第二章 26話 早起きは不幸の始まり
ラファエルがシャナ王国の国王に即位してから、
王都ランパール城では一日の始まりを告げる恒例の行事が行われるようになった。
その行事の会場はカズマの部屋であった。
事の発端は放っておくと、
いつまでも寝ているカズマに業を煮やしたセシリアが
カズマの部屋まで起こしにくるようになったことから始まった。
しかし、寝起きが悪いカズマを起こすのは容易ではなく、
かなりの騒音を辺りに撒き散らしながら起こすことになった。
そんな騒音に毎度毎度、叩き起こされる城の住人達はいつの間にか
朝を告げる目覚まし時計のアラーム音として、認識するようになった。
今では行事が始まると起き出すようになる習慣になっていった。
この日の朝もカズマを起こそうと、セシリアが生真面目な性格らしく、寸分の狂いもなく、
いつもと同じ時間にカズマが眠る部屋まで来た。
カズマの部屋に通じるドアの前に立っていた警護役のバルカンに軽く会釈すると、
軽やかなリズムを奏でながら、ドアをノックした。
「カズマ、朝ですよ。起きていますか?」
いつも通り、ドア越しからカズマに呼び掛けた。
いつもなら、カズマは寝ているので、返事が返ってくることは無かったのだが、
この日は違った。
「あぁ、起きているよ。とりあえず、中に入って来て。」
返ってこないはずの声を聞いたセシリアとバルカンは思わず顔を見合わせた。
二人の顔はまるでキツネに化かされたかのようであった。
とりあえず、声の正体がキツネか、声を真似たアイザックか、それとも本当にカズマなのか?そういった疑問を解消すべく、セシリアはドアを開けた。
「・・・本当にカズマなの?」
恐る恐る開けたドアの向こうにはキチンと服を着替えたカズマの姿がいた。
「何を言っている?どう見ても俺だろ?」
「カズマ、ゴメンね・・・。私の所為ね。
昨日の対サボリ上司お仕置君は確かにやり過ぎたとは思っていたのよ。
でも、まさか・・・。カズマがおかしくなるなんて・・・。」
セシリアはしんみりと話すと、カズマの手を優しく掴んだ。
「これからはゆっくりと心を癒しながら、暮らしましょうね。心配しなくても良いわ。
これからは私が世話するからね。」
セシリアはカズマに女神のような慈愛の微笑みを向けると、
ゆっくりとした言葉遣いでカズマを諭した。
「・・・・何で俺を精神病患者に接する人のような生暖かい眼差しを向けるかな?
俺は病気じゃないし、狂ってもいないわ!ちょっと、早起きしたぐらいで大袈裟な反応するな!」
「そんな、嘘よ!例え、グランバニア大陸がひっくり返ってもカズマは寝ているはずよ!」
セシリアの瞳は信じられないと大きく見開き、
イヤイヤするように首を何度も横に振っていた。
「ついにこの世の終わりが来たでやんすね。オイラの人生も悪くなかったでやんす。」
バルカンはバルカンで何だか悟りを開いた神官のようになっていた。
その場に跪くと、ゼノン教の神官のようにゼノン神に祈りを捧げていた。
「君達が俺の事をどう思っているのか、よく分かったよ。
といっても、俺が早起きする日は必ず、何か不幸な事が起きるけどね。」
カズマは何かを思い出したのか、顔をしかめていた。
「不幸がうつると嫌だから、今日は私に近づかないでね。」
「・・・・俺は病原菌かよ。」
何だか、フローレンス将軍の気持ちが少し分かった気がした、カズマだった。
「あっと、そんな場合じゃなかったわ。今日は評定の日よ。
カズマも国王特別参謀補佐官として、出席するのですからね。ちゃんと、準備しないと。」
評定は毎月一度、行われる評定は貴族が献策や国王が貴族達に命令する公の場である。
現代日本で言えば、国会と言えば、分かり易いかもしれない。
「ほら、襟元が乱れているわよ。他の貴族に舐められじゃない。
ただでさえ、カズマは目の敵にされているのですからね。」
カズマの目の前に立つと、新婚の奥さんのように襟首を綺麗に直した。
「あぁ、有難う。それじゃ、ご飯を食べて、行くとしようか。」
「そうね。早く行きましょう。」
「おいらも腹が減ったでやんす。」
支度を終えた三人はカズマの部屋を後にした。
後にはこの部屋の主が暮らしていた形跡として残された、布団が捲れたままのベッド。
脱ぎ散らかした服。主の私物。机に山積みになった本。
そんな、住んでいた者の残り香を感じさせる物が残された部屋に主は帰って来なかった。
これで26話となります。
だいぶ、書くのに時間がかかった割にちょっと文字数が少ない・・・・。
いや、田舎帰ったり、忙しかったというのが理由なんですけどね。ハイ、スミマセン。orz
次回は急展開になる予定かな。
カズマの運命やいかに?的なね。
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