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シャナ王国戦記譚  作者: 越前屋
第一章
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第一章 7話 ツンデレの鏡

カズマとバルカンは家の処分やら、

荷物の整理をしなければならないので、後からローランド要塞に来る事にした。


その為、ラファエル王太子とセシリア将軍、ガンドロフ将軍は一足先に帰る事にした。

そして、その帰り道。



人の姿は無く、ちらほら木が生えているだけの片田舎の道を

3人で馬に揺られながら歩いていた。

その中で妙齢の美女が先ほどから温和な青年に文句を言っている声が辺りに響いていた。


「殿下!何であんな事を言ったのですか!」


今、思い出すだけで頬が赤くなる。

勿論、血を残す為に子孫を残さなければいけないのは

侯爵家に生まれた女としての義務であるとは思う。


特に後継ぎが私しかいない侯爵家ではこのままだと、

廃絶する事になると親戚中が危惧している。


ただ、自分が認めた相手と結婚したいと思う。

それを何故、あんな見るからにやる気のない青年と一緒にならなければいけないのか!


私の相手は私が決める!その思いを新たにラファエルに盛大な文句を言う。


「いや〜、実は前々から君のお母さんに結婚相手を探すように頼まれているんだよね。」


以前から、セシリアは屋敷に帰る度に母親から見合いの話が大量に持ち込まれていた。

そんな母だから、いつの間にかお人好しの王太子に相談したのだろう。




この時代ではいつ死ぬかも分からないので、出来るだけ早く世継ぎを作る風習があった。

セシリアは今年で21歳になるので、この時代の女性の年齢として遅いことになる。


「だからって、何でアイツ何ですか!」


「う〜ん。何でだろうね?彼を見ていたら、セシリアとお似合いな気がしたんだよね。」


「何でそうなるのですか!あんな怠け者ではカストールの名に相応しくありません!」


シャナ王国で名門として知り渡っている、カストール家の名を何だと思っているのか!


私とカストール家を継ぐ者は気品、剣術、学問

全てにおいて優れている者でなければいけないというのに!


「そうかな?それに、怠け者に見えるけど、あれは表面だけだね。」


優柔不断コンテストがあれば、優勝候補の王太子が珍しく断定した。


「その理由は何ですか?」


整った顔を猜疑心に満ちた顔で尋ねた。


「理由なんてないよ。彼を見ていたら、そう思っただけ。

でも、僕はこれでも人を見る目だけはあるつもりだよ?」


家臣から見たら、気が弱く、頭脳も明晰とは言い難く、剣術も新兵並・・

ハッキリ言えば素人同然。


人の上に立つ王としては、いま一つだが、生命を創造する神も哀れに思ったのか、

この王にも取り柄を授けたらしい。


それが人を見極める事が出来る事。

彼の小動物的な本能が為せる業なのかは分からないが、人の本質を見抜く事には長けていた。

その為、後世において、彼の側近で佞臣(ねいしん)の評価を与えられた者はいなかった。


「でも、カストール家に相応しい相手ではありません!」


「カストール家には相応しくないかも知れないけど、セシリアには相応しいと思うよ。」


「何でそうなるのですか!」


「だって、セシリアって嫌いな人にはトコトン、丁寧になる性格じゃない?

あんなに取り乱す程、怒る事なんて無かったし。」


実はセシリアの事を知っている人のほとんどは彼女の事を礼儀正しい淑女だと思っている。

実際、社交界では誰に対しても、礼儀正しい姿を演じている。

それだけではなく、凛と佇む姿は余人を近づけさせない気品がある。


それもあってか、貴族の結婚適齢期の男は一度ならずとも、

彼女に求婚をしていると貴族の間では噂になっているほどである。


その難攻不落(なんこうふらく)ぶりから、シャナ王国に存在する、

最も堅固な造りのローランド要塞を引き合いに出し「ローランドの華」と称された。

しかし、どの求婚に対しても、失礼にならない程度にやんわりと断っている。


その中には貴族特有の特権意識に凝り固まっている者や

女性を己の性欲処理だと思っている愚物などもいたが、

どの者に対しても礼儀正しく断っていた。


彼女にとっては、長年、礼儀作法を厳しく教えられており、

嫌いな者にも例外なく、礼儀正しくする事が出来るぐらいまでに鍛えられていた。

むしろ、嫌いな者に対しては見た目では礼儀正しく、心では切り捨てるのである。


本当の彼女を知る者は彼女が信頼している者に限られていた。

だが、カズマを目にした瞬間、何故だか社交界用の自分の仮面を付ける事が出来なかった。


「セシリアってさ、自分で価値がないと思っている相手には

淑女という名の鎧で武装するけど、価値があると思った相手だと鎧を脱ぐんだよね。

本当はセシリアも分かっているんじゃない?カズマが人として、価値のある人間だって?」


普段は鈍い弟同然のラファエルだが、

時として鋭くなるのは切れ者で有名なケイフォードと同じ血が入っている事を感じさせた。

ただ、それを認めるかどうか別問題だが。


「どうかしら?本当に嫌いな相手だったかも知れないでしょ?

とりあえず、早くローランド要塞に帰るわよ!

ルーク騎士団長も結果を待っていることだし。」


そう言い残すと、一目散に要塞目指して、馬を走らせた。

まさしく、中世のツンデレの鏡と言うべき発言である。


「素直じゃないなぁ、セシー姉は。」


やれやれと首を振ると

その主の隣にガンドロフ将軍は馬を寄せる。


「仕方ありますまい?

侯爵亡き後、侯爵の一人娘であるセシリアの周りに集まってくる人間は、

財産を狙うハイエナばかりでしたからな。

自分の気持ちを特大な鎧で隠すのに慣れてしまったのでしょう。」


自慢の髭をさすりながら、

ガンドロフ将軍は実の娘の様に可愛がっているセシリアの後姿を眺めていた。


「でも、僕はその鎧をカズマは脱がしてしまう気がするんだよね。

カズマには軍師としての役割とセシリアの相手も期待しているんだよね。」


そう言いながら、セシリアに置いて行かれた2人は追いつくべく、馬を走らせた。

彼の予想が当たるかどうかは神のみぞ知るといったところ。


ひろ様ご指摘有難うございます。

いや〜、どうも未熟なところを

お見せして申し訳ない。(汗)

早速、訂正させて頂きました。


今回の作品はセシリアの内面や事情にスポットを当てるため書いてみました。

未熟な部分もあって、書ききれたかは分かりませんが、楽しんでいただければ幸いです。

誤字、脱字、感想はいつでもどうぞ〜。

ガラスのハートで受け止めたいと思います。

(友人からは強化ガラスのハートと言われてますが)

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