの命令を受けて、収容所へ向かう準備を終えたところだった。

先程までフォルラン侯爵が王都に構える豪奢な屋敷では家来、使用人などが慌ただしく、準備していたが、今は静まり返っていた。


いよいよ、収容所へ向かうことにしたフォルランだったが、その前に血の繋がった妹に留守中の事を伝えていた。


「オフィーリア、私はこれより、薄汚い異教徒をこの世から排除してくるが、留守中の事を頼んだぞ。」


フォルラン侯爵にオフィーリアと呼ばれた妹はまだまだ少女と人に思われる年齢だった。もう5年もすれば、中々お目にかかれない美女になることは全く当たらない占い師が将来を占っても必ず的中する程の美少女である。

極上の絹糸のような鮮やかな光を放つ、綺麗な金髪を左右対称に縦ロールをしており、カズマがいれば、『リアルドリル』と叫んでいたかもしれない。

顔の造詣も今はまだ、愛らしさを感じさせるが、それもすぐに美しいという表現に変わることだろう。

ちなみに王都には七不思議と呼ばれるものがあるが、その一つにこの似てない兄妹が含まれている。

貴族の間ではこの兄妹を見て、「狸と孔雀の突然変異」と呼んでいた。

後々のグランバニア大陸では『あまり似てない兄弟や姉妹』という表現で使われるようになったとか。

それはともかく、兄のフォルランはこの大事な妹を心配していた。


「うむ、兄様は心配しなくても大丈夫じゃ。妾がしっかり屋敷を守るゆえ、心配無用じゃ!」


フォルランは元気に返事する妹に目を細めながら、頷いた。


「それでは私は出かけるが、一週間もすれば、すぐに戻ってくるぞ。そしたら、お前に義姉を紹介するとしよう。楽しみに待っていてくれ。」


フォルラン侯爵は己の薔薇色の未来を思い浮かべ、だらしなく笑った。


「うむ、了解じゃ!妾は楽しみに待っているぞ!」


オフィーリアは新しく自分に出来る義姉がどんな人なのかを想像して、ワクワクしていた。



こうして、兄妹の団欒を終えたフォルラン侯爵は収容所に向けて、家来を千人ほど連れ、旅立った。


しかし、フォルラン侯爵の目論見はすぐに軌道修正を迫られることになった。


※1 難脱不出=難攻不落の四字熟語を筆者が変えた造語です。難脱(脱獄が難しい)不出(出れない)という意味の言葉と考えて下さい。


どうも、長らくお待たせいたしました。31話を更新しました。

今回は囚われの姫君救出編前編?となっています。本当でしたら、今回で姫君(?)救出させる予定でしたが、いろいろ書いていたら、長くなってしまいました・・・。

次回は救出する予定です。(笑)

それでは誤字、脱字、感想、評価 お待ちしております。 


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