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シャナ王国戦記譚  作者: 越前屋
第一章
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第一章 18話 内乱終結

普段、城の一室に作られた客室は部屋に入る者をくつろがせることを念頭に作っている。

しかし、その部屋には創作者の意図した、くつろぎとは逆の緊張感が漂っていた。

客室には6人の人間がいた。


ラファエル皇子、ガンドロフ将軍、ルーク騎士団長、カズマ国王特別参謀補佐官、セシリア国王特別参謀補佐官付き副官。

そして、ケイフォードの6人が顔を揃えていた。


「何故、貴様らがここにいる!」


普段、兵士の前では冷静にして、

冷徹な表情しか見せない彼が狼狽した姿は珍しい光景であった。


「忘れたかもしれないけど、僕これでも王太子だったんだよ?

その時には、王のみに伝わる情報も色々、聞いている。勿論、ここの脱出口もね。」


そういって、肩を竦めた。


その頃には廊下の両側にはいつの間にやら、

王太子派兵士がケイフォードの逃げ道を塞いでいた。


「まさか、兄上に罠を掛けられるとはね。フローレンス将軍はどうしましたか?」


もはや、覚悟を決めたのか、

どうやって、あのフローレンス将軍率いる軍勢から窮地を脱したのかが気になったようだ。


「簡単ですよ。フローレンス将軍の軍勢をやり過ごしましたから。」


「だが、彼は遅かれ、早かれ気付くだろう。追撃は受けなかったのかね?」


「受けませんよ。彼は我々の代わりにセントレイズ帝国軍と戦っていますから。」


そして、ラファエルからラファエル派の大掛かりな手品の詳細を聞いて、愉快そうに笑った。


「成程、それではフローレンス将軍でも防ぎようが無かったな。

しかし、その緻密にして、大胆な策は兄の発案ではあるまい。

勿論、ガンドロフ将軍、ルーク騎士団長でもあるまい。

もしや、そちらの見慣れぬ御仁ですかな?」


そういって、見つめた先には黒髪黒目の青年(俺)がいた。


「何で、俺だと?

もしかしたら、ガンドロフ将軍かルーク騎士団長が考えだしたかもしれないでしょう?」


俺の疑問に


「それはないな。成程、両名とも有能な人材だ。

だが、彼らは将軍であって、軍師ではない。

彼らの本分は用兵であり、策を張り巡らすことではない。

こんな策を考え出す人間は軍師として有能な人間でなければならない。」


そう一旦言葉を区切るとケイフォードは俺の全てを見通そうとするかのように

目を細めながら、俺を眺めた。


「この部屋にいて、なおかつ私の知っている人間には、そんな人材はいない。

そして、部屋にいて、唯一知らない人間は君だけだ。

また、格好から君は一般兵ではないことも分かる。

動きも見る限り、武芸もあまり得意ではないように見受けられる。

何故、兄上が武芸は得意でもない家臣として、

君を連れているか?

恐らく、君には武ではなく、智を期待している事は容易に想像がつく。

つまり、君が(くだれ)の軍師である事になる。」


そういって、右腕を真っ直ぐに伸ばし、人指し指を俺に向けた。


なまじ、洋風の城ゆえ、

部屋だけ見ると洋館の一室みたいな如何にも殺人事件が起きそうな場所で

俺を指差すと、殺人事件を推理した名探偵が最後に

「犯人はお前だ」と言われた気分になる。


それはともかく、聞いた話などを総合して、分かってはいたが、

ケイフォードは決して無能ではない事を改めて感じた。

むしろ、とびきり有能な人物だろう。


フローレンス、グローブという有能な人材を見つけ出して、

重要なポストを与えている事実がラファエルと同じ血が入っている弟だなと感じる。


「それで私をどうする?」


「ケイフォード、頼む降伏してくれないか。勿論、それ相応の地位を用意している。」


ラファエルはそう言うと、ケイフォードに右手を差し出した。


「兄上は相変わらず甘いですな。私が裏切るかもしれないではないですか?」


「それでも、降伏して欲しい。

君は俺にとって、唯一 血の繋がった兄弟だからね。」


それでも、諦めないラファエルは更に右手をケイフォードに近づけた。

だが、ケイフォードがその手を取る事は無かった。


「優しいですな。思えば、私のせいで立場が危うくなったのに

それでも私を弟として、優しくして下さった。

・・・・・・だから、私は兄上が嫌いなのです。」


ケイフォードはこの優しい兄が嫌いだった。

何故なら、優しくされれば、される程どうしても己の汚さを思い知らされるからである。


武においては、大人の騎士を叩きのめす事が出来る腕前。

智においては、あらゆる書物を一度読めば、見ないで諳んじる事が出来る神童。

だが、彼の劣等感が癒される事は無かった。


兄よりも優秀だとは誰からも認められていた。

しかし、人が周りに集まるのは兄だった。


どれだけ、武術を磨いても、どれだけ難解な書物を読んでも人が集まるのは兄だった。

だから、父王を唆して、兄をローランド要塞に追放した。

そして、私が王に相応しいと周りに、兄に証明したかった。


「私は降伏しない!両雄いれば、並び立つことは出来ない!

立つ事が出来るのは兄上か私のどちらかだ!」


ケイフォードは言い放つと同時に、腰の剣を抜き放った。


「ケイフォード!」


と叫ぶラファエルに向かって、問答無用とばかりに剣で斬り込む。

だが、その必殺の一閃もルークが一瞬早く、剣を抜き放ち、受け流した。


しかし、ケイフォードは受け流されたと判断するや、剣を引き、

高速の刺突でラファエルの障害として、立ちはだかるルークを排除しようと試みた。


並みの剣士であれば、一撃で串刺しされるだろう、

高速の刺突をルークは最小限度の剣捌きで跳ね返す。


まさしく、その闘いは見る者を魅了する剣舞であった。

鋼と鋼が撒き散らす火花が彼らの剣舞に花を添えていた。


しかし、その拮抗も長くは続かなかった。

現役の騎士団長として、

シャナ王国一の剣士として名を馳せているルークが段々と押し込み始めた。


毎日、剣の腕を欠かさずに磨いてきた剣士と

書類仕事に追われて、ロクに剣を持つ事が出来なかった剣士では

体力の違いが明確に表れ始めた。


さすがに、すぐには崩れなかったケイフォードだが、剣筋には次第にキレが無くなっていた。

終には肩で息をするようになり、ついにルークの上段からの一閃に反応が出来ず、

袈裟切りに斬られた。


剣は右手から滑り落ち、左肩から右の腰にかけて血を噴き出し、背中から崩れ落ちた。

例え、ロリータを通り越した恋人を連れて、

世界を旅する黒ジャックの医者でも治すことの出来ない致命傷なのは一目瞭然であった。


「ケイフォード!」


ラファエルは真っ先に駆け寄ると、ケイフォードを抱き起した。


「すぐに医者を連れてきてくれ!」


「・・・無駄で・す。自分の体の事は自分がよく分かる。」


ラファエルの指示をケイフォードが遮った。


「・・・兄上。頼みがあります。」


「分かった。何でも言ってくれ。」


「・・・フローレンスとグローブはこの国に必要な・・人材です。

取り立ててやって・下さい。」


時々、口から吐血をしながらも頼む姿にお人好しの兄は涙ぐんだ。


「大丈夫だ。取り立てるよ。」


「・・・・・兄上。所詮、私は兄上に及ばなかった。」


「違う。僕には優秀な人材が偶々周りにいただけだ。」


「・・・・それも実力ですよ。・・兄上は自分を過小評価し過ぎです。

自信をお持ち下さい。」


ラファエルを諭すと、顔をこちらに向けた。

もはや、目としての機能を失いつつある瞳でカズマを見た。


「・・・もし兄上よりも早く、私と出会っていたら、私の下に・・来てくれたか?」


「無理だね、俺は元々、宮仕えは嫌いだし、誰かの下にいるつもりないし。

それに何か扱き使われそうだしね。」


大陸統一を目論む上司なんて、こき使われるに決まっている。

俺がなりたいのはニートなのだから。


「・・・ハッハッハッ。容赦ないな。結局、兄上が勝つ運命だったか・・・。

・・・賢者殿、兄上を宜しく頼む。」


「気分次第で頑張るよ。」


そんな、俺のつれない言葉に笑顔を向け、最後の力を振り絞って兄を見た。


「兄上、この国をヨロ・シ・ク タノミ・マ・・・。」


次第に目を閉じていく姿は眠りに入るかのようだ。

そして、完全に瞼が目を覆うと同時にその生涯を閉じた。


その死に顔は彼が生まれて初めて見せる、安らかで人を魅了せずにはいられない寝顔だった。


享年18歳。


こうして、シャナ王国始まって以来、最大の内乱は終わった。

後の歴史家には酷評されているケイフォードだが、シャナ王国に彼が残した貴重な遺産、

フローレンス将軍とグローブ財務卿はその後、大きな功績を残すことになる。


また、彼は内乱を起こした者としては異例な扱いを受けた。

大抵の王なら、そのような者は死体の首を城の前で晒し、そのまま放置されることだろう。


しかし、ラファエルは「死んだら、みんな天使なんだよ・・。」と周りを説き伏せ、

シャナ王国の王族が代々眠る墓に丁重に葬ったという。

その後、毎年ケイフォードの命日には華やかな花が飾られたという。


とまぁ、これで第一章が終りになります。

第二章からはいよいよ大陸動乱編になる予定です。

その前にいよいよ・・・・。

セシリアがデレフラグが立つ外伝?をお届けする予定です。


感想、誤字、脱字などをお待ちしております〜。

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