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シャナ王国戦記譚  作者: 越前屋
第二章
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第二章 19話 帝国の思惑

今回は帝国の中枢部の話です。

セントレイズ帝国は大陸の約半分を領土としている巨大な国家だ。

残りの半分をシャナ王国とバーネット皇国が均等に領している形である。


つまり、セントレイズ帝国はシャナ王国とバーネット皇国が

力を合わせてやっと互角になるぐらい国力に差がある。


その為、3国に分裂した後、

シャナ王国とバーネット皇国の両国が真っ先にした政策は同盟である。

各個撃破されて併呑されるよりは同盟を結び、

セントレイズ帝国に対抗するのは至極当然と言えた。


この同盟は現在でもある程度効果を上げている。

シャナ王国とバーネット皇国は基本的にセントレイズ帝国と面している領地に

軍の主力を展開させれば、セントレイズ帝国の軍勢を防げるのである。


一方のセントレイズ帝国は領地が広大なので、

ある程度の軍勢をどうしても各地の領地に駐屯させる必要が生じる。


その為、セントレイズ帝国軍が全軍でもって、

両国に侵攻することは不可能なので、

数の優位さを発揮出来ないでいた。


せいぜい、両国の軍勢の2倍程度しか侵攻軍を編成出来ない。

それでも、圧倒的な軍事力だが、

両国に侵攻し、占領するにはそれでも兵力が足りないのである。


また、両国の独特の地形もセントレイズ帝国軍の侵攻を難しくしていた。


シャナ王国は基本的に平地が少なく、山が多い。

その為、シャナ王国軍にとっては少数でも守り易い地形が多く、

反対にセントレイズ帝国軍の大軍の利を生かす地形が少ない。


一方のバーネット皇国では「水源の覇者」と言われるぐらいなので、

大小多数の川が流れている。

それがバーネット皇国では伝統的に強力な水軍を育てる土壌となっていた。


そして、バーネット皇国の国境沿いには

グランバニア大陸最大最長のカーロライン川が流れている。

ここにバーネット皇国が誇る強力な水軍を配備すれば、

あまり水上戦が得意ではないセントレイズ帝国軍では手が余るのが実情だ。


それでも、歴代のセントレイズ帝国の皇帝は大陸統一を夢見て度々出兵を繰り返した。


現在の皇帝も虎視眈々と大陸統一を目論んでいる一人である。

その皇帝の名はギルバート。

新進気鋭の若き皇帝だが、彼が皇帝として即位されてから10年経つ。

その間、セントレイズ帝国は豊かな国力を更に富ませていった。


ギルバートとしては国を豊かにする事で、外征に備える意向があった。


その為、今年で35歳になるギルバートは常に他国の状況に気を配っていた。

特に内乱が起きているシャナ王国には多数の間諜を送り、

密かに軍勢を編成して好機と見れば、怒涛の如く進撃するつもりだった。


この日もギルバートは数多いる配下の中でも、

特に信頼している腹心のローグウッド宰相が報告した間諜からの情報に耳を傾けていた。


帝国の有り余る財力を見せつける豪奢な部屋の中で、

ギルバートは帝国の皇帝が座るのに相応しい優雅なイスに深く腰掛けていた。


彼を見た者は皇帝というより貴公子に見えるかもしれない。

一つ一つの動作が洗練されており、それが更に貴公子に見える。

だが、彼が貴公子と明確に違う事を見る者に感じさせるのは彼の目と雰囲気だ。


ケイフォードのような鋭い目は野心家と切れ者という印象を周りに彷彿させる。

ただ、ケイフォードと違うのは王者の威圧感が常に彼の身を包んでいることである。

見る者を平伏さざるを得ない雰囲気は彼を皇帝だと認識させた。


そんなギルバートは興味深そうにシャナ王国に関する報告を聞いていた。


「それで、シャナ王国の内乱はラファエルが勝利したという事で間違いないか?」


ギルバートにとっては明らかに不本意な事態だが、どこか面白がっているように見える。


「どうやら間違いないと思われます。同じ報告が多数の間者からも寄せられております。」


報告しているのはローグウッド宰相。


ローグウッド宰相は涼しげな雰囲気を纏った好青年であった。

そんな彼を信頼するギルバートは軍事と国事に関する全ての事を相談される程である。

ローグウッドもその期待に応え、数々の功績を建てている帝国の頭脳(ブレーン)である。


「それにしても、ラファエルには謀略の才でもあるのか?」


「いえ、ラファエル王の新たな臣下が策を立てたようです。

その者は報告では黒髪黒目の姿でカズマという変わった名を名乗っているそうです。」


「そうか、黒髪黒目でカズマか・・・?どうやら、面白い事になりそうだな。

ところで、ローグウッドとどちらが優秀な軍師かな?」


ニヤリッと笑いながら、己の腹心に問いかける。


「さて、まだまだ私は未熟ですが、カズマという者については要注意だと思います。」


あっさりと話を流す姿はこの扱いずらい主君の扱いに手慣れているようである。


「ワッハッハッハッ、素直に負けたと言わんか。

それにしても、これで我が覇業に立ち塞がる者が増えたな。

これで楽しみが増えたわい。」


表情は笑ってはいるが、

その目は「俺を止められモノなら止めてみろ。」と雄弁に語っていた。


「私としては立ち塞がる者は少ないほうがいいのですがね。

それで、シャナ王国は如何(いかが)いたします?」


「とりあえず、様子見だな。内乱が治まったとはいえ、内部はまだまだ一枚岩ではあるまい。

ラファエルを気に喰わない貴族が騒動を起こすだろうよ。」


「それでは現在のところはシャナ王国については放置で?」


生真面目な腹心は念のため確認を取る。


「そうだな、我が帝国はまだ手を出さない。」


含みを持たせるように言う主君の内心に思い至った腹心は納得した。


「なるほど、そういえば、あそこが勝手に動き出しますか。」


「そうだ、偶然にしても恐ろしいな。まぁ、こちらもギルダースの尻拭いの必要があるし、

今動くのはあそこに任せるとしよう。さてさて、我が隣人がどう対抗するか楽しみだな。」


シャナ王国がある方角を見ながら、ギルバートはいつまでも笑っていた。


彼こそはラファエルの永遠のライバルとして、

後世に語り継がれるセントレイズ帝国皇帝ギルバートである。


彼とラファエルの争いは劇として、現代までに語り継がれることになる


というわけで、19話をお届けいたします。

今回は世界観の説明が多くなった話となっております。

基本的には三国志を思い浮かべてもらえばよろしいかと。シャナ王国=蜀 セントレイズ帝国=魏 バーネット皇国=呉です。

まぁ、これだけだと普通過ぎますので、次の話ではオリジナルの国?が登場します。

次回も御贔屓に。

それにしてもユニーク読者数が把握出来ていないので、読者離れが進んでいないか不安・・・・。

直った時には一人も見てなかったらと思うと・・・。


感想、誤字、脱字 募集中です。

この話から御指摘頂いた部分を私なりに直してみましたが・・・。どうでしょう?

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