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シャナ王国戦記譚  作者: 越前屋
第二章
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第二章 20話 大いなる災厄をもたらす者

グランバニア大陸の中央はちょうど

セントレイズ帝国、バーゼット皇国、シャナ王国の三カ国が隣接し、

互いの勢力が入り乱れている複雑な地域があった。


そして、その地域には三カ国それぞれの国境に隣接する都市ランスがあった。

この都市は唯一、三カ国のどの国にも属していない都市としても知られている。


その立地の良さから三カ国の物流が通る、大動脈であった。


グランバニア大陸全土で商売する者はここを通れば、

容易に三カ国へ商売に行くことが出来る為、

行商人や商売人が引っ切り無しに通る都市として、栄えた。


彼らが、落とす金は少なからず、この都市を潤していった。

だが、この都市がグランバニア大陸中にその名が知られているのは別の理由がある。


ゼノン教総本山の存在である。

ゼノン教とはグランバニア大陸で古くからある宗教である。

その信仰内容はゼノン神を唯一絶対の神として崇める教団であった。


現在では、信徒の数は莫大であり、信者を合わせれば、

大陸のどの国よりも多数の人口を抱えていると言われている。


その為、教団は3カ国の上流階級の貴族にも信者がおり、

「戦国の三雄」にも絶大な影響力を持っていた。


また、代々の王達はその影響力を憚って、この都市には軍を向けることは勿論、

要衝にあるこの都市を他国への進軍路としても使用しなかった。


何故なら、ゼノン教の教皇に破門を言い渡された場合、

王としての資格を失うと言っても過言ではない。


王達にとって、他国の王よりも、教皇の動向を気にすると言ってもいい。


これが大陸各国にとって、最重要な要衝の地でありながら、

列強からの併呑を免れた理由である。



さて、そのゼノン教の総本山の巨大な教会はステンドグラスと彫刻によって、

匠に組み合わせて作られた荘厳な造りであった。

それは見る者に畏怖を感じさせ、ひれ伏さざるを得ないオーラを放っていた。


そんな、教会の見晴らしのいい最上階には教皇の部屋があった。

その教皇の部屋ではスペンサー教皇が大司教から定期報告を聞いていた。


「それで、シャナ王国はラファエル王が統一したのじゃな?」

報告を受けているスペンサー教皇は40代も半ばを過ぎている。


肩幅が広いせいか、ガッシリとした印象を周りに与える。

そして、細く開いた目には一見、穏健な光が宿っているように見える。

だが、彼の細目は異教徒を見れば、たちまち残酷な光が宿ることで有名であった。

彼にとって、ゼノン教を信じぬ人間は人間ではないのである。


「御意です。」


「そのラファエル王は我が教団を敬う御仁か?」

彼の王としての基準は民を慈しみ、国を富ませる王ではなく、

ただただ、盲目的に教団を敬う王こそ価値があるのだ。

例え、どのような愚かな王でも・・・。


「さて?まだ分かりません。

特に我が教団を敬うとは聞いてはおりませんが、虐げる話も聞いていません。」


「では、引き続き情報を集めるようシャナ管区のバロモンドに通達じゃな。

もし、我が教団を損なう王であれば、引き降ろして、教団を敬う者を据えねばならん。」


「御意です。」


大司教は深々と頭を下げた。


「それと、大いなる災厄は突き止めたか?」


そして、彼の関心はシャナ王国の内乱よりも重要な議題に移った。


「猊下、それがまだ見つかっておりません。」


「異端審問部は何をやっている?

託宣を受けてから、3年もの月日が流れているではないか!

人を一人見つけるのに、何を手間取っている!」


彼の怒声に大司教は災難から身を守る亀の如く、首を竦めた。

スペンサー教皇の機嫌を損ねた、同僚が何人も人知れず、消えているからである。


「我が教団に仇なす、大いなる災厄をもたらす者を探し出せ!

ヨシトゥーネ王のようになってからでは遅いわ!」


彼の2度目の怒声に大司教は「畏まりました」という言葉とともに部屋を飛び出した。


「まったく。無能ども!」


そう罵声をあげても、事態が何も変わらない事は分かっていたが、

あげずにはいられなかった。


ゼノン教では10年に一度、教団の未来を予測する神官達による託宣が行われた。

ゼノン教がここまでの巨大な組織になったのも、この託宣のお陰だと言われている。


その重要な託宣で「ゼノン教を揺るがす大いなる災厄をもたらす者が現れる。」と出た。

これは約100年前に行われた託宣と同じ託宣だったのだ。


この時の大いなる災厄をもたらす者はその後、ヨシトゥーネ王だと判明した。

ヨシトゥーネ王はゼノン教を徹底的に嫌い、一時期シャナ王国ではゼノン教を禁じていた。

また、腐敗していた神官などに嫌気が差していた民衆もこれに同調し、

信徒の数が激減した。


かろうじて、時の教皇ヨハネスによる内部引締めを行い、何とか信徒の数を元に戻した。

現在ではシャナ王国でも圧倒的多数の信者がいるが、

シャナ王国の貴族と同じく、再び腐るのには十分な期間だった。


この状況下で前回の騒動と同じことが起きると、3年前の託宣で言われたのである。

これにスペンサー教皇はヨハネス教皇とは逆の解決法を命じた。





堕落した神官などの内部引締めによる、解決ではない。


・・・・託宣に出た大いなる災厄をもたらす者の抹殺である。


大いなる災厄をもたらす者とは一体何者なのか?

その者さえ誰か分かれば、大陸に絶大なる影響を誇るゼノン教が総力を挙げれば、

その者がどう足掻(あが)こうと殺すことになるだろう。


この時のスペンサー教皇はそう信じていた。


はい、ここだけオリジナルの小国?です。

多分、物語を構成するうえで、かなり重要な役割をする事になると思います。


次回はもう一本外伝を送る予定です。

こちらは本編とは関係ない話です。

ギャグのみの外伝になると思います。


感想、誤字、脱字 募集中〜。

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