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実験と護衛2人

アランの一件から数日、ユウは王都近くの森で進化したスキルの実験をしていた。

「体外変換・・・なんとなく分かってきたぞ・・・」

ぶつぶつと呟くユウの周囲には、切り倒された木や火の燃え跡が散乱している。


そんな思考に耽るユウの背後の草むらから、角が生えたうさぎ、ホーンラビットが現れて突進してきた。

ホーンラビットは鋭利な角を背後から突き立てようと迫り、ユウの心臓がある位置目掛けて飛び上がった。

だがホーンラビットの角がユウに到達することはない。空中で静止したホーンラビットは、何か攻撃を受けたかのように地面へと叩きつけられた。


「あ、ありがとうメリィ」

「うん、どういたしまして」

ユウの声に呼応して、何も居なかった空間にスーッとアランの姿が現れた。


今日はスキルの実験に、メリィにも手伝ってもらっていたのだ。アランの姿で聞こえる声はメリィなので、少し違和感がある。

だが今はもっと気になることがあるのだ。


「メリィ、もう一回炎を出してくれる?」

「うん、分かった」

そう言ってメリィの作り出したアランは、炎の弾をこちらに向かって打ち出してきた。


ユウはその炎に向けて右手を出す。すると炎は右手に吸い込まれるように消滅した。

「すごい、なにをしたの?」

「炎を体力に変換したんだ。体外変換は、魔法系統のスキルにも有効みたいだね」


魔法エネルギーを体力へと変換できたのは、嬉しい結果だった。

これで魔法系への攻防手段と、回復手段の両方を得たのだ。


「メリィありがとう。もう戻るから、スキルを解除して大丈夫だよ」

「分かった、待ってるね」

ユウに言われてスキルを解除したメリィ。その場からアランの幻影は消滅し、ユウは1人になる。

そして最後に試したかったことを実証するため動き出した。


歩いた先は、メリィがさっき倒したホーンラビットがいる場所。

死んではおらず、強く地面に打ち付けられて気絶したままだ。


ゴクリ、とユウは息を飲んで、ホーンラビットへと手を伸ばす。

「変・・・換」

そしてスキルを発動すると、ホーンラビットの体は消えて自分の中に別の命が流れ込んでくるのが分かった。


グーパーと手を動かす。

本当に、本当に多少だが、スキルを使用する前よりも力が強くなった気がする。

それを確認して、ユウは近くの木へともたれかかりそのまま地面に崩れ落ちた。


「正直、外れて欲しかったな」

この体外変換スキルは、生物も変換できるのだ。

先ほどの感覚を思い出す。自分以外の魂や血肉が身体へ吸収される感覚。

気色悪いその感覚を思い出し、ユウは吐き気を催す。


「同じだ、これも」

口を拭いながら、初めて変換スキルを使ったときのことを思い出す。

自分のさまざまな物が無くなって、人間から離れていく感覚。

そして今、自分以外の物が自分の中に入り込んで、自分が別の物になっていく感覚を味わった。


この体外変換は生物には使わない。

ユウはそう決めて立ち上がり、帰路へとついたのだった。



〜〜〜〜〜



「お2人には、ノワール帝国へ行っていただきます」

次の日王城へと呼ばれたパルファとユウは、宰相サリムよりその指示を受けた。


「ノワール帝国・・・あんまり仲の良くない隣国ですよね?どうしてまた・・・」

「私が正式に勇者を襲名したから、挨拶目的ですね?」

ユウの問いにパルファが答え、それを聞いたサリムが頷いた。


「左様でございます。今でこそ仲が良いとはいえませんが、源流を辿ればノワール帝国の王と我らネグザリウス王国の王は同じ血筋。親戚へ挨拶に行くことと同義といえます」

サリムは続ける。

「もちろん、今までの歴史で争いも起こっているため、100%平和な挨拶とは行かないでしょう。そのため今回は、護衛も同行させます」


サリムが言い終えてすぐ、部屋がノックされる。

入りなさい、とサリムが言うと扉が開いて、2人の男が入ってきた


(あっ・・・)

2人のうち1人は、ユウの見覚えがある者だった。

「ではお2人、自己紹介をお願いします」

サリムのその言葉に、まず見知らぬ方の男が口を開く。


「・・・第3騎士団団長のベルベット」

初めて見る騎士の男はそう名乗った。褐色の肌にボサボサの赤い髪、団長という割には標準的すぎる体格。


(第3騎士団・・・国外の問題を担当しているんだったな)

ユウは以前聞いた話を思い出した。

国境の最前線に立ち常に争いが身近にあるため、騎士団とは思えないほど気性の荒い者が多いと聞いたことがある。


そしてもうひとりの男。


「冒険者のシルバだ。あー・・・久しぶりだな」

気だるそうに挨拶をしたのは、ユウが唯一知るSランク冒険者シルバ。

スタンピードで会ったとき以来だ。


「策謀を疑われては困るため、多くは連れていけません。よって少数精鋭、こちらの2名に同行してもらいます」

サリムそう言って、さまざまな資料を机の上に広げる。

「では、ここから段取りと注意点を説明しましょう」

帝国への勇者挨拶に向けて、打ち合わせが始まった。

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