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6/9

命の力

ランキング入りありがとうございますー!!


「いててて……骨折れてるかな…………」


 意識を取り戻したフェイはゆっくりと目を開け、自分のお腹をさすり、ズキリと刺すような痛みに顔を歪める。

 仰向けになった状態で青空を虚ろな目で見つめながら、どれくらい時間が経ったんだろうと頭を働かせ、ふと血塗れの友を思い出す。


「そうだキールっ! あ、あれ……キールは?  あの人もいない……!」


 痛むお腹を庇いながら立ち上がったフェイは、すぐさま家の周りを探索する。

 そこには先程倒れていたキールの姿もなく、あの狼人(ヴァラヴォルフ)もいない。

 

「僕1人だけ取り残された?」


 血の跡が残る芝生を触りながら呟いたフェイは、良からぬ方向へと考えてしまう頭を横に振り、キールが何処に行ったかを考える。

 普通に考えて連れ去られたと考えるのが妥当だが――


「一体何処に……」


 何が目的なのかも分からない相手の行動を読むのは容易ではない。ただ、もし()という視点で考えるのならば……。


「ダンジョン……」


 人の目に付かず、警戒が薄いダンジョン。そこでは色々な事が自由に出来てしまう、だが、勿論モンスターという障害がある為、そんな馬鹿なことは普通ならば考えない。


 そう。


 普通ならば――


 あの狼人の戦闘力は並ではない、首席であるキールを一撃でダウンさせる程の持ち主、上層ならば赤子の手をひねる様なものだろう。

 そう考えたフェイは、口を噛みながら一つの案を絞り出した。


 それは、


「サリーさんに頼もう……」


 世間に嫌われた冒険者が今出来る行動、それはお金を払ってでもキールを助けに行くことだった――



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「クロムさん……これで本当にフェイの野郎来ますかね……」

「まぁ多分来んだろ、意外に英雄気質もあるしなぁ、弱いけど、ククッ」


――ダンジョン二階層


 高級回復薬(ハイ・ポーション)をがぶ飲みしたキールは、赤髪を掻きむしりながら岩壁に背を預ける。

 その横で、あー暇だなぁと石を蹴るのは狼人のクロム。


「ったく、お前があそこでしっかり始末しとけばこんなことにならなかったのによ……使えねぇな本当、ククッ」

「すいません……」


 まぁまぁ使える駒はお前しか居ないんだがらちゃんとしてくれよぉ? と笑ったクロムの目は闇そのものだった。

 黒色のローブを翻し、紫艶の槍をチラつかせるクロムを見て唾を飲んだキールは、冗談よして下さい……と目を逸らす。


「まぁ良いさ、このままダンジョンに来た所を俺が直々に殺せば良いからなぁ? クククッ」


 そう言って、腕がなるなぁ? と灰色の耳を動かすクロムは、まるでゲームをするかのようにヘラヘラと笑う。

 そんな異様な空気が流れる二人の間を、結露した雫が天井からポツリポツリと音を響かせる。


 数秒後――


 ポチャンと落ちた雫が波紋広げたのと同時に、激しく揺れた――


『『ゴブゥッッッ!!!』』


「クロムさん! ゴブリンの群れです!」


 それは棍棒を持った緑の化け物の集団。

 唾液を飛ばしながら走り込んで来るゴブリン達を見て血相を変えたキールは、咄嗟に立ち上がって大剣を構える。


「ククッ、慌てんなって」

「でも……!」


 現在キールとクロムがいるのは細い一本道。片方をモンスターで埋められた二人に与えられた逃げる手段は、一つしかないということになるが……。


『『ゴァァァッッッ!』』


「リトルオークッ!?」

「ククッ……、ちゃぁんとしてんじゃねぇかこのアイテム(・・・・)

「それ……は?」


 モンスターに挟まれ、もう寸前と言ったところで右手でポンとクロムが投げたものは、


 モンスターを誘き寄せるための非道具(アイテム)


 人肉だった――


 それをボテっと二つ程懐から出したクロムはただ一言、


「安心しろ、後でお前の首を取りに来てやるから、クククッ」

「――!?」


 それが何を意味するのか、キールは直ぐに理解してしまった。


(つまりコイツは……! 俺の頭をフェイに――)


 何処までも邪悪で何処までも汚い狼人は、再度不気味に笑ったあと、目を見開き怒りを浮かべるキールの腕を触り、


「んじゃ、せいぜい頑張れよ? 首席さん?」


 と、ただ一言。

 そんな皮肉めいた言葉を投げ捨て、クロムが背を向けたその一瞬、怒りのボルテージのままに大剣を振り上げたキールは、殺意を込めながら己のスキルを発動させる!


「お前が先に……お前が先に死ねぇぇぇぇッッッ!!!」

「その技で俺を倒すって? つまらなすぎて欠伸もんだなククッ」


 キールのスキル。


 命力(ライフパワー)――


 体力を代償に火力を上げるそのスキルは、諸刃の剣。


「どうせ死ぬなら、最高の一撃をッッッ!!!」


 己の命を賭け、人生最大の一撃を放ったその瞬間、馬鹿だなお前と笑ったクロムは一瞬にして姿を消した。

 

「――ッ!?」


 そのまま行き場を失い、空を切った大剣は自然と地面に刺さり……。


 


 ダンジョンを崩壊させた――



「クソがァァァァァッッッ!!!」



 地面をぶち抜いたキールは、残り微かな灯火となった命で叫びながら三階層に落ちていく――


『『ゴブゥゥゥッッッ!』』

『『ゴァァァァァァッ!』』




 大量のモンスターと共に――




「ククク……さっきも言ったがお前の首だけはちゃんと取りに来るからな? 安心しておねんねしとけククッ」


 闇の中そう言葉を漏らしたクロムは、さっさとアイツ来ねぇかなぁと、鼻歌交じりに闇へ消えていった――

 

 


 


 



 

 

 

お読み下さりありがとうございますー!!


フンス( ´ ꒳ ` )=3

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