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スキルは進化する。昔も今も。

今アランの屋敷は騒然としている。ここ3日ほどでサシャの体調が急変したのだ。

そして今日こそが、医者に言われてからちょうど1ヶ月目でもあった。


サシャの様子を見て、医者がアランに向き合う。

「アランさん、お別れの言葉を」

「っ!」

医者はそれだけいって、部屋を出ていく。残されたアランとメリィは、サシャへと駆け寄りその手を握った。


「おかあさま!しんじゃやだ!」

「メリィ、大丈夫。私はいつでもあなたのそばで見守ってるからね」

わんわんと泣くメリィを残った力で抱きしめて、サシャはアランに話しかける。


「アラン様、メリィをよろしくお願いします。あなたと出会えて本当によかった」

「サシャ、俺もキミと出会えて幸せだった。メリィは俺が守る」

サシャとアランはすでに何度も何度も交わした別れの言葉を、同じように交わした。


すると突然廊下の方から、ズカズカと足音が聞こえてくる。

「サシャ!最後にサシャと話をさせてくれ!」

小汚い貴族服に身を包んだ男、サシャの父だった。


こちらの返答を待つことなく部屋に入ってきたサシャの父は、使用人たちの制止も振り切って荒々しく話す。

「サシャ!どうだった!?勇者ジィファ殿に取り入ることはできたか!?我が家の衰退はお前にかかっているんだぞ!答えてくれ!」


信じられないような言葉を、今にも死にゆく実の娘へかける義理の父。

(やめてくれ・・・)

サシャは目が見えないんだ。最後にそんな欲にまみれた汚い言葉を聞かせるな。


握ったサシャの手からは、今もなお温度が無くなっていく。

そして最後にサシャの目から涙が一滴落ちて、握った手からは力が無くなった。


「サシャ!サシャアアアアア!」

誰よりも喚く義父を使用人が5人がかりで押さえつけ引っ張り出して行くなか、アランは失意のどん底よりもさらに深いところにいた。


ここでもそうなのか?結局勇者の肩書きなのか?

サシャが実家を出た日浮かない顔をしていたのは、きっとあの男から勇者に近づけと言われたからだろう。

だがもちろん、サシャはそんなことをしなかった。アランだけを愛し添い遂げた。


だがもしアランが勇者であったら、実家を出た日も今もサシャに辛い思いをさせずに済んだのではないか?

振り切ったとはずの「勇者」という肩書きへの劣等感が、今になって再びアランの胸を締め付ける。


(結局遠回りして、元の場所に戻ってきただけなのか・・・)

泣き疲れてそのまま眠ったメリィを抱き抱えて、アランはサシャが眠る部屋を後にした。


〜〜〜


「くっ、どうして私がこんな目に・・・」

アランの屋敷に乗り込んだ帰り道、サシャの父は数人の馬賊に追われていた。


御者はすでに弓で射抜かれて死んでおり、自らが席に座って馬を操り逃げていたが、それも時間の問題だろう。

勝ちを確信しニヤつく馬賊たちだが、突如として赤い太陽がそれらを飲み込んだ。


「な、なんだ!?」

サシャの父は突然現れた豪火に驚きスピードをゆるめる。

炎の中からゆっくり顔を出したのは、先ほどあった娘の結婚相手、アランだった。


「こっ!これはこれはアラン殿、助かりましたぞ」

そういって駆け寄ろうとするサシャの父の耳に、ボソボソとした声が聞こえた。



「魔王を倒しても、この世界はまだ、こんなにも汚い」

次の瞬間、アランが纏っていた赤い炎は紫色の炎へと変わった。

明るい太陽のような豪火から、負を重ねた地獄の業火へと。


周囲の人間も馬車も馬も、全てを飲み込んだ炎の塊は、フラフラと帰るべき場所に歩き出した。

ーーーその目に強い復讐の色を残して。



〜〜〜現代〜〜〜



1人の少年が、建物の屋上でうつ伏せに倒れていた。

少年の名前はユウ、目の前にいる自分しか視認できない敵、幻影アランを引き受けて戦っていたが、受けたダメージが許容量を超えて今に至る。


攻撃を合わせて時間稼ぎをするのはジリ貧だった。相手にダメージが通らず、タイミングを間違えば一方的に無防備な場所に攻撃を入れられる。

自分をここまで苦しめた幻影アランは、今ユウから離れてアランたちが行った方へ向かおうとしている。


倒れながらもユウは、必死に自分のスキルで変換する場所を考えていた。

聴覚、味覚、嗅覚、触覚、片方の視覚、臓器、骨、肉、神経・・・

(どうにかする力を・・・僕に・・・)

ぐるぐるとした思考を経て、突如脳内にアナウンスが流れた。



――スキルレベルが上がりました。体外変換を習得。



(スキルレベルが・・・上がった?)

倒れたまま、自分のステータスを見る。

==========

名前:ユウ

種族:人間

強度:AA

【ユニークスキル】

変換 LV2

==========


直後ユウは、体に鞭を打ってなんとか立ち上がる。

それを見て幻影アランも、ユウを完全に沈めようと駆け出し距離を詰めてくる。


先ほどまでと同じように、いや、先ほどよりも頼りなく弱々しい構えで、ユウは迫り来る拳に自分の手を出した。

だがこれはフェイント。幻影アランは拳を実体化せず、わざとすり抜け背後からの蹴りでカタをつけようとしていた。


そのすり抜けるはずの拳は、ユウの手に捉えられた。直後ユウは呟く。

「変換、消えろ」

その言葉を発したのと同時に、幻影アランは霧散して消えた。


==========

【ユニークスキル】

変換

・LV1 体内変換

〈身体機能や器官を変換し別箇所へ統合する〉

・LV2 体外変換

〈体外の事象や物質を変換し吸収・消滅させる〉

==========


(体が少し軽くなった・・・)

おそらくあの幻影アランを、自身のエネルギーへと変換し取り込んだのだろう。

最大の弱点であったゴースト系などに対する攻撃手段を、ユウは手に入れたのだった。


「・・・行かなきゃ」

そうしてユウは、3人が行った王城方面に向けて駆け出した。

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