ガードハロー
「――んでどうです? 取引します?」
「う……、ま、まぁ命とお金は測れないっ! し、しますっ!」
「まいどー!」
商業人兼道具生成者であるサリー・エリンズは、お金大好き爆乳女である。
その唯一無二の道具生成スキルで数多の冒険者と契約をし、お金をかっさらってきたサリーが満足する日は来ないであろう……。
「ちゃ~んと、地上に戻ったら70万グルト払ってもらいますからね!」
「うぐっ……」
フェイ、貯金二万グルト。
無謀すぎなその買い物は命の重さとでも言うべきだろうか。
冷や汗だらだらのフェイは、命、命、命の為! と自分に言い聞かせながら両手で一、二、三、と指を折る。
ちなみに、契約内容は二点。
一つは七十万グルトでトラップ解除のアイテムを購入するというもの。
そしてもう一つが……。
「……そういえばマベリアル鉱石って3階層より下層でしか手に入りませんよね……?」
「うん、そうだよー」
「僕……弱いから行けませんよ多分……」
「大丈夫! 私がいるから!」
「それじゃあ1人で行けばいいんじゃ……」
レア鉱石であるマベリアル鉱石の採掘の手伝い――
それがサリーが二つ目に付けた契約だった。
丁度冒険者を探していたのよね~と語るサリーは、別にいいよね? と契約内容にぶち込んできたのだが、一階層以外行ったことのないフェイが行くのは、逆に足でまといになる可能性が高い……。
その事を一番理解しているフェイは、ごめんなさい、僕弱いので……。とキャンセルを申し込むが、サリーは適当に笑って大丈夫大丈夫と聞き流す。
「ってほら、早くしないとコレの効果が切れてモンスター湧いちゃうよ! ちょっと離れて、今解除するから!」
「は、はい……お願いします」
サリーが指さしたコレとは、モンスターをおびき寄せないアイテム、【手動安置】。
ちなみにこれはサリーにしか作れない完全オリジナル。
ネーミングセンスに疑いがかかるが、その道具を作る腕は誰にも劣らない。
「行っけぇ! 私の大発明、罠強制解除ッッッ!」
「勢いの割にはちょっと名前ダサいんですね……」
「……70万から0もう一個足しとく?」
「ごめんなさい!」
水を刺されたサリーは、むっと頬を膨らませながら、背負っている巨大バックパックから水色のキューブを取り出し、木の根元辺りに投げ込む。
刹那――
「おおおおおお! す、凄い!」
「ふっふ~ん! 凄いでしょ! もっと凄いって言って!」
「本当に凄いですよサリーさん!」
それはもはや魔法の域。
白い光がキューブから溢れたと思えば、一瞬にして木の根はゆらゆらと解け、消滅した――
二日ぶりの自由に、わー! と走り回るフェイは、自由最高ー! と満面の笑みを見せながら、サリーさん神! 本当神! と崇め奉る。
「本当にありがとうございますサリーさん! ……あ、ちょっと1回地上に帰ってから鉱石探しでもいいですか? 友達が心配なんです……」
契約にはちゃんと従います! と頭を下げたフェイは、足踏みしながらサリーの返答を待つ、
「そ、そっか……なら早くここから出ないとダメだね、コレももう持たないし……。うん、とりあえず1回地上に出よっか」
「ありがとうございます!」
そう言ってフェイは、待っててキール! と素早く小部屋を抜け出した。
どこか冷たい表情を浮かべるサリーと共に――