なろうはラノベを殺したのか?
まずは事実を一つ。
ラノベの売り上げは年々下がり続けている。
もっともそれはラノベだけではない。書籍や新聞、紙媒体の全ての売り上げが下がっている。電子書籍も穴を埋めるほどではなさそうである。
原因はいくつか挙げられる。
一般的に言われているのは、若者の活字離れや動画サイトの台頭が理由となるだろう。娯楽は多様化している。
海賊版の影響も多少はあるはずだ。
これらのことは少しでも本に興味がある人ならば誰でも知っている。
いまさら反論しようとする人間は存在しない。
このエッセイで取り上げたいのは、そのような当たり前のことではない。
『ラノベの売り上げ低下の一因になろう小説があるのか』。
これがエッセイのテーマである。
賛否両論あるとは思う。怒る人もいるだろう。
だが冷静になってくれ、これから書くのはあくまで私の意見にすぎないのだから。その上でぜひあなたの意見を聞かせて欲しい。
2018年までは、なろう小説は滅茶苦茶売れていた。
転スラ、劣等生、世界に祝福をなどなど。まさにラノベ界を席巻していたと言ってもいい。
だが去年から今年かけて、なろう小説の大ヒットと呼べるものは出ていない。
出版される書籍の数自体は増えているのにだ。もっとも普通のラノベも大ヒットは出てないのだが……。
現状のラノベは大ヒットしたラノベの続編だけが売れている状態である。
新作は最大でもせいぜい中ヒットが限界。ほとんどの新作は数千部しか売れず、打ち切りになってしまう。
新作の数が増えて、打ち切りも増える。まさにラノベ作家にとっては地獄である。
なろう小説の威光は薄れてしまっている。
一昔前の勢いはもう存在しない。
なろう小説は飽きられてしまったのか?
その可能性はある。
なろう小説は一般的になりすぎた。アニメにグッズに世の中にあふれている。
当初あった新鮮さは消えてしまったのだ。
そうなると、読者が同じようなものばかりだと嘆くのも無理はない。
なろうほど保守的な創作界隈はない。ラップの韻を踏むがごとく、似たような展開が必要になる。そこから一歩でも出ると、なろうではランキングに入ることはできない。
良くも悪くもなろうは新しいものが出にくい界隈なのだ。
なろうサイトでは通用しても、普通の読者には通用しなくなっているのではなかろうか。
一種のガラパゴス化を起こしている。
それでも。
出版社はなろう小説を出版し続けている。数で利益を出そうともがいているのだった。
自分はこれから先、なろう発の大ヒットが生まれないではないかと考えている。
こうなると何が問題かはっきりする。
なろう小説はラノベ界に新風を巻き起こした。しかし賞味期限が近付いている。
では次の風は?
なろう小説が問題なのではなくて、新しいものが入っていないのが問題なのだ。
もし、出てこなかったら。
ずっと出版社がなろう小説ばかりを続けていたら。
十年後、『なろう小説がラノベを殺した』と言われるようになるに違いない。